「傲慢さ」で自滅しないための処方箋 ー 片田珠美「オレ様化する人たち あなたの隣の傲慢症候群」

名門企業や老舗企業が、今までの評判に胡坐をかいた不祥事を起こして突然に業績が転落したり、組織の重要な地位についている人が、それをかさに着たような、無理難題を部下にいいつけたり、外部に向かって無遠慮に言い放ってバッシングを受けたり、と最近「傲慢な振る舞い」によって、今までの信用を失ってしまうような事態が、目立つようになった。

その背景には、SNSによる拡散といった、こういう類の不祥事を広く「知らしめる」環境が整った、というせいもあるのだが、根本のことをいえば、こうした「傲慢さ」から起きるトラブルや不祥事は、もとから絶って発生しないようにするのが一番であろう。
そんな「傲慢症候群」について、精神医学の立場から腑分けするとともに、対処法・防衛法を教えてくれるのが、本書『片田珠美「オレ様化する人たち あなたの隣の傲慢症候群」(朝日新聞出版)』である。

【構成と注目ポイント】

構成は

序章 傲慢症候群とは?
第1章 今日も隣にいる「オレ様」賊
第2章 暴走する人に共通する素地
第3章 悪の芽を育てる「最適」環境
第4章 個人にとどまらない恐怖の被害実態
第5章 あなた自身がつぶされないために
第6章 気がつけば予備軍かもしれない

となっていて、まず本書でいう「傲慢症候群」というのは「自信過剰のせいで周囲が見えなくなり、冷静な判断ができなくなつてしまう」状態で、「権力の座に長くいると性格が変わる人格障害の一種」ということであるので、特別な疾患というものではなく、長期間、権力の座にいて周囲の人が気を使い、そして、その気遣いを当然と思いだしたら、だれでも罹る「病」であるらしい。そして、その症状は

・話を聞かない
・自らを誇示する
・人を威嚇する
・横暴になる
・同意ばかり求める
・自社開発主義(自前主義)症候群に陥る

ということであるようなのだが、周囲の人や他社など思い当たる人も多いのではないだろうか。そして、こういう人物が個人として存在していればまだましで、こうした人のそばには「イネイブラー(支え手)」が存在することが必然となるらしく、かくして、「傲慢な人」のいるところは、組織全体が「傲慢」になっていくといったことになるようだ。
こうなってくると、その組織は
1「我々は違う」症候群
2「自前主義」症候群
3「正当化」症候群
にも感染することとなるんで、後は、「過去の栄光」にしがみついたまま、崖下に向けて「まっしぐら」というのは、最近も有名どころの企業で起きたことで、皆さんもよくご承知と思います。

で、こうした「傲慢症候群」の対処法なのだが、これが

あなたが、「他者の欲望」を敏感に察知して、それにできるだけ沿うように気遣うタイプであれば、ある意味鈍感な傲慢人間に腹も立つだろう。
だが、傲慢人間を変えるためにいくら時間とエネルギーを費やしても無駄なことが多いので、そのために疲弊するよりは現実的な対処法をお勧めする。その原則はただ一つ。傲慢人間の欲望を察知しても、それを満たさないこと

といった乱暴な方法から

1 管理職に定期的に新しい挑戦の機会を与える
2 従来とは違う後継者選びを実行する
3 人材プールを多様化する
4 外部の考え方を取り入れる
5 リーダーを変える

といった系統だった方法まで、豊富にアドバイスされているので、これから先は原書のほうでしっかり確認してください。
ただ、一番の特効薬は、とにかく「風通しをよくすること」であるようなので、組織を束ねる立場にある人は肝に銘じておいた方がよいですね。

【レビュアーからひと言】

こうした「傲慢症候群」は、権力をもっていたり、組織のトップにいる人だけに起きる現象かというとそうではなくで

困るのは、傲慢になるのが経営者だけではないことだ。
血縁・姻戚関係で縁故入社した社員や経営者のお気に入りなどが、トップとの「親密な」関係をことさらひけらかし、ときには特別扱いを要求する。

ということであるので、すべての人が「ひょっとしたら私も」と自省してみることも時に必要であるようですね。本書によれば

傲慢の落とし穴を絶えず指摘して、あなたが傲慢になりかけていたら注意してくれるような助言者を持っておくことが必要だ。家族でも、友人でも、同僚でもいい。
少々耳が痛いことでも忠告してくれるような信頼できる相手が理想的だ。

ということであるようなので、日頃から家族関係、友人関係がは大事にしておきましょう、というところでしょうか。

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