居眠り女官は後宮内の「無理心中」事件の真相を暴く=小野はるか「後宮の検屍女官」2

架空の中華の国「大光帝国」の後宮を舞台に、かつては前途有望な官吏であったのが、冤罪によって宮刑を受けた中宮付きの美貌の宦官・孫延明が、もとは皇帝の寵姫の侍女だったのが、後宮内の事件解決に関わったため機織りの閑職へ左遷された、暇さえあればぐうたらと居眠りをしている、検屍となるととんでもない才能を発揮する女官・姫桃花とともに、後宮内でおきる怪異な事件の謎や冤罪を晴らしていく、中華後宮検屍ミステリー『小野はるか「後宮の検屍女官」(角川文庫)』シリーズの第2弾。

あらすじと注目ポイント

第2巻の構成は

第一章 掻き傷
第二章 玉堂
第三章 愛のため

となってて、前巻で後宮内の怪事件を、検屍術に長けた居眠り女官・姫桃花とともに解決した宦官・孫延明は、皇太子の推挙によって後宮の女官や宦官を取り締まる「掖廷令」の役についています。彼の前任で殺人の濡れ衣を着せられた「甘甘」は疑いは晴れたとはいえども責任をとらされて辞職させられているようです。

第一話では、彼が任務についた早々に、「金剛」という名の宦官や女官たちに秘密で高利の金を貸してボロ儲けをしている宦官が首をつって死んでいるが発見されます。最初は自殺ということで処理されそうになったのですが、首についていた指の爪で激しく引っ掻いた後があることがわかり、金剛から多額の借金をしている宦官が、首吊りに偽装して殺したのではと検挙されます。しかし、獄中で自分の無実を必死に訴えるその男の姿を見て、孫延明はこれが冤罪では、と桃花に検屍をさせるのですが・・という展開です。

第二話では、桃花が現在勤めている、後宮内の機織りを一手に引き受ける「織室」所属の宦官・小海の義兄弟の「大海」が行方不明になります。実は、この大海には、側室の一人である馮充依の愛人となっていて、彼女と一緒に駆け落ちしたのでは、という噂が飛び交うのですが、「玉堂」と呼ばれている後宮内で皇帝がきまぐれに側室をつれこむ建物の中で心中しているのが発見されます。
その様子は、大海の胸に深々と刃物がつきたてられ、馮充依は首に縄をかけた状態で、心中時に建物が放火され炭化した姿です。おそらく、、大海に執着していた馮充依が彼を刺殺し、その後、首を吊ったと推測されたのですが、念のために延明によって検屍をさせられた桃花がみつけた真相はまったく違うもので・・という展開です。
浮気性で、あちこちの宦官に手をつけていた側室が招いた、殺人事件ですね。

第三の事件では、第二の事件で心中事件を偽装した「小海」が後宮の下水処理用の池で自殺するのですが、これが他殺ではという疑いを抱いた延明が桃花に検屍を依頼します。そして、ここから、第二の事件の大海と馮充依の死亡事件の本当の犯人が明らかになっていくのですが、それは以外にも、桃花の身近にいる人物で・・という展開です。
後宮内の妃嬪・女官と宦官の恋物語が歪むとこんな結末になっていくのだねーという感じです。

後宮の検屍女官2 (角川文庫)
後宮を揺るがした死王の事件からひと月半。解決に一役買った美貌の宦官・延明(&...

レビュアーの一言

今回の桃花の検屍では、首吊りにみせかけて相手を絞め殺す手法の検証や、米酢をつかったルミノール反応の検出、溺死にみせかけた殺人のトリックなど、「外傷系」の検屍術が披瀝されています。彼女によれば、宮廷の有力者の犯した犯罪を「なかった」ことにするため、失われた宮廷内の秘術のいくつからしいのですが。権力が自らの犯罪を隠すためにあの手この手をつかってくるのは、どこもおなじようですね。

ちなみに、他の「後宮の検屍女官」シリーズはこちら。

シリーズ第1作。まだ皇帝の寵姫・梅婕妤の局に囲い込まれていた姫桃花が、孫延明と出会い、検屍術と推理の才能を見いだされていく始動篇です。

シリーズ第3作では、かつての主人・梅婕妤の周辺でおきる死亡事故の謎を解いていきます。その陰で梅婕妤と皇后・皇太子との権力闘争が激化していきます。

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