お妙の仇は、あの大物、只次郎どうするー「さらさら鰹茶漬け 居酒屋ぜんや10」

江戸の神田にある亭主に死別した美人女将「お妙」の営む居酒屋を舞台に、彼女の美貌とうまい料理を求めて訪れる旗本の次男坊で、美声の鶯飼育の名手・林只次郎や大店の主人たちが繰り広げる人情時代劇「居酒屋ぜんや」シリーズの第10弾が『坂井希久子「さらさら鰹茶漬け 居酒屋ぜんや 10」(時代小説文庫)』です。

前巻で、両国の川開きで痴話げんかにまきこまれて腕を怪我したのが誤報を呼んで、心配してかけつけた「お妙」ととうとう結ばれた只次郎だったのですが、なかなかそれ以上の進展をみない中、お妙の両親や前夫・善助たちを殺した黒幕との最終対決となるのが今巻です。

あらすじと注目ポイント>巨悪「一橋卿」vs只次郎の対決が読みどころ

構成は

「暑気あたり」
「草市の夜」
「棘の尾」
「甘い算段」
「戻る場所」

となっていて、第一話の「暑気あたり」は。前巻の花火の時の誤報のおかげで、お妙の気持ちを確かめることのできた只次郎は、彼女への贈り物にする緑メノウの簪を買った帰り道、痩せてかぎ裂きだらけの着物を着た少女が道端で熱中症のかかっているところを助けます。「お花」という名の女の子は上野の下谷山崎町あたりの極貧の長屋に母親と一緒に住んでいるのですが、この巻の重要な「狂言回し」となります。

第二話の「草市の夜」では、京都から嫁入りしてからお妙を頼りにしている升川屋のお志乃が、「納豆嫌い」の克服を目指します。ただ、そういう理屈をつけてはいても、本当の目的は、男女の仲になりながらも、只次郎と所帯を持つのを遠慮している「お妙」の真を確かめるのが目的。ここに前話にでてきた「お花」の母親が、只次郎の勧めで「ぜん屋」の毎日、枝豆売りに来るという面倒くさい事態も影響してか、なかなかお妙の心を前に行かせることはできないようです。

第三話の「棘の尾」では、前巻まででお妙の父親と前夫、そして前夫殺しに手を貸していた鴬の糞買いの又三殺しの重要な手がかりとなる、只次郎が手塩をかけて育てたルリオ調の二羽の鴬の献上先が分かってきます。一羽は大奥へ行儀見習いに入った姪の便りから、現公方の母・慈徳院のところで飼われているのがわかったのですが、残るもう一羽の飼育先が「一橋様」の下屋敷であることがわかります。この当時の「一橋様」というと、「ぼろ鳶」をはじめ今流行中の数々の時代小説で「幕府を私する陰謀家」として悪役キャラのひな壇に上っている10代将軍・徳川家斉の父「一橋治済」ですね。
ただ、お妙の「仇」が分かったといっても相手は幕府の実権を握っているといわれる「一橋卿」。権勢をふるっていた松平定信を老中の座から追い落としたほどの権勢の持ち主なので、おいそれと手が出せる相手ではありません。
只次郎は。仇を正体を知りながら動けない心の憂さを、第四話の「甘い算段」で、お花の母親が男と出奔したため、急遽、お花の身の振り方でドタバタと過すことで紛らわしていたのですが、とうとうお妙の仇をこっそり探っていたことがお妙にバレて、大目玉をくらってしまうことになります。

そして、お妙にこれ以上「仇」のことは探るなと釘をさされるのですが、今度は仇の親玉である「一橋卿」から屋敷へ招聘がかかります。名目は只次郎の「鴬飼育の名人」という噂に興味をもった、ということなのですが、本当の狙いはどこにあるのかわかったものではありません。屋敷で、その一橋治済本人と面談した只次郎の運命は・・といった展開です。

今巻でこの「ぜん屋」シリーズのメインストーリーは終了ということで、只次郎とお妙の仲が最終的にどうなるのか、仇がこの時代の悪党の超大物「一橋卿」とどう対決するのか、原書のほうでお楽しみください。

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レビュアーの一言>ぜん屋特製の「林檎煮」はいかが

「ぜん屋」ででてくる料理のレビューもこれで最後なのですが、今回は定番の居酒屋料理ではなく「変化球」が出てきます。

ちょうど手のひらに握り込めるくらいの赤い実を、皮のついたまま櫛型に切り、芯を取る。それを鍋の底に並べ、少量の水と佐藤、それから味醂を入れて煮る。
味醂が煮切れ、果実が透き通ってきたら出来上がり。熱々でも、覚ましても美味しい。

という林檎煮です。これを汁ごと小鉢によそって、熊吉とお花が食するのですが、

ふうふうと林檎煮を吹き冷まし、口に含んだ熊吉が「旨い」と湯気を吐きつつ天を仰ぐ。その隣で、お花もひと口。さりげなく見守っていると、ほんのわずか笑窪が:浮かぶ。甘い物を食べると、頬がきゅっと窄(すぼ)まるらしい

という可愛らしいシーンが印象的です。

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