小萩は江戸へ帰り、菓子の再修行が始まった ー 中島久枝「なごりの月」

鎌倉の宿屋の娘ながら、菓子の魅力にとりつかれ菓子職人になることを夢見る「小萩」の修行話を描く「日本橋牡丹堂菓子ばなし」シリーズの第2弾。

前巻で、1年間の期限付きの二十一屋の修行が終わり、故郷の鎌倉に帰ってきた小萩のその後が描かれるのが本巻。

【構成と注目ポイント】

構成は

初春 祝い菓子は桃きんとん
陽春 白吹雪饅頭の風雲児
初夏 かすていらに心揺れ
盛夏 決戦!涼菓対決

となっていて、第一話の「初春 祝い菓子は桃きんとん」では、鎌倉に帰郷し、生家の宿屋の手伝いを始めた「小萩」なのだが、思い浮かぶのは江戸・日本橋のことで、なかなか田舎での暮らしに馴染めない姿が描かれる。話のほうは、小萩の姉のお鶴の婚礼が近づき、婚礼の祝の宴で、江戸仕込の菓子づくりを披露しようと頑張ったりするのだが、菓子の修行に戻りたいという気持ちはおさまらない。そんななか、小萩が江戸まで修行にいったことを、豆花屋という湯葉や生麩を商う、老舗の大店の若主人に見初められて・・といった展開である。さて、小萩は様々な難関を超えて江戸で再修行することができるか、ってのところが焦点ですね。

 

第二話の「陽春 白吹雪饅頭の風雲児」は、再び江戸へ帰り修行に精を出す小萩の奉公する日本橋の菓子屋「二十一屋」に、この店で昔修行したことのある「鷹一」という菓子職人が訪ねてくる。彼は二十一屋の現主人・徹次の弟弟子で、手先が器用で、新作菓子のアイデアも豊富で、口も巧み、という有望株であったのだが、店の修行が10年経ったあたりで、店を飛び出していった人物である。
そんな彼は、屋台の菓子屋で出す皮が薄くて中のあんが透けてみえる「白吹雪饅頭」で評判をとるのだが、その後で・・・、という展開。

第三話の「初夏 かすていらに心揺れ」では、いよいよ二十一屋の主人・徹次と、かつての弟弟子「鷹一」との菓子勝負が本格化してきます。「鷹一」の勝負の仕掛け方はかなり挑発的で、二十一屋が梅干しを使った菓子を出せば、同じく梅の菓子を、かすていらを出せば、カステラ生地と紅餡を使った菓子を、といった感じで真っ向から対抗してくるのである。また、二十一屋の職人・伊佐は、知り合いの菓子屋の主人が怪我をし、ヘルプに行ったのだが、そこの娘と仲良くなる。さて、二十一屋の商売と小萩の恋の行方は・・といった筋立てですね。

最終話の「盛夏 決戦!涼菓対決」は、そんな二十一屋と「鷹一」との菓子勝負がいよいよ勃発というもの。二十一屋は、得意の「こしあん」を使った水羊羹、しかも夏の舟遊びを思い起こさせる菓子で勝負にでるが、鷹一の後見をしている吉原の「大島楼」の女将。勝代はあくどい手をつかってきて・・という展開。この勝負どちらが勝つかは原書でご確認を。

【レビュアーから一言】

このシリーズでは、二十一屋の前の主人で今は隠居をしている「弥兵衛」が肝心なところできちっと締めていくのだが、今回も、派手で新奇な菓子を次々出す「鷹一」の店に憧れる孫の「幹太」を諭す

「天下無双はおもちゃ箱みたいな見世だな。次々目新しい、面白いものが出て来る。お前が夢中になる気持ちはよくわかる。」
(略)
「それはつまり、あっちこっちでめずらしいもん、面白そうなもんをつついてきただけってことじゃねぇのか?箱が空っぽになって、もう見せるものがなくなったらどうする?菓子屋は十年、二十年続けてこそ意味がある」

といった言葉は、ついつい新奇な施策を追い求めてしまう行政関係者の方々は心しておくべきことかもしれません。

なごりの月: 日本橋牡丹堂 菓子ばなし(二) (光文社時代小説文庫)
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日本橋の菓子屋を舞台に「小萩」の職人修業が始まる ー 中島久枝「いつかの花」

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