武照は皇帝主催の宴席の火事で功をあげ夜伽の座を射止める=園沙那絵「レッドムーダン」【ネタバレあり】

7世紀松から8世紀初頭にかけて、東アジアの大国であった「大唐帝国」の皇帝となり、中国史上唯一の女帝として君臨した「武則天(則天武后)」が故郷で貧窮した生活から後宮にあがり、宮廷内でのし上がっていく姿を描いた、中華成り上がり歴史コミックシリーズ『園沙那絵「レッドムーダン」(ヤングジャンプコミックス)』の第3弾から第5弾。

前巻までで、北京の西方の田舎・井州から後宮入りした武照が、同僚たちのイジメに遭ったりや自分がかばった宮女が皇帝の愛妃に殺されたりという仕打ちを受けたのですが、鄭賢姫による皇帝への献上布を製作する織物試験に合格したことで、今巻は妃候補としてランクアップしていく姿が描かれます。

あらすじと注目ポイント

第3巻 武照は学問所へ入学を許されるが、そこでも名門お嬢様からのイジメが待っていた

第3巻の構成は

第12話 内文学館第13話 学問のススメ第14話 クレマチスの策略①第15話 クレマチスの策略②第16話 不貞第17話 后妃の存在意義第18話 惑いと龍と決意と第19話 対峙

となっていて、前巻で鄭賢妃の織物試験に合格した武照は、貴族たちの学問所「内文学館」への入学を許可されます。ここでは皇帝の后妃たちも学問を学んでいて、同級となるのは、同じ才人仲間の徐恵や簫玲玉たちだけでなく、上の階級に属する「美人」の位の妃たちもやってきています。

ただ、いずれも唐帝国の有力者である二十四功臣や十八学士の子供や縁戚ばかりで、武照のような地位の低く貧乏な貴族は稀なようですね。

ちなみにこの巻から登場する、徐恵の友人の程慶鈴は左領軍大将軍・程知節、悪役の許旦陽は十八学士で宰相の許敬宗の姪という設定です。

父親が元気だった幼い頃は学問も自由にできた武照なのですが、父が早逝し貧窮してからは書物から離れて長い時間が経っており、当時の感覚を取り戻すのはかなりの苦労のようですね。しかし、妃として成り上がっていくためにはここでの成績が大事と奮闘する武照に対し、許旦陽たち名門のお嬢様たちの陰湿のイジメが始まり、という歴史ドラマ定番の流れになっていきます。

そして、数々の嫌がらせにも屈しない「武照」に対し、許旦陽は武照を近くの寺へ呼び出すのですが、そこには許の仕掛けた色仕掛けの罠が待っていて・・という展開です。

第4巻 大宴会でのアピール合戦で武照、初戦惨敗。巻き返しなるか?

第4巻の構成は

第20話 萌芽第21話 変貌第22話 李世民第23話 慰労会第24話 自己吸引合戦①第25話 自己吸引合戦②第26話 自己吸引合戦②第27話 思惑

となっていて、前巻の後半で、「后妃」というのが、聞こえはいいものの皇帝の愛妾の一人であるというショックを受け止めきれなかった武照なのですが、今巻の冒頭で鄭賢妃のトレーニングで、見事「開花」しています。ここでは「百合」っぽい描写が続きますので、ご注意を。

そして、中盤では大唐帝国の第二代皇帝・李世民が西域遠征から帰還し、宮中で家臣や武将たちの慰労を兼ねた大宴会が開かれることとなり、武照たち后妃もその席で功臣たちをもてなすとともに、その夜の「夜伽」の座を争う戦が幕を開けることとなります。

この宴会の前に、廷臣の魏徴が長孫皇后が亡くなった後の次の皇后を決めるよう進言していますので、この時の「夜伽」も皇后選びに大きな意味を持ってはいるのですが、史実としては、李世民は長孫皇后亡き後、皇后は立てていませんね。

そして、今回の夜伽の候補は「初物」ということで、今まで一度も皇帝に夜伽をしていない后妃に限られることとなり、候補者がかなり絞られてくるのですが、中でも最有力なのは、宰相・許敬宗の姪で内文学館首席の許旦陽です。彼女は李世民へのお酌と同時に自己アピールをするときも、そつなく好印象をかち得ています。

これに対し、武照のほうは「得意なものは水汲み」と的外れをアピールをして、李世民から「(こうつは)馬鹿なのか」と評されているのですが、このアピールが次巻での伏線となっています。

このままでは夜伽候補者となる「10枠」から落選間違いないのですが、武照は西域遠征で功績一番の「李勣」将軍の横に陣取って待ち構えることと、李世民に対する質問が、偶然、長孫皇后が生前に彼にしたものと同じことを口にすることで、選抜へ残留することに成功します。ここでそんなことを言ったか、は原書のほうで確認してくださいね。

第5巻 名家のお嬢様の計略は宮廷内に火事を巻き起こす

第5巻の構成は

第28話 仕掛ける第29話 炎第30話 反転第31話 怒り第32話 許旦陽第33話 選ばれた后妃第34話 吟猿抱樹第35話 夜伽

となっていて、武照が夜伽候補者に選ばれたことに危機感を抱いた許旦陽は、后妃たちが皇帝・李世民の前で羊の丸焼きを切り分けて供するという儀式を利用して、彼女を葬り去ることを企てます。武照が肉を切りに皇帝の面前にでてきたところに、天井に釣られている行灯を落として大火傷と大怪我を負わせようという作戦ですね。

しかし、ここで許旦陽の計画計算違いが起きます。許旦陽の命令でおつきの宮女が行灯を吊るした綱をきったところに、手元を狂わせた舞踊団の火輪がぶつかり、行灯は皇帝・李征民に向かって落ちていきます。武技に長けた李世民はこの行灯をかわすのですが、行灯の火が宴会場の装飾品に引火し・・という筋立てですね。ここで前巻で武照がアピール失敗の原因となった「得意なものは水汲み」の伏線が回収されることとなるのですが詳しくは原書のほうでどうぞ。

そして、当然、行灯が落ちることとなった犯人捜しが始まり、許旦陽の宮女が捕まるのですが、許旦陽は自らの陰謀を隠蔽するため、宮女にすべての罪をかぶせようと偽証を始めます。しかし、事前に許旦陽の悪だくみを彼女のパシリとしてこき使われて不満を抱いていた空林から知らされていた武照が逆襲を始め・・という展開です。

少しネタばれすると、許旦陽が綱を切るために宮女に渡した小刀が彼女のものだったというあたりがヒントになります。

後半では、皇帝・李世民をはじめ廷臣たちを火事から救った武照は李世民の関心をひくこととなり・・といった展開になるのですが、詳しくは原書で。

レビュアーの一言

第5巻で武照を大怪我させる計略がくるって、皇帝・李世民を危険にさらした許旦陽は処刑されてしまうのですが、牢内で頸動脈を切られて処刑されるという刑で、皇帝殺害という罪にしては軽いように思えます。突厥などの異民族との戦いでは自ら先頭にたっていた攻撃精神と実の兄と弟を血祭りにあげ、さらに父親を圧迫して譲位させたところから想像するに、下っ端妃が自分に害を及ぼす結果を呼び起こしたことに容赦はしないと思われるのですが、ここは、おそらくこの宴席にも出席していたであろう宰相・許敬宗への配慮があったのかもしれませんね。

許敬宗は好色で貪欲、冷酷で残忍な人物、と評判のよくない人なのですが、武照が武則天へ即位するときにも味方となり、即位後も武照のために汚い仕事もやっているのはここらが発端となって、武照派に取り込まれていった結果のかもしれません。

【スポンサードリンク】

コメント

タイトルとURLをコピーしました