守備隊本部玉砕。田丸はアメリカ軍の掃討から生き残れるか?=武田一義「ペリリュー」5〜7

大東亜戦争中の1994年9月15日から11月27日のおよそ2ヶ月間に渡って、現在のパラオ共和国のに属するペリリュー島で、日本軍守備隊一万の兵士とアメリカ軍上陸部隊四万の兵士との間で繰り広げられた、太平洋戦争屈指の戦闘といわれた「硫黄島の戦い」へと続いていく南洋諸島戦線での代表的な戦闘を、日本軍に従軍していた作者の祖父からの聞き語りをもとに描かれる『武田一義「ペリリュー 楽園のゲルニカ」(白泉社)』シリーズの第5弾から第7弾。

前巻まででアメリカ軍の漢方射撃と上陸軍による殲滅戦で、ペリリュー守備隊の地区本部は玉砕し、残った守備兵たちはちりぢりバラバラになったのですが、本シリーズの主役である田丸、吉敷はニーナ+ケヴィンの洞窟で再会した小杉伍長とジャングルの中に潜伏していたのですが、あることから日本軍残兵たちと合流することとなります。

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あらすじと注目ポイント

第5巻 田丸たちは残留集団に加わり、米軍の糧食を盗み出す

第5巻の構成は

第32話 伝令
第33話 再起の第一歩
第34話 糧秣奪取作戦
第35話 隣り合う地獄
第36話 大山
第37話 指揮官
第38話 生存本能②
第39話 平穏な日々

となっていて、ペリリュー守備隊の地区本部が玉砕してからほぼ2ヶ月経過した昭和20年1月。田丸、吉敷と小杉伍長はジャングルの中に潜伏し、野草やトカゲ・蛇で食いついないでいます。そんな時に見つけたのが洞窟内に置かれていた数個の缶詰で、それが置かれていた地面には「米軍物資ヲ奪取スル方策アリ。次ノ新月ニ北浜ノツツジ陣地跡地ニ集マレ」と書かれていて、これを書いたのは日本軍の生き残りと信じ、田丸たちは約束の日に陣地跡に向かいます。そこにいたのは田丸たちの属していた第五中隊の島田少尉と泉二等兵です。

島田少尉は砲撃を逃れた後、ジャングルに潜伏してアメリカ軍の様子を探っていて、田丸や他の生き残りの日本兵たちに、警戒が手薄なアメリカ軍の西浜の物資集積所から食料を盗み出し、生き延びて反撃の機会を待とうと訴えます。

この盗み出した食料によって残留日本兵たちは餓死から免れることになるのですが、その結果、日本兵同士の意見に対立からくる勢力争いと生贄探しが起きてきます。死地を脱すると人間はいつもこういうことを始めてしまうんですね。

ちなみに、前巻で洞窟をセメントで埋められた片倉兵長たちの部隊は,田丸たちに入り口が見つけられ、救出されたのですが、閉じ込められていた2ヶ月間、何で食いつないでいたか、は原書のほうでお確かめを。

第6巻 アメリカ軍の掃討作戦によって残留日本軍部隊崩壊。

第6巻の構成は

第40話 水戸・ペリリュー
第41話 衝動
第42話 ネズミ退治
第43話 自裁
第44話 追われる者たち
第45話 僕は
第46話 戦利品②
第47話 長い1日・日暮れ

となっていて、第5巻で洞窟から救出された片倉兵長たちが生き延びられた理由が発端で、あくまで徹底抗戦と唱える島田少尉と成り行きでリーダーを続けている竹野内中尉との意見の乖離が大きくなっています。

そして、定例のアメリカ軍基地からの糧食の盗み出しにでかけた竹野内中尉たちの部隊は、警戒していたアメリカ軍に捕まってしまい、ということで、彼らから残留日本軍の潜伏している洞窟の情報を手にいれたアメリカ軍によって、しらみつぶしの掃討戦が行われていきます。

大量の兵員と豊富な武器をもつアメリカ軍の前に、残留日本兵たちは次々と斃れていき・・という展開です。

第7巻 アメリカ軍の掃討作戦をくぐり抜け、潜伏活動は続く

第7巻の構成は

第48話 長い1日・侵入
第49話 長い1日・探索
第50話 長い1日・夜明け
第51話 新しい日々
第52話 離合集散
第53話 楽しむ心
第54話 来たるべき日
第55話 その日を待ちながら

となっていて、アメリカ軍の掃討戦を逃れた田丸、吉敷たちは小杉伍長の情報をもとにアメリカ軍物資の集積地へ再潜入を試みます。掃討戦の大成功で油断しているアメリカ軍の隙をついて、物資を大量に盗み出してこようという作戦ですね。

この作戦は見事に成功し、物資を持ち帰った田丸は島田少尉の本隊と合流し、反撃に備えて再び潜伏生活に入ることになります。
ここで、部隊を離れた小杉伍長のマングローブ林の中の隠れ家や、沖縄出身の軍属の人たちを部隊に迎え入れるなど、残留日本軍の構成も変化してきているのですが、詳しくは原書のほうで。

そして、この再潜入のときに、アメリカ軍の就寝前の自由時間に、身を隠さずアメリカ兵を装うことで簡単にアメリカ軍基地に入れたことから、これを真似してだんだん大胆に入り込んでいき、果てはアメリカ映画までアメリカ兵に混じって観るような状態にまでなっています。

このあたり、田丸たちは自分たちの作戦がうまくいっていると考えているようですが、実は、この頃、沖縄戦や広島・長崎の原爆投下を経て、日本が無条件降伏していて、アメリカ軍にはすでに戦争が終わった感があったことが影響しているように思います。

レビュアーの一言

今回では、「ペリリューの戦い」で悲劇的と思われる二番目のことが色濃く出ていて、それはペリリュー島守備隊の本部が玉砕した後も、末端の部隊は情報がほとんと途絶したままでアメリカ軍への反撃を狙って潜伏行動が続いてしまった、ということ。

物語では「島田少尉」の強力なーダーシップのもと、(根っからの風来坊である「小杉伍長」のような例外が別として)一致団結した状態が続いてしまったわけで、きちんとした情報が入っていればまた違う展開もあったのでは、と思わせます。
とはいっても、何度もアメリカ軍の基地内に潜入しているわけで、盲信の前には、情報が目の前にあっても、ないのと一緒なのかもしれません。

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