思いもかけない「悪意」から自分を守るには ー 榎本博明「他人を引きずりおろすのに必死な人」

自分としては何も悪いことをしていないはずなのに、上司に誉められたことをきっかけに、今まで親切にしてくれていた先輩が急に意地悪を始めた、であるとか、子供の成績が上がったことを喋ったら、仲の良かったママ友から陰で悪口をいわれるようになった・・・などなど、親しいと思っていた人から、突然の悪意ある仕打ちをうけて呆然としてしまう、という経験がある人もあるのでは。
そういう事態はめったに起きることではないよ、思っているあなた、本書によれば

そもそも、なぜこれほど、他人を引きずりおろすのに必死な人が現れるのか。(略)ひと言で言うならば、それだけ現状に不満をもつ人が多いからだ

ということなので、だれのところに起きてもおかしくない事態であるらしく、本書『榎本博明「他人を引きずりおろすのに必死な人」(SB新書)』で、こういう人から身を守る術をを身に付けることは、現代の日本に生きる人の必須事項となっているようである。

【構成と注目ポイント】

構成は

はじめに
第1章 他人の不幸で安心できる人たち
第2章「出る杭を打つ」は組織の使命である
 ― 日本社会の「横並び主義」が生む強烈な嫉妬
第3章 なぜ仲のよかった人が突然、豹変するのか
 ― 身近な人に港む「妬み」と「攻撃性
第4章 やけにほめる人ほど裏で引きずうおろす
 ―こんな人には要注意! 9つのパターン
第5章 できない人に新設にはしてはいけない
 -危ない人への対処法
第6章 スマホの長時間使用がが「理性」を壊す
 -病理を助長するネツト社会
おわりに

となっていて、たいていの場合、こうした「他人をひきずりおろす行為」をする人は「悪意の塊」のように思ってしまうのだが、実は

そこには「投影」という心理メカニズムがはたらいている。
投影というのは、たとえば、自分が相手をねたみ、攻撃的な気持ちになっていることを認めたくない時、それを相手のなあに見たつもりになり、「相手が醜い気持ちになっている」と思いこむ心理メカニズムのことである。

ということで、「本人に悪気がない」ことが多いらしく、どうやらこの問題の対処法は、善意悪意で考えるのではなく、「心理メカニズム」を理解して望まないと正解にたどり着けないものであるらしい。

で、そのあたりの心理構造を本書から少し引用すると

自分にとって重要とみなされている属性や業績が問題となる場合は、「比較過程」が活性化されやすい。
この場合、友だちや知人の優れた属性や業績によって自己評価が低下するため、その属性や業種への関与度を低めたり、その人物との心理的距離を遠ざけたりする心の動きが生じる

自信がない人が自尊心を保つためによく使うのが「下方比較」である。自分より優れた人物と比較するのが上方比較、自分よう劣る人と比較するのが下方比較である。下方比較をすることで、自分のほうが優れている、あるいは自分のほうがマシだと思えるため、自尊心を保つことができる。

であったり、男女の性差も

一般的に女性のほうが嫉妬深いと言われるが、人の不幸を喜ぶ攻撃的な気持ちは女性より男性のほうが強いようである。

ということであるのだが、ここらはこれ以外にも心理的要素があるようなので、原書のほうで詳しく読んでくださいな。
ただ、こうした人への対処法も

人を引きずり下ろすのに必死な人を見ていると、ふつうなら何も感じない言動にも悪意を読み取って怒り出すなど、「認知の歪み」があるように感じる。
(略)
そうなると、引きずりおろそうとしてくる人に対して、ちゃんと真意を説明すればわかってもらえると考えるのは甘すぎると言えそうだ。平穏なやうとりをするためには、まずは向こうの認知傾向の歪みの特徴をじっくり観察しておく必要がある。

であったり、

できない人は、「バカにされないか」「軽く見られないか」といった思いを抱えているからだ。「見下され不安」を抱えている。見下され不安の強い人物は、親切のつもうでアドバイスしてくれても、自分が助かったということよりも、相手のほうが自分ようできるということのほうが気になる。
比較意識が刺激されやすいのである。
そのため、ちょっとしたことで逆恨みされやすい。
表面上はありがたがっても、心の中では面白くないのだ。

ということで、単純に「ちゃんと説明すればわかってくれる」とか「大変だろうから親切にすれば感謝してくれる」といったことにはならないようで、ここらに思ってもみない「悪意ある行動」を返される原因が隠れているようなので、くれぐれも「能天気な行動」は慎んだ方がベターですね。
このほか、「他人をひきずりおろす」行為を撃破するヒントが散りばめてあるので、本書のほうで拾い集めてください。

【レビュアーからひと言】

本書の最後のほうの

「出る杭は打たれる」などと言われるように、横並び志向の強い日本の社会では、自分を際立たせないように気をつけないと、思いがけないところで足をすくわれることになりかねない。とにかく目立ってはいけないのだ。だから有能な人ほど無能のフリをする。

といったあたりには、ちょっと暗澹としてしまうのだが、心理的なストレスがあふれている現代で、隣の人とうまくやっていくためには、あちこちに目配りしないといけない時代になっているのは間違いない。あとから思っていなかった「悪意」の逆襲をうけて困らないように、本書のTipsで先に自己防衛しておかないといけない時代になったんでしょうね・・・。

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