鄭和はジャワにいたり、中国東北部での過去を語る ー 星野之宣「海帝 3」

コロンブス・マゼランといったヨーロッパの大航海時代の百年以上前、アジアの大国・明の三代皇帝・永楽帝から第五代・宣徳帝の時代にかけて、7回のわたって派遣された明の大艦隊の指揮をとって、アフリカまで到達した、異色の宦官「鄭和」の大航海を描いた「海帝」シリーズの第3弾。

【構成と注目ポイント】

構成は

第16話 爪哇(ジャワ)
第17話 商人
第18話 猿神
第19話 昆陽
第20話 邂逅
第21話 宦官
第22話 奪回
第23話 勝負手

となっていて、前半はマラッカ海峡の海賊とダイオウイカの襲撃を撃退して、現在のインドネシアの「爪哇(ジャワ)」へと至った、鄭和船団が描かれます。当時のこの地域は昔からの不刺頭という短刀を常備する土着民、

華僑、

アラビア商人が住んでいて、

王国や周辺地域を動かしている状況で、この中に放り込まれた「鄭和」の苦労のほどが想像できますね。
で、この地域の旅行譚で注目すべきは

といった「小さな猿」のような動物なのだが、本書では、ジャワ原人が進化した「大四の人種」という設定ですね。そしてこの人種は言葉は使えないが、テレパシーのように意思を伝えることができる能力を持っています。どことなく、アイヌ神話にでてくるコロポックルのようなイメージがあります。

そして、このジャワで、鄭和は、アラビア商人からイスラム教を信じる「馬一族」の出身であることから、明皇帝への対外貿易の斡旋を頼まれるのですが、これをきっぱり断ります。

これが、これからの航海にどういう影響をもってくるのかは次巻以降の展開なのですが、今巻の後半部分では、これをきっかけに鄭和の幼い頃から現在までの半生記が語られることとなります。

ざっくりと紹介すると、鄭和は雲南の昆陽の生まれで、ここで回教(イスラム教)を信じる一族に生まれたのですが、ここに侵攻してきた、明の燕王(後の明の永楽帝)によって、父親を殺され、さらに去勢されて宦官とされたことによって、運命が大きく変わっていきます。鄭和の父親が彼の生命を救うために処刑されても見せた執念ですとか、

彼が燕王の配下とされて、北方の地に連れて行かれ、そこで生き残り、這い上がるための悪戦苦闘とかは

原書のほうで確認してください。
同じ宮刑を受けながら後世に残る歴史書を著した「司馬遷」と対極の「武」の宦官としての凄まじさが描かれています。

【レビュアーから一言】

鄭和がジャワに滞在している際のエピソードで、この当時、華僑よりも力をもっていたかもしれない「アラビア商人」の凄さがあちこちに出てきます。鄭和が大船団を率いて航海した15世紀の前半は、それまでのモンゴルがアジア、ヨーロッパを席巻した勢いが衰え、マレー半島にイスラム国家ができたり、オスマン・トルコがビザンティン帝国を滅ぼしたり、とイスラム勢力に再び勢いが出始めたことでしょうか。

今巻のアラビア商人がやけに高飛車なのもそのせいかもしれません。

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