化学探偵と庶務課の好奇心娘は今日も「学内の謎解き」ー喜多喜久「化学探偵 Mrキュリー」4〜5

実験しか興味のない変わり者の天才科学者「沖野春彦」と四宮大学の庶務課の新米事務職員「七瀬麻衣」をメインキャストに、文系から理系まで幅広く学部を揃えた中堅私立大学・四宮大学の庶務課に持ち込まれる不思議な事件の謎を解いていく化学系コージーミステリー『喜多喜久「化学探偵 Mrキュリー」(中公文庫)』シリーズの第4弾と第5弾。

あらすじと注目ポイント

第4巻の収録は

第一話 化学探偵と猫騒動
第二話 化学探偵と互助組合の暗躍
第三話 「化学探偵」の殺人研究
第四話 沖野晴彦と偽装の真意
第五話 七瀬舞衣と三月の幽霊

となっていて、第一話「化学探偵と猫騒動」では、第一巻の「化学探偵と悩める恋人たち」にでてきたストーカー女子学生・五郎丸早苗の登場です。

彼女は「猫」に目覚めて大学の「保護猫サークル」で活躍しているのですが、突然に「猫アレルギー」にかかってしまい、サークル活動の断念とそのサークルの憧れの彼氏への失恋恐怖の悩みを解決する話です。少しネタバレすると、「猫アレルギー」ではなく、誰かの隠された「嫉妬」が原因で、という人間関係の闇が感じられるお話です。

第二話の「化学探偵と互助組合の暗躍」は学術論文の利用料を回避する「闇サイト」の協力者の一人となっている学生が、その証拠となるUSBを落としたことがきっかけで、脅迫を受ける、というお話。要求されるのが、ゲームのガチャを引くためのゲーム内の有料アイテムというのが当時の時代性を表わしていますが、それよりも学術論文の利用料をごまかすために闇サイトまでつくってしまうという「理系学生」の生真面目さですね。

第三話の「「化学探偵」の殺人研究」は、本編の主人公・七瀬舞衣の幼馴染のアイドル兼俳優の「美間坂剣也」を主人公にした「化学探偵ミステリ―」の収録中におきる殺人事件の解決話。とはいっても、実際の「殺人」ではなく「話中話」ですので御安心を。この「化学探偵」の本編では血なまぐさい事件はおきません。

第四話の「沖野晴彦と偽装の真意」は、Mrキュリーこと沖野晴彦の母校・東理大学でおきた化学実験に使う「スターラー」という実験装置の盗難事件を解決する話。この事件は、前任教授がアカハラトラブルで辞任した五、沖野の東理大学時代の旧友が引き継いだ老舗研究室で起きているのですが、実は盗難事件よりももっと重大な「事件」が隠されていることを沖野が見つけ出します。

第五話の「七瀬舞衣と三月の幽霊」は四宮大学の初代工学部長の銅像の頭がもげていた事件を舞衣ちゃんが解決する話。幽霊の仕業だと主張するSOSこと四宮オカルトサークルの主張や、七年前に自殺した学生の幽霊を見てしまって体調を崩した「花隈」(第2巻の「化学探偵と幻をみた者たち」にでてくる太め女性好きの男子学生)を心配する彼の恋人・みゅーたんの脅しに煽られながら、舞衣ちゃんが独力で謎の解明に挑みます。

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第5巻の収録は

第一話 化学探偵と無上の甘味
第二話 化学探偵と痩躯の代償
第三話 化学探偵と襲い来る者
第四話 化学探偵と未来への対話
第五話 化学探偵と冷暗の密室

となっていて、第一話の「化学探偵と無上の甘味」は、大学内の科学実験サークルの「四宮サイエンスサークル(SSC)」と「四宮科学愛好会」の合併話からでた勝負話。

というのも両方のサークルとも部員減少で運営難の解消のために、二つのサークルを統合合併することにしたのですが、どちらが主として吸収合併したことにするかで揉め始め、看板をかけて「まだ知られていない物質を合成し、その甘さ」で勝敗を決める、ということに。まあ、部外者にとってはかなりくだらない勝負なのですが、当人たちは至って真剣で、とSSCのほうはOGで四宮大学の教員の初島准教授がアドバイスしたり、自腹で試薬代を出したり、実験機器を貸したりと肩入れをしてきます。この初島準教授に挑発された沖野が科学愛好会側に立つことになるのですが、勝負の行方は・・といった展開です。

第二話の「化学探偵と痩躯の代償」では、舞衣が高校時代の同級生・布施朝香に再会するのですが、高校生のときは相当「太め」だった彼女が、すらっと痩せた姿に見違えます。ついでにいうと「七瀬」のことを「ななすぇ」という妙な発音にもなっていてそこのところは少々、違和感を覚える舞衣だったのですが、しばらくして、舞衣は朝香の恋人となのる男性から彼女が食事のあと嘔吐したり、長時間、眠ってしまったりといった異常がはっせいしていると相談をうけます。それを沖野に相談すると、そこには朝香が痩せたことに隠された秘密があることがわかるのですが・・といった筋立てです。

第三話の「化学探偵と襲い来る者」は第2巻の第五話「化学探偵と人魂の正体」で登場した自作占いの凝っている国見千里の友人・隅田梨奈が襲われて、学生証と彼女のネックレスを奪っていったという事件の解決です。最近、四宮大学の近辺では、四宮大生から学生証を奪うという事件が二件おきていた、里奈の事件は三例目なのですが、学生証以外のものが奪われたのは初めてです。これからもたくさんの学生が被害に遭うことを心配した猫柳と舞衣たちに頼まれた学生たちが「四宮大生狩り・狩り」を組織して、犯人を捕まえるのですが、里奈の件についてはやってないと否認する上に、アリバイもあります。さて、三番目の犯人は・・ということで、少々ネタバレすると、ネックレスを奪っていった、というのがヒントになります。ネックレスは高価なものだと里奈の恋人がプレゼントしてくれたものなのですが、実はそうでもないことがわかってきて、といったところですね。

第四話の「化学探偵と未来への対話」は舞衣の叔父夫婦の知り合いの息子が「引きこもり」になっているのですが、その相談にのっていくお話。「引きこもり」になった原因は、仲の良かった同級生の女の子が突然、学校を中退したことにあるようなのですが、実はその子は、絵の才能が見いだされ、画家になるため専門の修行を始めていたことがわかります。どうやら、彼の引きこもりは、今まで成績もよく数学者を目指していたのが、ある時才能の限界を感じたところにあるようです。沖野は舞衣にかわって、彼にアドバイスをするのですが・・、という展開です。

第五話の「化学探偵と冷暗の密室」では、学内の節電対策のため、無駄な電気をつかっている部屋を調べていた舞衣が、中がスカスカなわりに電気を食っている「冷蔵室」の存在を沖野に教えてもらいます。場所がわからないので、沖野に同行してもらった舞衣なのですが、二人で冷蔵室に入ったところで古くなっていたドアレバーが折れてしまい、二人はそこに閉じ込められてしまうのですが・・といった筋立てです。今話はミステリーというより、軽めのハーレクインといった感じですかね。

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レビュアーから一言

シリーズも四作、五作目となると、舞衣と沖野に謎解きしてもらったキャストも増えてきて、それが相互に関連しあう「ごった煮状態」が出現してきています。
ただ、コージーミステリーの楽しみは、登場人物がこなれてきて、それぞれの人間模様も構築されてきたところで、国家の機密や人の生死にほとんど関わらない、フツーの暮らしの中に浮かび上がってくる謎を解く、といった「平穏な謎解き」にあります。
この「科学探偵」シリーズも、熟度が増してきて、「まったり」ミステリーがしっかり楽しめるシリーズになってきた感がありますね。

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