クリスタル・スカルや恐竜土偶が招く殺人の謎をとけ=蒼井碧「オーパーツ 死を招く秘宝」

考古学上、その成立年代や製造方法が不明であったり、当時の加工技術や知識では制作不可能であるため、超古代文明や古代における宇宙人の飛来を想像させて、現代人の「好奇心」を刺激する出土品の「オーパーツ」。
そんな不可思議な「オーパーツ」の鑑定士を名乗る、自分に瓜二つの男とともに、「オーパーツ」の周辺でおきる数々の事件の謎を解いていく物語が本書『蒼井碧「オーパーツ 死を招く秘宝」(宝島社文庫)』です。

あらすじと注目ポイント

第一章 十三髑髏の謎
第二章 浮遊
第三章 恐竜に狙われた男
最終章 ストーンヘンジの双子
エピローグ

となっていて、この物語は、バイトで学費を稼ぎながらS大学に通っている男子学生「鳳水月」(おおとりすいげつ)が、自分に瓜二つで、オーパーツの鑑定士を自称する「古城深夜」という男性から、大学の授業の代理受講と試験の代理受験を、時給1万円でオファーされるところから始まります。古城は大金持ちの父親から大学くらい卒業しないと生活資金の援助はしない、と言われてS大学の入学したのですが(ちなみに、S大学は国内序列一位の大学、となってます)、オーパーツ関連の仕事が忙しくて大学に来る暇と意欲がなく、自分にそっくりの水月に代理を頼んできた、という設定です。
で、これがきっかけで、水月は古城が巻き込まれていく、オーパーツ絡みの事件に彼も巻き込まれていく、という流れになっています。

第一話「十三髑髏の謎」=クリスタル・スカル

まず、第一の事件である「十三髑髏の謎」は、古代マヤのルバアントゥン遺跡で出土した水晶髑髏「ヘッジス・スカル」と同じように造られた、世界に散らばっていた13の水槽髑髏に絡んだ事件です。この13の髑髏全部を、財前という研究者が全部を集めたのを記念して鑑定会を開き、古城ほかが招待されたという筋立てです。
事件のほうは、翌日、この13の水晶髑髏に囲まれて、財前博士が視察されているのが発見されるのですが、その部屋は、扉の下に空いている猫用のドアしか開かない密室状態で・・という展開です。
少しネタバレしておくと、丸い形をした水晶髑髏を利用した物理トリックですね。

第二話「浮遊」=黄金のスペースシャトル

第二の事件「浮遊」はコロンビアで出土する飛行機の形をした黄金でつくられた「黄金シャトル」の収集家夫婦が殺されているのが発見されたという事件。現場となる自宅の2階の部屋はドアも窓も鍵がかかっている密室状態というお決まり設定なのですが、殺人と合わせて、黄金シャトルもいくつか盗まれているというおまけつきです。
謎解きのヒントは屋敷の周辺をうろついていた男の「この家の近くでUFOを撮影した」というあやしげな証言と家の近くの川に何かがとびこむ音がしたという証言なのですが・・という展開です。

第三話「恐竜に狙われた男」=恐竜土偶

第三の事件の「恐竜に狙われた男」では、国内の恐竜研究の権威である榊原という研究者が、自身の別荘でサバイバルナイフのような鋭利な刃物で頸椎を刺されて殺されているのが発見されます。別荘に設置されていた監視カメラには、スーツケースを持った第一発見者である藍沢という古生物学者と、オーパーツ鑑定士・古城深夜の姿が映っていたのですが、死亡推定時刻から推測して古城に殺人の疑いがかかり、水月が間違って逮捕されて・・という筋立てですね。
人違であることがわかって釈放された水月は、前話で知り合った、古城深夜の姉で、警視庁の警部かつ恐竜フリークである古城まひると真犯人の捜査を始めるのですが、このシリーズには珍しく、まひると犯人とのアクション・シーンが展開されます。

最終話「ストーンヘンジの双子」=ストーンヘンジ

最終話の「ストーンヘンジの双子」は、巨大な石が集められた「巨石庭園」で、その所有者である双子の兄弟が殺され、さらに屋敷が放火されるという事件です。事件がおきたときには、3組の双子と双子と偽って巨石鑑賞にきていた古城と水月が屋敷に泊まっていて、彼らが殺人の容疑者として取り調べを受けるのですが・・という筋立てです。
事件が起きた時、庭園の巨石もドミノ倒しのように全て倒されていたのですが、これが殺人のトリックの一つになっています。

そして、エピローグのところで、この「オーパーツ連続殺人」の陰で糸を引いているらしいものの存在が示唆されていくのですが、詳細は原書のほうでどうぞ。

オーパーツ 死を招く至宝 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)
第16回(2018年度)『このミステリーがすごい! 』大賞・大賞受賞作、待望の文庫化! 「シンプルで美しく、しかも本格愛にあふれた物理トリックがすばらしい」――大森望(翻訳家・書評家) 貧乏学生・鳳水月の前に現れた、顔も骨格も分身かのような...

レビュアーの一言

今巻で元ネタとされているオーパーツは「水晶髑髏」「黄金のスペースシャトル」「恐竜土偶」「ストーンヘンジ」なのですが、オーパーツとされているものはこれ以外にも「バクダッド電池」、「褐炭の頭蓋骨」や「バールベックの巨石」「更新世のスプリング」「始皇帝陵のクロームメッキの剣」「ピーリー・レイースの世界地図」などかなりの数がノミネートされています。なかには偽作であったり、当時の技術でも制作可能であることがわかったり、精密な分析をしてみると物質組成の判定が間違っていたり、とかなりガセも入り込んでいるようですね。
ただ、あやしげな古代ロマンをかきたてる素材であることには間違いないので、この世界に踏み込んでみるのも悪くないと思います。

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