源氏物語には、宗像の若き日の恋が隠されている=「宗像教授異考録」12・13

圧倒的な歴史的知識と猪突猛進といってもいい探求心、そして、制約をもたない独自の理論構築と考察力で、古代史・人類史の謎解きに挑み続ける異端の民族学者「宗像伝奇」の活躍を描いた「宗像教授」シリーズの第2シリーズ『星野之宣「宗像教授異考録」(ビッグコミックス)』の第12弾から第13弾。

あらすじと注目ポイント

第12巻 宗像は海の怪異の秘密と、地下湖に封じられた縄文の記憶を呼び覚ます

第12巻の収録は

第1話 七人みさき
第2話 生と死の女神
第3話 神の背中

の3話。

第1話の「七人みさき」は、日本各地に伝わる、七人の川や海で亡くなった死靈で、出会った人を取り殺し、そうすると七人の死靈のうち一人が成仏し、取り殺された人の霊が七人の一員に加わってともに彷徨うようになるという亡霊で、有名なのは土佐の長宗我部元親の甥・吉良親義とその家臣たちの亡霊です。

在野の民俗学研究家・雨宮に招かれて、彼が集めた6人の大学の同級生たちとの集まりに出席した宗像が、雨宮の突然の事故死の後、彼らが封印していた20年前の学生時代の忌まわしい出来事と、「七人みさき」伝説の隠された古からの海難事故の記憶を明らかにしていきます。

二話目の「生と死の女神」では、長野県の八ヶ岳連峰の近くで発見された地下湖に調査に入ったところで、地震によって閉じ込められてしまった、忌部神奈の救援に宗像が向かいます。

そこで、彼が神奈とともに見つけたのは、かつて縄文時代に栄えていた八ヶ岳周辺の縄文人を呑み込んだ古・八ヶ岳の噴火の痕跡と、イザナギ・イザナミの「黄泉国神話」の基となった遺跡群で・・という展開です。

三話目の「神の背中」は、同じく諏訪地方の縄文遺跡「藤内遺跡」で出土した神像筒型土器がテーマです。神像をかたどった精緻な造形が実は背面で、正面には素描のような文様が刻まれているだけという奇妙な形状の土器なのですが、その形状の秘密に気づいた民間研究家を描いた掌編です。

第13巻 源氏物語には、宗像の若き日の恋が隠されている

第13巻の収録は

第1話 源氏物語昆虫記
 1.蜻蛉
 2.胡蝶
 3.蛍
 4.空蝉
 5.鈴虫
第2話 赤神 黒神

の二話。

一話目の「源氏物語昆虫記」は宗像が学生時代、憧れの存在であった、助成研究家「高群真智」の姪「高群紫」という国文学、なかでも源氏物語の研究家から著書が送られてくるところからスタートします。

源氏物語では植物系の巻名と並んで、虫の名をタイトルとする巻も一割ぐらいあるのですが、この著書がきっかけで七年前に亡くなった「高群真智」の墓参に訪れた宗像は、源氏物語が、もともとは2つの系統に分かれていた話を後に一つの物語に混ぜ合わせたという説の真偽と光源氏の女性遍歴をたどりながら、浦島伝説との相似性と宗像の若い頃の恋物語を辿っていきます。

二番目の「赤神 黒神」は青森県の十和田湖に伝わる、一人の美しい女神を取り合った赤神、黒神二柱の神の争いがテーマなのですが、宗像はそれが古代の「十和田火山」の噴火に由来していることを推理するのですが、これが現代の北朝鮮の白頭山の噴火と亡命事件へと繋がっていきます。

レビュアーの一言

12巻と13巻では、熊のような風貌で、とても女性に縁があるとも思えない、宗像の現在と過去に縁のあった二人の女性が登場します。
若い頃の想い人「高群真智」は、「宗像教授伝奇考」に初登場するのですが、今回で宗像との関係がはっきりしてきます。
もう一人の「忌部神奈」は「異考録」シリーズを通じて、常に宗像の周囲を彩ることになるのですが、彼女との関係がどういう結末を迎えたか、はこのシリーズの次シリーズの「世界編」で明らかになるのですが、どちらも「悲恋」で終わっているのは、事故死した妻と娘への思いやりかもしれません。

コメント

タイトルとURLをコピーしました