時代小説・歴史小説

坂井希久子

お妙のストーカー事件の鍵は夫の過去にあり? ー 坂井希久子「居酒屋ぜんや つるつる鮎そうめん」

「お妙」を付け狙う一味が逮捕され、狙った理由は不明ながらも、平穏な日々が訪れていたのだが、この巻に至って、黒雲が漂い始める。まだ、雨にはならないまでも、なにやら豪雨の前触れのような感じを漂わせるのが、居酒屋ぜんやシリーズの5巻目『坂井希久子...
宮部みゆき

百物語の聞き手・おちかが「黒白の間」を離れる時 ー 宮部みゆき「三島屋変調百物語 五之続 あやかし草紙」(角川書店)

江戸神田、筋違御門先の袋物問屋・三島屋の主人の姪・おちかが、店の「黒白の間」で、訪問客の経験した「怪しい」物語を聞く風変わりな「百物語」の第五作が本書『宮部みゆき「三島屋変調百物語 五之続 あやかし草紙」(角川書店)』。 【収録】 収録は ...
上田秀人

琴姫、愛する夫の救出に乗り出す ー 百万石の留守居役(十一) 騒動

隣藩の松平福井藩に使者として赴いたものの、加賀前田家の取り潰しを踏み台に豊穣な地への国替えを狙う福井藩の本多大全と、そろそろ精神状態がおかしくなってきた松平綱昌によってあやうく殺害されかけた、瀬能一馬たちの救出劇が本書『上田秀人「百万石の留...
上田秀人

一馬、福井藩へ使者として赴き、大騒動を起こす ー 上田秀人「百万石の留守居役(十) 忖度」(講談社文庫)

加賀前田家の取り潰しを画策していた堀田老中と手打ちをして、ひとまずは安心して、お国入りをする前田綱紀が分家の富山藩の家老に襲われたり、加賀藩江戸屋敷が、江戸の闇に潜む「武田党」から狙われたり、と相変わらずの、敵だらけの加賀前田家で、新婚ほや...
坂井希久子

「ぜんや」に落ち着きが戻り、美味い料理も健在 ー 坂井希久子「居酒屋ぜんや さくさくかるめいら」

前作の「ころころ手鞠すし」で、居酒屋ぜんやの切り盛りする美人女将の「お妙」さんを付け狙っていた、犯人が捕まり、一安心といったところの「居酒屋ぜんや」の”いつも”が描かれるのが本書『坂井希久子「居酒屋ぜんや さくさくかるめいら」(時代小説文庫...
時代小説・歴史小説

京都の老舗の跡取り娘の「呪詛」は解けるか?ー三好昌子「縁見屋の娘〜京の縁結び」

京都の堀川通りを南に下り、東西を貫く四条通りとの角地にある、口入業を営む「縁見屋」は、代々、男の子は生まれず、しかも娘は26歳になると突然死する「祟りつき」の家、そんな家の跡継ぎの一人娘・お輪を主人公にするのが、本書『三好昌子「縁見屋の娘〜...
時代小説・歴史小説

戦で「風流」を尽くす「婆娑羅な男」の一代記ー大塚卓嗣「天を裂く」

戦国時代は、人の「総カタログ」でもあって、天下の覇者から、悲運の武将、裏切り者、日和見者などなど、小説や話の宝庫なのであるが、そんな中でも、その人物の人生をトレースしてワクワクするのは、本書『大塚卓嗣「天を裂く 水野勝成放浪記」(Gakke...
ミステリー

「日常」には”忘れたい過去”が隠れているー西條奈加「いつもが消えた日」

神楽坂に住む、祖母と一緒に住む中学3年生の滝本望が、ワトソン役になって、祖母である「お蔦さん」とともに事件を解決するシリーズの第2弾が、本書の『西條奈加「いつもが消えた日」(創元推理文庫)』。 【構成は】 第1章 いつもが消えた日 第2章 ...
山本巧次

黎明期の鉄道敷設妨害事件の謎解きに、腕利きの「元八丁堀同心」が挑む — 山本巧次「開化鐵道(てつどう)探偵」(東京創元社)

現在の東京と江戸との間を行き来して、現在の分析技術を利用して、江戸の事件の謎を解くという「八丁堀のおゆう」シリーズで、元OLで、八丁堀の配下という「おゆう」さんの活躍を描いた筆者なのだが、今回は、明治時代を舞台に、八丁堀の元同心にして、創設...
蓑輪諒

軍師は身なりで判断してはいけない。とんでもない知恵者かもしれないから。 — 蓑輪 諒 「最低の軍師」(祥伝社文庫)

当方のように西日本、しかも山陰に住まう者にとっては、戦国時代の東北・関東といったところはかなり霧の中に包まれていて、どこに何があるのかまったく不案内なところがある。しかも、昔の上総、下総のあたりとなると闇の中に近い。そんな当方に、その地でお...