恋人の事故死や両親の不和は産まれるはずのなかった僕のせい?=米澤穂信「ボトルネック」

崖から誤って落ちて命を失ってしまった恋人を追悼するために東尋坊を訪れていた主人公が、何かに誘われるかのように、断崖から墜落して命を落としてしまう・・はずだったのですが、気が付くと、自分が住んでいた金沢市に帰っています。不思議に思いながら自宅に帰ってみると、そこには見知らぬ「姉」がいて・・というふりだしの異世界スリップ・ミステリが本書『米澤穂信「ボトルネック」(新潮文庫)』です。

あらすじと注目ポイント

構成は

序章 弔いの花
第一章 岐路の夜
第二章 希望の街
第三章 知らない影
第四章 緑の目
終章 昏い光

となっていて、主人公は「嵯峨野リョウ」という高校一年生の男の子です。彼の家庭環境は両親が互いにバレていながら浮気をしているというけっこう悲惨なもので、このシチュエーションは物語を通じて重要なネタなので覚えておいてくださいね。

物語は、二年前にバイク事故で脳死状態になっていた兄の通夜の日、中学時代の彼女で二年前に東尋坊で転落死した諏訪ノゾミの現場に追悼にやってきていたのですが、どこかから自分を呼ぶかすれ声をきいたのきっかけに崖から落ちてしまうところから始まります。通常ならこれで一巻の終わりとなるのですが、意識を取り戻すと、自宅のある金沢市の川沿いのサイクリングロードにあるベンチの上で目を覚まします。

怪我も何もなく、不可解な思いを抱えながら、自宅に帰ってみると、そこには見た事のない「姉・嵯峨野サキ」がいて、という流れです。実は、リョウには流産した姉がいて、もし無事に産まれていたら同じような年頃です。さらに、姉の家族では、リョウの場合には夫婦関係の破綻を引き起こした事件が、サキの発言によって、逆に夫婦の仲が持ち直した、という決定的な違いが産まれています。

そして、行く宛もないことから、初対面の姉・嵯峨野サキに面倒を見てもらうことになったリョウなのですか、サキから二年前に東尋坊で事故死したはずの諏訪ノゾミに出会います。
そのノゾミはリョウのいた世界のノゾミと違って、パリピーな女の子なのですが、その違和感に戸惑ううちに、その違いをつくった原因がどこなのかに気づきはじめます。

そして、ノゾミが東尋坊で事故死したリョウの世界と、死ななかったサキの世界の違いが生まれたのには、ノゾミに関係する人物の企みに気づいてそれを阻止する存在がいたかいないかの違いであることに気付きます。
ノゾミが事故死してしまう不幸な結果を招いたボトルネックになっていたのが誰なのかに気づいた時、が嫌っていた家族関係ができあがることになった遠因に気づくとともに、ノゾミが事故死してしまう原因となっていたのは誰かということに気づいてしまい・・という展開です。

少しネタバレしておくと、最後のところで、リョウのもといた世界へ「ノゾミ」の力で戻ってくることとなるのですが、それが祝福すべきことだったかどうか、は読者それぞれの判断に任されてしまっている、というところでしょうか。

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レビュアーの一言

アマゾンの紹介文には『「若さ」の影を描き切る、青春ミステリ』とあるのですが、イヤミスやダーク・ミステリとはいかないまでも、主人公の「リョウ」の青臭さが、誰しも思い当たるところがあって、青いところを持ちながらの、世の中と折り合いをつけている「サキ」との違いが際立って、自分の若い頃の青臭い失敗を思い出して、「キャッと叫んでろくろっ首」状態に陥る人もでてくるかもしれないかな、と思います。

青春ミステリには違いないのですが、苦味と酸味の強い「青春ミステリ」ですので、そこは気をつけて読んだほうがいいですよ。

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