土方歳三と沖田総司の「幕末後」の物語始まるー赤名修「賊軍 土方歳三 1」

新選組は、崩れ行く徳川幕府を守って「義」に殉じた最後の武士なのか、時代の変化を読み取れず、維新の志士たちを血祭りにあげていた時代錯誤の暴漢たちであるのかは、その人が立脚するところによって評価が分かれるところなのですが、沖田総司をはじめ新選組の隊士たちは実戦に秀でたプロの「戦士」たちであったことは間違いないところでしょう。
そんなプロ戦士である「隊士」の中でも、幾多の新選組内の粛清の嵐をかいくぐり、幕末の騒乱の中、徳川幕府の最後の抵抗といえる「北海道戦争」まで戦い抜き、戦乱の中に倒れた新選組副長・土方歳三の「幕末後」を描くのが本シリーズ「賊軍 土方歳三」です。

構成と注目ポイント

構成は

第1話 再会
第2話 近藤の願い
第3話 朧のダンダラ
第4話 百十五の遺髪
第5話 一番と三番
第6話 新選組

となっていて、今シリーズは幕府軍が「鳥羽伏見の戦」で新政府軍に破れ、江戸へ撤退した近藤勇が新たに率いた甲州鎮撫隊も甲州戦争で敗退し、流山に逃れた近藤が捕縛、処刑された後から始まります。近藤の助命嘆願に失敗した新選組の元副長・土方歳三が、江戸の千駄ヶ谷で病気療養中の沖田総司のもとへやってきます。

土方は旧幕府軍の副総裁・榎本武揚と合流してあくまでも新政府軍と戦うつもりで、これに合流しないかという彼の誘いに、療養中の沖田は迷うことなく同意します。通説では、沖田は病気療養中に労咳で死んだことになっているのですが、本シリーズでは、土方の小姓として戊辰戦争後も付き従っていた「市村鉄之助」が実は甲州勝沼の戦で戦死したことになっていて、沖田総司が市村鉄之介にすり替わった、という設定ですね。

土方が沖田のもとを訪ねたのは、沖田を土方の函館行きに誘うこともあるのですが、近藤勇の最期を看取り、さらに京都の三条大橋に晒される近藤の首を奪取する企みに彼を同行させることもありました。明治新政府は、幕末に志士を多数殺害した新選組のリーダーである近藤をとことん貶めるつもりのようで、首は台座に釘で念入りに打ち付けるという厳重さです。この厳重な警備の中で首を盗み出すには、沖田の剣の腕が必須だったのかもしれません。

近藤勇の首を取り返した土方と沖田は、新政府の近江の関所も、鳥羽伏見の戦死者の耳や遺髪を国元へ届けるという名目で切り抜け、会津藩にある新選組屯所へ到着します。近藤勇を弔うために、会津のどこかの寺で供養してもらうよう交渉するのですが、会津藩は当時、新政府から賊軍として討伐の標的となっていて、ここで近藤勇の供養をすれば新政府軍から糾弾されかねないので、どこの寺も及び腰なのですが、ここで一肌脱ぐのが・・・という展開です。

レビュアーから一言

新選組の物語は、会津藩の預かりとなって、京都で倒幕活動をする浪士や長州・薩摩の志士たちと対決するところがたいていメイン・イベントになって、鳥羽伏見の戦で徳川幕府が破れてからのものは敗戦つづきのせいか、あまり語られることがなかったように思えます。しかし、「武士(もののふ)」らしさは、会津、東北、北海道と敗北しながら転戦していく中に一番見いだせるのかもしれません。土方歳三の「敗北の物語」を、しっかりと追いかけて行きましょう。

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