戦国時代の「下剋上」の典型として、堀越公方足利政知の息子・茶々丸を攻め滅ぼして「伊豆」を我が物にしたのを皮切りに、関東管領の上杉氏の家臣から小田原城を奪い取り、その後、相模国を領土とし、戦国大名の魁といわれる「北条早雲」の若き頃の姿を描く「新九郎奔る!」」シリーズの第2弾。
前巻で元服をして、一応、一人前の武士としてデビューした新九郎なのですが、側室の子で、次男の境遇なので、どう転んでも、家督を継ぐことはできない身の上であったのですが、それが大きく変化するのが今巻。
【構成と注目ポイント】
構成は
第十三話 兄と弟
第十四話 別離れの夜 その1
第十五話 別離れの夜 その2
第十六話 文明三年
外伝 新左衛門、励む!
となっていて、八代将軍・足利義政との関係が微妙になったため、御所を抜け出して亡命をしていた、今出川殿(足利義視)が京都へ帰還します。この今出川殿に近習として使えていた新九郎の兄・八郎も一緒に帰ってくるのですが、その逃亡生活の途中で落ち武者狩りに襲われて、顔に大きなキズを負った状態で帰ってきます。
ところが、帰還そうそうに、将軍・義政に、側近として権勢を伸ばしている日野勝光を追放しろと諫言し、両者の間柄が徹底的に悪くなります。まあ、この日野勝光は、義政の妻・日野富子の実兄なので、富子に頭の上がらない義政としてはとんでもない「悪口雑言」に聞こえたのだろうと思います。
そして、以前に足利義視(今出川殿)が謀反を謀んでいると密告し、彼を処刑させようとした伊勢貞親が正式に復権したり、義視の側近が暗殺されたりといったことから、自らの命を守るため出奔するのですが、そこに八郎も付き従うという事態がおきます。
このまま、義視に同行するということは、伊勢一族への反逆であるばかりでなく、将軍・足利義政への反逆とも取られてしまうため、伊勢一族をあげて、八郎の行方を探します。
そして、比叡山へと向かい道中の川のほとりで伊勢一族に見つかった八郎は、一族の者によって成敗されることとなるのですが、
このため、今まで家督を継ぐなんてことは考えていなかった「新九郎」が突然、備前荏原庄の伊勢家を継ぐ立場となるのですが・・、といった展開です。
なお、今巻の特別編として、シリーズ1〜3巻を通じて、ちょっと影の薄い、新九郎の父親の伊勢盛定の若い頃のエピソードがでてきます。なにかと関係がわかり辛い室町時代なので、こういうサブ情報はありがたいですな。
【レビュアーから一言】
本シリーズを通して感じるのは、「やられたら、やりかえす」という意識が徹底していることで、本巻の最初のほうの、足利義視の都落ちので「落ち武者狩り」に遭遇し、
という捨て台詞をはいた1年後、落ち武者狩りをした村を襲撃し、その時に命をおとした家臣と同じ数だけの村人を首をはねてさらし首にするあたりは、この時代を象徴しているような気がします。さらには、その話を聞いた伊勢家の棟梁・伊勢貞親が「ひどいことであはあるが、そういう事情なら仕方があるまい」といったところをみると、当時の一常識的な考え方であったのでしょうか。
【関連記事】
下剋上の申し子・北条早雲の青春物語が始まる ー ゆうきまさみ「新九郎奔る! 1」
応仁の乱が始まる中、姉・伊都の縁談も進んでいき・・ ー ゆうきまさみ「新九郎奔る! 2」
コメント