「閉じること」は「開くこと」につながる — 残間里江子「閉じる幸せ」(岩波新書)

アナウンサー、編集者を経て、各種のプロデュースで活躍の残間里江子氏による、人生の黄昏期を迎えつつある人に向けた、生き方の本。
スタンスは、本書の冒頭で
  
ある日「そろそろ閉じてみよう」と思いました。
閉じると言ったって、人生を閉じようというわけではありません。
「今の自分」を終わりにしたいと思ったのです。
  
というところから、「隠者」志向で、その意味で、最近の五木寛之氏の著作に通じる感じを受けるのだが、一方で「枯れない」ことを進める人生指南でもあるな、と当方的には読んだ
  
構成は
  
序章 そろそろ閉じてみよう
第1章 閉じるは、いろいろ
第2章 閉じるは、わが身の棚卸し
第3章 閉じるは、生き直し
  
となっていて、最初の第1章は、一世を風靡したり、その道を究めた筆者の知り合い、例えば、東大教授から旅人に転じた月尾嘉男氏や山口百恵さん、メリー喜多川さんなどのそれぞれの「閉じ方」が紹介されているのだが、当方的に、一番おもしろいのは、メリー喜多川さんのところで、「仕事がなくなったらそれ相応にして、増えたらまた大きくすればいいじゃないの」というあたりに「閉じない人」の意気を感じますね。
  
で、本書を読むに、ふたいろの読み方があるな、と思うのが
  
「今、いるところ」や「今、会っている人」を大切にして、ゆっくりゆったり味わうべき時がきているように思います
  
  
「いつか」「いつの日か」はもうやめ。
そう心に決めて、私のところに縁あって集まってくれた物たちを、私がカッコよく閉じるための小道具にすべく、使いこんでいこうと思っています。
  
といったあたりを強調して読み込むか、
  
人生も同じです。長く生きていると、知らず知らずのうちに「古い品」や「不良品」を溜めこんでしまうことになります。
  
そこで私からの提案です。「わが身の棚卸し」をしてみてはどうでしょう?
我が身の棚卸しは、”人生の店閉まい”とは違います。・・・柔らかく考え、軽やかに動くために、今の自分にとっての「要る・要らない」を峻別するのです。
  
というあたりを読み込むか、なのだが、当方的には、後者を強調して読むべきと思っていて、本書は「消極的な閉じ方」では前へ進むために「今までを、どううまく閉じるか」という視点からの人生指南書ととらえている。
 
そして、様々な「閉じる」行為は、よりよく
  
やる気は、やり始めなくては出てきません。「とても無理だろう」と思うことに直面しても、絶対孤独時間の仲で自分と静かに向き合うと、おのずと気持ちが動き出し、身体が前に進むようになる
  
ことへの、準備行動として考えておくべきではないだろうか。
「人生100年時代」の幕開けの今、「40歳、50歳は”はな垂れ小僧”、60歳もまだまだケツが青い」ぐらいの気持ちでいた方がよいんでしょうね。
 

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