心不全の市民フィル指揮者が、命をかけて娘に遺すものは何?=「フラジャイル 病理医岸京一郎の所見」7・8

臨床にでることなく、生体検査や病理解剖などを通じて、病気の原因過程を診断する専門医が病理医。都会の大病院・壮望会第一総合病院の病理部診断科長・岸京一郎と女性見習い病理医・宮崎、病理部たった一人の敏腕臨床検査技師・森井を中心に、臨床をもたずに患者を治療する病理医たちが臨床医たちの誤診と傲慢、製薬会社の横暴や病院の採算のために医療を切り捨てるコンサルたちに立ち向かう活躍を描く医療コミック・シリーズ「フラジャイル 病理医岸京一郎の所見」の第7弾から第8弾。

前巻までで、希望者の少ない病理医を希望する若い女子医学生をつかまえて、これからの病理医の世界にも光明が見えてきたところなのですが、壮望会第一総合病院の経営改善のため、放射線科の外注を仕組んできた、病院コンサルタント・窪田のターゲットが、病理部へと向かってくるのが、このタームです。

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あらすじと注目ポイント

第7巻 リストラを企む病院コンサルの次のターゲットは「病理」

第7巻の収録は

第25話 岸先生、原因不明です!
第26話 岸先生、布施さん大活躍です!
第27話 岸先生、コンサルが暗躍してます!
第28話 岸先生、茅原さん大活躍です!

となっていて、前巻の最後で、3年前、壮望会第一総合病院に罹って心不全と診断されたのですが、その後抜本的な改善がなく、入退院を繰り返していた江原道宣という、市民フィルの指揮者をしている患者が、四度目の入院をしてきて、現在危険な状態に陥っています。コンサルの窪田は3年前の病理診断で岸が担当していたことをネタに、彼に江原の病気の原因と病名を究明するよう挑戦状をたたきつけてきています。仮にそれができなければ、無能な病理部ということで廃止・委託へと追い込もうという企みですね。

患者の担当医・冬木と議論するのですが、彼は保身を図ってか岸に協力しようとしません。そこで、高柴医師の退職のトラブルに絡んで辞職する予定の放射線科医の安達を使って、3年前のX線やCTの画像を再検証します。そこでわかったのは・・という展開です。病院内のちょっとした行き違いと押し付け合いが積み重なって、患者の病状を悪化させていった、という構図です。

そして、このまま手術をしなければ10日間もつかどうかの状況なのですが、患者は手術を受けようとしません。月末には自分が指揮していた市民フィルの演奏会があり、江原の娘が父親に代わってタクトを振ることになっていて、それを見てやらないといけないから、という理由なのですが、その思いは、うまく指揮ができなくて落ち込んでいる娘に、自ら「お手本」を見せる姿で明らかになっていきます。

一方、放射線科の次に「病理」にリストラのターゲットを定めたコンサルの窪田は、岸にその内容を伝え、開業することを勧めます。これに対する岸の答えは・・というところは原書のほうでお確かめを。

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第8巻 ヘタレ病理医・宮崎、レベルアップを果たす

第8巻の収録は

第29話 岸先生、笑美さん大活躍です!
第30話 後継者
第31話 岸先生、病欠です!
第32話 岸先生、対決です!

となっていて、冒頭の第29話では、コンサルの窪田の企画する壮望会改革プラン、具体的には放射線や病理など採算が厳しい分野の外注プランなのですが、これが理事会での承認を得ていくとともに、江原の娘・笑美が代理指揮者を務めている市民フィルの演奏会の本番が近づいてきます。

演奏会の本番は別の指揮者が依頼されたので、笑美がタクトを振るのは最後の通し練習のときだけになりそうなのですが、そこに岸や宮崎たちはカメラを持ち込んで笑美の姿を撮影します。

そして、通し練習が終わった後、笑美が発した言葉は・・という筋立てです。

ここから江原笑美が指揮者として大きく成長していくののと、コンサルの窪田も大きく変わり、物語は相当方向転換していきますので、しっかりと筋を追っていきましょうね。

前巻までで、冷血と思える窪田がコンサルを学んだアメリカの大学時代のエピソードがでてくるのですが、これがヒントになってきます。

後半部分では、今まで岸と森井の大きな傘の下にいて、なかなか独り立ちしなかった「宮崎」が、岸の滅多にない病気休暇というハプニングに遭遇して一挙に成長していきます。

乳がんの手術中に採取された病変組織を診断し、それに基づいて執刀医が手術方針を決定する、迅速かつ正確な病理診断が求められるもので、いつもほんわかしている宮崎医師の双肩にどっしりと責任がのしかかります。

その重圧に押しつぶされそうになり、岸の診断をカンニングしようとする宮崎に対して、岸の恩師・中熊教授のキツーい愛のムチが飛び交います。

第31話ではヘタレの病理医・宮崎がレベルアップする瞬間が見られますよ。

そして、レベルアップを果たしたはずの宮崎医師だったのですが、バレーボールの強豪大学の選手の大腿骨の疲労骨折と腎臓炎の診断結果に疑義を唱えるのですが、経験不足のためか、ベテランの腎臓内科の円城科長に相手にされません。その様子をみた岸も円城に診断の詳細を尋ねるのですが、病理医の診断を小馬鹿にした様子で、それにカチンときた岸は、知り合いの「五月蠅い」医師たちに声をかけます。

彼らはそれぞれが自分の診断をもってきて、円城に詰め寄り・・という展開です。ただ、この誤診の根本原因は、腎臓内科のほうではなく、別の診療科にあって・・という展開です。真犯人は最初のほうにこっそりと隠されているので要注意です。

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レビュアーの一言

第5巻の高柴医師の退職から始まる放射線科の外部委託や、第7・8巻の病理部の廃止の黒幕として動いてるのが、病院経営のコンサルタントとして院長のところへ入り込んでいる「窪田」という人物です。彼はアメリカの大学で企業経営学や経営戦略学を学び、おそらくはMBAをとったバリバリの営利追及を至上命題とする効率重視のコンサルタントだと思われます。

アメリカの政府系病院の設立形態は営利系と非営利系の二種類があって、「窪田」が信奉するアメリカの病院なので、おそらく営利系がほとんどと思われがちなのですが、実は政府系を除く2968病院のうち62%が非営利系の経営形態、つまり社会貢献や地域貢献を目的とするNPOと同じ経営形態をとっています。

ここらは、アメリカの病院の設立起源がお金持ちやキリスト教団体の寄付や救済事業から始まったということも関係しているようなのですが、それよりも非営利であれば州の法人税や土地税、消費税が無税になるという税制が大きく関わっているようですね。非営利とはいっても、年間4000億円の売り上げを誇る非営利病院グループもあるので、「非営利」という語感に惑わされてはいけないかもしれません。

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