日本昔ばなしを底ネタにした本格ミステリ再び=青柳碧人「むかしむかしあるところに、やっぱり死体がありました」

昔懐かしい「日本昔ばなし」を底ネタにして、本格ミステリとのコラボを目指して2019年4月に刊行されてベストセラーとなった「むかしむかしあるところに、死体がありました」の続編が本書『青柳碧人「むかしむかしあるところに、やっぱり死体がありました」(双葉社)』です。

今回の底ネタは「かぐや姫」「おむすびころころ」「わらしべ長者」「さるかに合戦」「ぶんぶく茶釜」の五つのお話が、いつものように毒味あふれるミステリに仕上がっていきます。

あらすじと注目ポイント

収録は

「竹取探偵物語」
「七回目のおむすびころりん」
「わらしべ多重殺人」
「真相・猿蟹合戦」
「猿六とぶんぶく交換犯罪」

の五篇。

まず第一話の「竹取探偵物語」はかぐや姫の物語なのですが、今話で「かぐや」を育てるのは竹取のおじいさんとおばあさんではなくて、堤重直と有坂泰比良という下級貴族。竹やぶで光る竹を切って、そこからかぐや姫が誕生し、美しく成長したところで、五人の求婚者がやってきて、かぐや姫が無理難題をいいつけるのは昔話と一緒なのですが、そのときに有坂泰比良が殺され、家が放火されて焼け落ちるという殺人事件が発生します。
泰比良を殺した犯人をつきとめるため、堤重直が捜査を始めるのですが、最終局面ででてくるのは昔話同様、やはり「かぐや姫」なのですが、この話では「探偵」として登場し・・という筋立てです。

第二話の「七回目のおむすびころりん」では、鼠の穴におむすびを落としたことがきっかけで宝の袋を手に入れた善人のおじいさんの真似をして、欲深の惣七じいさんがおむすびを鼠の穴に落として自分も穴に入り込むのですが、そこで、鼠の食料庫で殺されている鼠の犯人探しをすることになります。
しかし、惣七じいさんの目的は「宝の袋」を手に入れることなので、なんとか袋を手にいれて脱出しようとするのですが、その度に、時間が巻き戻って同じことを繰り返すことになり・・という展開です。

第三話の「わらしべ多重殺人」では、わらしべを持って旅に出た若者と次々の物品を交換した人々の裏事情が明かされるのですが、虻をくくった藁しべとみかんを交換した女房、みかんと白絹を交換した娘、馬と屋敷を交換した長者の三人がそれぞれに八衛門という飲んだくれで乱暴者を殺したと白状します。
一体、誰が本当の殺人者なのか、という謎解きなのですが、真犯人は意外にもこれ意外の、「わらしべ長者」の重要な登場人物で・・という展開です。

このほか、「猿蟹合戦」で蟹を騙した罪で成敗された猿の本当の正体とその敵討ちと話(「真相・猿蟹合戦」)や底なし沼の中の小島に潜伏していた猿蟹合戦で蟹を殺した真犯人を殺した犯人を暴く話(「猿六とぶんぶく交換犯罪」)が展開されていきます。

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レビュアーの一言

第一作の「むかしむかしあるところに、死体がありました」同様、日本昔ばなしの設定を使いながら、全く別のミステリが展開されていきます。
しかも、登場人物が、昔話にでてくる善良さからはかけ離れた性格の持ち主ばかりなのも前作と同様で、人の悪い「昔話」ミステリが楽しめます。

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