最近の職場や人間関係で問題となるのは、セクハラ、パワハラ、パタハラ、マタハラなどなど、ハラスメント事案が大きなウェイトを占めているといっていいのだが、その中でも、本書でとりあげる「モラハラ」は
じつはモラハラというのは、モラハラをしている加害者もされている被害者も、「これはモラハラ」だという自覚がないケースが非常に多いのです。
ということで、結構厄介な”ハラスメント”であることは間違いない。
ただ、近所づきあい・ママ友関係のトラブル、職場のいじめに始まって、夫婦間のトラブルにいたるまで、もっとも身近なハラスメントであるのは間違いない。
そんなモラハラについて、現役の精神科医が、実例やモラハラをやってしまう精神楮からその対処策までアドバイスしてくれるのが、本書『片田珠美「平気で他人を傷つける人」(KADOKAWA)』である。
【構成と注目ポイント】
構成は
第1章 あなたの周りにも「モラルハラスメント」はあふれている
第2章 「平気で他人を傷つける人」の精神構造を理解する
第3章 なぜ「モラハラ被害者」が生まれるのか?
第4章 「心を傷つける攻撃」にはどのように向け合えばいいのか?
第5章 場面別「平気で他人を傷つける人」対処法
第6章 「モラハラをしない人」になる!
となっていて、まず、モラハラの被害は
・攻撃が直接的でないので被害者が認識・自覚しにくい
・被害者が経済的に自立していなくて、行動になかなかでられない
ということからなかなか表面化してこないものであるので、「これはひょっとしてモラハラ?」とアンテナを鋭敏にしておくことが「モラハラ状態」を発見することが防止の第一。
モラハラ加害者は
・自分の側にも問題た弱点を抱えていて、それを否認したいがために誰かを攻撃するパターン
・自分に利があるから他人を攻撃するパターン(「利」は不機嫌にしていると奥さんが世話を人一倍焼いてくれるといったレベルでもいいらしい)
・自分の感情を「本来向けるべき対象」にむけることができないため、「別の対象」に向けて発散するパターン
・他人をうらやましく思う感情がいびつな形となって現れるパターン
・自分に対する承認欲求が強いため、自便の価値を高めたいばかりに、わざわざ相手を貶めるよなことを言ったり、態度で示すパターン
といった特徴があるようなので、周囲にそんな気配がいる人がいたらちょっと注意しておいたほうがいいですね。
特にモラハラ加害者には、もともとは友人(フレンド)であった関係が変質して、敵(エネミー)となる「フレネミー」といったタイプもあるので、要注意ですね。
そして、こうしたモラハラ被害を受けているんでは、と思った時の対処策として
①自分自身の「気持ちの落ち込み」「体調の変化」などを注意深く観察し、それが「誰かの行動」に原因がないのか確認する
②「上司に〇〇と言われた」「夫にこんなことをされた」ということを「書き出す」
③攻撃が「悪意があるのか、ないのか」」「わざとなのか、無意識なのか」はっきりしないものは、勇気をもって聞いてみる
④「モラハラ」ではと思ったら、自分の中に溜めて「やり過ご」さない、リアクション、質問、反論といった「感情の小出し」をする(けして最初から「ケンカ腰」でやってはいけないそうですが)
といったことが有効であるようなので、思い当たる方は試してみてはいかがでしょうか。特に、夫や妻の「モラハラ」はやっている本人に自覚が全くないこと、それどころか相手を気遣っていると思っていることも多いそうなので、③や④は必須かもしれないですね。
このほか、『「具体的な改善方法や結論を言わずにダメ出しをする上司への対処法』とか『料理を食べない、掃除をやり直す夫への対処法』など具体的な事例の対処法もアドバイスされているので、詳しくは原書で確認してくださいね。
【レビュアーからひと言】
以上、相手がモラハラ加害者かどうかの見分け方やモラハラされていると思った時の対処法を、本書の内容から簡単にレビューしたわけなのだが、実は合わせて気を付けておかないといけないのは
悪意を持って他人を攻撃するのはもってのほかですが、ハラスメントのむずかしいところは、自分にはそのつもりがなかつたとしても、知らないうちに相手を傷つけていることがあるという点です。
ということで、特にモラハラの場合は、加害者も被害者も自覚がないことが多いので、知らないうちに実は自分を加害者になっていた、ということ。
本書のアドバイスを参考に、「被害者にならない」「加害者にならない」人間関係をつくっていきたいものですね。
コメント