アイドル潜入捜査官が、芸能界の闇に隠れた薬物犯罪を暴く=柊悠羅「不動のセンター 元警察官・鈴代瀬凪」

警察学校では首席の成績で、将来は警視庁の女性幹部も夢ではないといわれるほど期待されていながら、あっさりと警察官を辞めて、アイドルグループに入り、センターを務めている「鈴代瀬凪」。

彼女はその抜群の記憶力でファンの顔をほとんど覚えていて、握手会では彼女の数百人のファンが並ぶ人気者なのですが、実は彼女はアイドルの「カバー」を使った裏の顔があって・・という異色のアイドル・ミステリーが本書『柊悠羅「不動のセンター 元警察官・鈴代瀬凪」(宝島社文庫)』です。

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あらすじと注目ポイント

構成は

序章
第一章 偶像
第二章 虚像
第三章 実像
第四章 幻像
終章

となっていて、まず物語は、新型コロナウィルスのワクチン接種が進み、行動制限が緩和され始めた頃、本編の主人公「鈴代瀬凪」の属する三人のアイドルグループ「My SeLection」の握手会が大坂で開かれている場面から始まります。

グループのメンバー「鈴代瀬凪」「渡邊玲」「竹田舞奈」のうち、「鈴代」の握手の列に並んでいた、こうしたアイドルグループのファンとしては似つかわしくないスーツ姿の男性が「凪は来た」と握手をしながら彼女に呟くところから始まります。これが、彼女が「裏の顔」を発動させていく合図になるので、覚えておきましょう。

で、物語の本筋は、握手会の終了後、その控えめな性格からアイドルとしての適性があるか悩んでいるらしいメンバーの一人「竹田舞奈」が、テレビ局のプロデューサーをしている「原田」という人物からもらったという、紺色の粒状のものが入っている「小瓶」を瀬凪たちに見せて「気分の落ち着きお香」だと言っているシーンにうつるのですが、まあ犯罪の臭いはプンプンする滑り出しですね。

ひょっとしたら覚醒剤ではと疑念を抱く、瀬凪に舞奈はその小瓶を預けて処理を一任するのですが、その後の移動の新幹線内で、黒のパーカーとマスクで顔を隠した大柄の男に、瀬凪が襲われたことから、ますますその疑いは強くなっていきますね。

そして、警視庁の薬物乱用防止のイベントで、高校時代の同級生が薬物中毒で自殺したことや、半年前に多数の芸能人が薬物使用で逮捕された「三月の時化事件」に誘われたがそこには行かなかったこと、ただ誘ってきた人物から「イザ」というキーワードのようなものを聞いたというっことを告白します。

その後、舞奈に謎の小瓶を渡したプロデューサーの原田に高級中華料理店に招待された「瀬凪」は、原田が仕事で遅くなっているのを待つ間に、店のスタッフに勧められたシェリー酒を呑んだところ、突然、激しい眠気におぞわれてしまいます。

翌朝、眼を覚ましたのは自分の部屋だったのですが、乱暴された形跡はありません。不思議に思う「瀬凪」が見つけたのは、リビングのテーブルの上に散乱している十を超える数の白い粉に入った小袋と注射器で・・という展開です。このあと、乗り込んできた麻薬取締を担当する警視庁の組対課の警察官によって「瀬凪」は覚醒剤取締法違反の容疑で逮捕されてしまい・・という展開です。

「あぁ、仲間のピンチを救おうと思ったアイドルが嵌められちゃったのね」と考えてしまうところなのですが、実はここで、「鈴代瀬凪」の裏の顔が判明します。彼女の尋問が行われる三田警察署の取調室に入ってきたのは警視庁の公安部の藤堂警部と山下刑事で、どうやらこの二人の名前はどちらも偽名のようです。

そして、藤堂を前にした瀬凪は立ち上がるや「鈴代瀬凪、予定通り機関しました」と敬礼します。彼女は、成績優秀さと才能をかわれて、警察学校卒業時に公安部に潜入捜査官としてスカウトされ、警察学校を卒業と同時に警察を辞めた風を装って「アイドル」となっていた、という設定です。さらに潜入捜査の一環で、芸能界内の覚せい剤犯罪と警察官との癒着の解明と、破壊勢力との関係をさぐるため、わざと原田の罠にかかった体を装って逮捕された、という筋立てです。

ここから、アイドル潜入捜査官・鈴代瀬凪のアイドルという立場を使っての、テレビ業界に巣食う悪徳プロデューサーの犯罪や、それを操る警察官とその黒幕を暴いていく活躍が展開されていくのですが、詳細は原署のほうで。

レビュアーの一言

警察ミステリーに登場する公安関係の潜入捜査官というと、大部分が目立たない風貌の、気配を消した人物であることが多いのですが、目立つことが使命みたいな「アイドル」を潜入捜査官の「カバー」にしてしまい、アイドル稼業のきらびやかさで、その正体を隠しまう、という作者のアイデアはあまり他にみないものですね。

さらに。この主人公がアイドルという仕事も好んでいるというあたりも好感度です。ただ、潜入のために、自分を逮捕させてしまような離れ業は、やり方を間違えるとまっさかさまに転落してしまうやり方で、秘密厳守を旨とする「公安」セクションとしては歓迎できないやり方でしょうね。

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