調剤薬局の「アンサングシンデレラ」はかなりツンデレー 塔山郁「薬も過ぎれば毒となる」

医療現場を舞台にした物語の花形というと医師、しかも患者の手術で華々しく活躍する「外科医師」というのが鉄板のところで、ちょっと変化球を狙ったところが、精神科医か監察医というところ。さらに、医師でない医療スタッフで、ミステリーのメインキャストとなるのはせいぜい「看護師」さんまでで、石原ひとみさん主演で頑張ったとうえども、「薬剤師」というのはほとんどメインとして取り上げられるのは少ないのは事実です。そんな「日陰の身」である薬剤師、しかも医療ミステリーの宝庫とおえる病院薬剤師ではなくて、調剤薬局の薬剤師を主人公にしたミステリーが本書『塔山郁「薬も過ぎれば毒となる」(宝島社)』です。

構成と注目ポイント

構成は

第一話 笑わない薬剤師の健康診断
第二話 おせっかいな薬剤師の受診勧奨
第三話 不安な薬剤師の処方解析
第四話 怒れる薬剤師の疑義照会

となっていて、この物語の探偵役となるのは、ビル街の中にある「どうめき薬局」という調剤薬局に勤務する「眼鏡をかけたくらい感じの、長い髪を黒いゴムで無造作に結び、額にしわを作って、手元のタブレットをにらんでいる」といういかにも、世間で定番のイメージの生真面目な理系女子といった薬剤師さんです。この物語のワトソン役を務めるホテルマン・水尾爽太が、喫茶店でハーブティーの素人では知らない副作用をアドバイスするこの女性・毒島花織の姿をみかけるところからスタートします。

第一話の「笑わない薬剤師の健康診断」は、ワトソン役・水島爽太が「水虫」を診察してもらった薬の処方箋を。花織の勤務する薬局で調剤してもらうのですが、彼が処方どおりに薬を塗っているにもかかわらず、一向に治癒しないというところから、彼女が彼の本当の病気を推理する、という筋立てです。やk剤師としては少々「越権」かもしれないですが、物語の最初の話としては少しでもインパクトのあるほうが印象に残りますよね。


第二話の「おせっかいな薬剤師の受診勧奨」では、ホテルに勤務している「爽太」が、宿泊客の親子の母親のほうから、娘の処方しているアトピーの薬がホテルの部屋で紛失したので弁償しろ、とねじ込まれる苦情の解決です。この紛失騒動には、ホテルの清掃チームの内部対立も絡んでいて、爽太は花織に波ついて、このアトピーの薬の捜索と、清掃チームの対立を一度になんとかしてもらる、という展開ですね。この展開には「花織」の薬学の専門知識がバリバリで発揮されることになるので、学校の授業で「化学」が嫌いだった人は心して読んだほうがよいかも、です。


第三話の「不安な薬剤師の処方解析」は、花織の勤務する「どうめき薬局」に寄せられた苦情の処理に関するお話。苦情というのは、この薬局の馴染客から、処方されていた薬の数量が間違っていいたために、足りなくなってしまった。具合が悪くなるといけないから、不足している薬を自分の時程する時間に家へもってこい、というクレームが入ります。薬の分量は記録を見る限り、間違えていないので、その馴染客の家に薬剤師が事情を確かめにいくことになります。で、ひょんな経緯から、同行することになった爽太とその薬剤師が家に行くと、甥を称する男が応対して、その馴染客の女性とは会わせてくれないのですが・・・、という展開です。

第四話の「怒れる薬剤師の疑義照会」は、いつも冷静で正義感の強い薬剤師「毒島花織」が、第一話で爽太が水虫の誤診をされてた医院の院長と全面対決する話です。その院長には、「やせ薬」といわれる薬剤をやたらと処方して、あくどく儲けているという疑惑があるのですが、この疑惑の真相究明と、院長の天誅に、花織が乗り出すのでしが、花織の行動はかなりエキサイティングで、いつもの彼女らしくありません。実は、そこには彼女の家庭の秘密が隠されていて・・という展開です。ここで、花織が薬科大学のミスキャンパスになった理由とか、彼女がフリーの薬剤師として、日本国中を渡り歩いていた理由が明らかになるのですが、詳細は原書のほうでどうぞ

レビュアーから一言


剤師を主人公にした物語と言うと、石原さとみさんが主演した「アンサングシンデレラ」の原作漫画が結構面白いのですが、このシリーズは調剤薬局という病院内とは全く違って、医者の高圧的な態度にイラッときている様子や、ホテルの客のクレームを薬剤師が解決するとか、「医療ミステリー」とはちょっと違うミステリーに仕上がっています。「薬剤師」が主人公の「日常の謎」系のミステリーというところでしょうか。

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