文化放送のアナウンサーで、ラジオ番組の「セイ・ヤング」、テレビ番組の「ぴったし カン・カン」などの司会でいられる売れっ子アナウンサーの「吉田照美」さんによる話し方、コミュニケーション・スキルについてのノウハウ本。
本文中にもあるのだが、筆者は浪人時代に、「コミュニケーション障害」どころか、幻聴も聞こえるノイローゼ状態になって人付き合いがほとんどできなかった時代があるそうで、そこからの立ち直りの体験談も含めての「コミュニケーション」「話し方」についてのアドバイスは値打ちがある。
【構成と注目ポイント】
構成は
はじめにー「話し下手」を目指そう
第1章 僕は「コミュニケーション障害」だった
第2章 テクニックを磨かなくて「いい話し方」はできる
第3章 頭がいい人の話し方
第4章 「質問する力」は最強の武器になる
第5章 微妙に避けたい話し方
おわりに
となっていて、内容的には、筆者の「コミュ障」時代からアナウンサーになってからの逸話や、「話すということ」全般についての注意事項とかも書かれているのだが、当方も含め、一番知りたいのは、アナウンサーという「話すこと」のプロにによるノウハウのところであろう
◇「話し下手」の人がまず気をつけることは「型」◇
そこらあたりの注目ポイントを引っ張り出すと、まず
話すことが苦手な人はまず第一に、「自分の会話の型″」を持つようにすればいいと思います。そうは言っても、最初から自分の「型」を持つている人などどこにもいません。
では、いったい何から始めればいいのか? それはずばり、誰かの「真似」から始めればいいのです。
といった「若葉マーク」の人への基本的なところから始まり、
私の経験から言うと、おしゃべり上手な人はど、会話の引き出しをたくさん持っています。
つまり、会話を盛り上げたいのなら、まずはいろんな情報を集めて、自分の中の引き出しにストックしておけばいいのです。
といった日頃からの備えをしておく重要さをきちんといってくれるところはがまずあげられる。こうした「コミュニケーション」の本で、特に「話すこと」のプロのものは単なる「話術」のテクニックの紹介になってしまうことが多いのだが、そこは筆者がもともと「話すこと」に苦手意識があったためか、当方のような「話すこと」が得意でない者にとっては、こうした基礎的な「心理的」なところでまず苦手意識を解きほぐしてくれるのが良いですね。
◇話題作りには「失敗談」「自分をさらけ出す」が秘訣◇
その上で、
一般の人であっても、誰かと会話する際、自分の失敗談は「笑いを取るネタ」になることを覚えておいてほしいと思います。
成功談をひけらかすように話していれば「偉そう」とか「自慢かよ」などと反感を買ってしまいますが、失敗談は大抵の場合、相手から喜んでもらえます。
といった「失敗エピソード」のうまい使い方や
相手から本音を聞き出す際、核心にいきなり踏み込んでいく人もいれば、まずは外堀をしっかりと埋めてから徐々に核心に触れていくやり方を取る人もいます。
私の場合、相手の本音を聞きたい時は、先述したようにまずは自分を曝け出して、相手にも「どうぞ正直に何でも語ってください」というスタンスでいきます。
といった本音トークへの導き方など、ラジオやテレビのインタビューや対談で磨いたテクニックが惜しみなく出ているのがありがたい。
このほかにも、「苦手なタイプ」「初対面の人」「次から次へとしゃっべってくる人」などなど、実社会で出会ういろんなタイプの人への「話し方」のノウハウも紹介されているので、実戦むきのヒントも取り揃えてある。このあたりは、改めて紹介いたしましょう。
【レビュアーから一言】
「話すこと」は、プライベートでもビジネスでも基礎中の基礎であるにもかかわらず「苦手意識」を持っている人は多い。そこのあたりを狙ってか、「話す技術」についての解説書は多いのだが、ともすればテクニックに走ってしまいがちなものも数多い。筆者は本書中で
私が話し方において大切だと思うのは、「どのように話すか」というテクニックよりも、「何を語るか」の内容のほうです。
と釘をさしているのだが、このあたりを踏まえながら、「話すテクニック」や「コミュニケーションスキル」の初歩をざっくり知るには、もってこいの本でありますね。
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「伝え方」は学べるものだったんだ。– 佐々木圭一「伝え方が9割」+「まんがでわかる伝え方が9割」
「コミュニケーション」って、そもそも何だ? — 平田オリザ「わかりあえないことから 」(講談社学術新書)
コミュニケーションの戦略的な展開を考えることが大事 ー 谷益美・枝川義邦「コミュニケーションスキル」(総合法令出版)
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