「超能力少女」が帝都をかける ー 伽古屋圭市「なないろ金平糖 いろりの事件簿」

ミステリー

東京の日本橋、日本橋川と竜閑川の間の下町で江戸時代の終わりから看板をかかげる金平糖を専門で商う菓子屋「七ツ堂」の看板娘・七ツ瀬いろりが愛猫ジロとともに、その不思議な力を使って数々の謎を解く活躍を描くのが本書『伽古屋圭市「なないろ金平糖 いろりの事件簿」(宝島社文庫)』

彼女は、人の記憶が視えたり、隠している過去を見通すことができたり、といった「千里眼」の能力の持ち主です。この能力によって、学生時代はひどいいじめにあったこともあり、金平糖を食べたときに限って、その色ごとに異なる能力を発現させるように制御して、その能力を隠しているのですが、「絹」という少女に出会ってから、その能力を使って、数々の事件を解決する途を歩き始めることとなる物語です。

【構成と注目ポイント】

構成は

第一話 絹の人形
第二話 志津の執念
第三話 礼子の思い
第四話 絹の行方

となっていて、まずは本巻のメインキャストとなる七ツ瀬いろりと愛猫のジロの会話の部分から開幕。いろりは「千里眼」の特殊能力をもっているのですが、これは、巻の後半で明らかになるのですが、ジロを交通事故から救ったことから、母ネコの猫又からこの能力を授かった、という設定ですね。

第一話の「絹の人形」では、この巻で「いろり」のいい相方となる少女「絹」の登場です。出会いは、いろりが自転車で逃げる「かっぱらい」を追いかけているときに出会い頭で衝突するのですが、このぶつかった表紙に、「絹」の持っていた、母親の形見の「人形」が通りかかった自動車の幌の上に乗っかり、姿を消してしまった、というものです。母親の形見といいながら、「あんなもの。なくなって、ちょうと良かったのかもしれない」と言い捨て、必ず捜すという「いろり」の申し出を厳しく拒絶するのですが・・といった筋立てです。

とはいうものの、亡くなったのは自分の責任とジロの助けも借りながら見つけた、その人形に隠されていたのは、母親の娘に対する思いのこもった・・という展開ですね。

第二話の「志津の執念」では、「いろり」が学生時代に、彼女の千里眼の能力を疎んで、ひどいイジメをしていた主犯格の女性・志津が登場します。彼女は当時の自分の行為を謝罪した上で、「いろり」の能力を使って、自分の父親を殺して金品を奪った強盗犯を捕まえてくれ、と依頼してきます。

彼女のことを心からは許せない「いろり」だったのですが、残忍な強盗を許せない「いろり」は彼女の依頼を受け、犯行現場の猿楽町の路上に行って、透視を始めます。そして、その透視で、筋骨隆々とした体格や、卑しさと酷薄さが両眼にやどり、左の頬に大きなキズのある顔貌をつきとめ、その後の聞き込みで、その男が2週間前まで宿泊していた宿をつきとめることができます。

しかし、この捜査の過程で、「いろり」は志津の隠している秘密に気づくことになり・・・という展開です。

ちなみに、第一話で登場した「絹」が「いろり」の妹分になって、この話では、強盗犯人の「似顔絵」を描くのですが、これがひどく上手いという才能を発揮します。

第三話の「礼子の思い」では、前話で「いろり」と「志津」が会っていたカフェで「いろり」の特殊才能の話を聞いていた男性が依頼にやってきます。それは彼の家で一ヶ月前から雇っている女中・礼子が、彼の両親のスパイかどうか探ってくれ、という依頼です。

というのも、彼は吉原の女郎・真畿を贔屓にしていて、身請けして妻にする気でいたのですが、両親の反対に会います。で、両親を説得している間に、将来を悲観した真畿が身投げして自殺するという事態がおきます。これがもとで家を飛び出し、絶縁状態になっている状況で、両親が彼の近況を探ろうとしているのでは、と疑っているんですね。

彼の依頼を受けて、礼子の周辺を探っているうちに、自殺したといっていた「真畿」そっくりの女が現れ、礼子が彼女に大金を渡しているところを見つけるのですが・・・という展開です。
善玉と悪玉が大逆転する筋立てですね。

最終話の「絹の行方」では第三話の終盤で、店番をしてくれていたはずが行方分名になった「絹」が、第二話の強盗犯に誘拐されてしまっていることがわかり、「いのり」が彼女の力を120%ぐらい使っての救出劇です。

この強盗犯の男が、とても凶悪で残忍なので、「いろり」もあわやという危機に陥ってハラハラするのですが、そこをどう切り抜けるか、は本書のほうで。

【レビュアーから一言】

今巻の舞台は「大正時代」となっていて、筆者が数多く著している「大正」シリーズの一角を占める作品となってます。そのせいか、途中で、「体と探偵 謎とけ乙女」の主人公たちが登場する場面もあるのですが、それがどこかは、本書で確認してくださいね。

なないろ金平糖 いろりの事件帖 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)
大正時代の東京。日本橋にある金平糖専門店「七ツ堂」のひとり娘・七ツ瀬いろりは、店の看板娘として近所の人たちから愛されている。 けれど、いろりには他人に言えない不思議な能力があった――。 人やモノに触れることで、そのものの過去や未来を視(み)...

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