あなたは東京オリンピック以後の激変に備えているか? ー 岸 博幸「オリンピック恐慌」(幻冬舎新書)

経済産業省出身で、小泉内閣当時、竹中大臣の側近の秘書官として、構造改革の立案に携わり、今は、国や地方の政策立案のアドバイスやTVのコメンテーターなどで活躍している筆者による本なのだが、表題から連想されるような「経済動向の予測本」ではないので要注意。
そうした経済予測も示しながら、景気動向に左右されないキャリア形成の方法論とか。資産運用方法などについてまとめられている。

【構成は】

第1章 日本経済の再生に残された時間はあと2年
 第1節 経済成長率を高めなくては生活は楽にならない
 第2節 あと2年が潜在成長率を高める最後のチャンス
 第3節 日本はなかなか改革が進まない国
 第4節 幾つかの補足説明
第2章 日本経済の低迷の原因は政策だけではない
 第1節 民間と地方の側の責任
 第2節 イノベーションの重要性
 第3節 日本の強みと弱み
第3章 年金はもらえるもか、社会保障は大丈夫なのか
 第1節 持続性に疑問符がつく今の社会保障制度
 第2節 財政再建の厳しい現実
 第3節 社会保障制度のばっっpん改革が進みにくい日本の現実
第4章 稼ぐ力を身につけよう
 第1節 収入を増やすにはスキルアップが不可欠
 第2節 日本は欧米と競べて好きリアップしにくい国
 第3節 終身雇用は崩壊するし、正社員は安心という時代は終わった
 第4節 人生90年時代になったからこそ考えるべきこと
 第5節 自分の生涯のキャリアプランは自分で作る
 第6節 第4次産業革命の時代に必要なスキルは何か
第5章 資産運用の力を身につけよう
 第1節 資産運用なくして将来の安心なし
 第2節 資産運用で初心者が意識すべき三つのポイント
第6章 スマホの使い過ぎは人間の能力を低下させる
 第1節 集中力の低下
 第2節 深く考える力の低下
 第3節 どうやって集中力の低下、深く考える力の低下を防ぐか
 第4節 スマホのネットの使い過ぎが惹起する三つの問題点
 第5節 子どもの教育でも要注意

となっていて、第1章から第3章までは、東京オリンピックの開催される
2020年前後をターゲットとした経済予測。そして第4章・第5章が、経済の大変化に負けない人生の防衛策、といった構成となっている。
第6章は、当方的には、オマケ的な位置づけかな。

 

【注目ポイント】

岸博幸氏の本の特徴は、筆者の優しいながらも冷静な現状分析に、ちょっと意外な位置からのコメントといったところなのだが、本書の中では、日本における「イノベーション」のところでの

日本的エリートはイノベーションの創出には向かない(P90)

特に大企業に多いのですが、経営陣が出世競争の成れの果でサラリーマン役員になった日本的エリートばかりの企業では、経営陣が積極的にイノベーションを創出するどころか、ルンバの例でも分かるように経営陣がイノベーションを潰すことも多いのです(P101)

といったことで、いわゆる支配層の「イノベーション」適性といったものに悲観的な目を向けながらも

日本の強みはエリートではなく現場の力だというのは、戦後や高度成長期といった最近時点で始まったのではなく、証拠がある限り少なくとも忠誠の頃から続いている日本の伝統(P95)

あるいは

私は個人的に、日本の現場の力の強さは、特にオタクの要素かヤンキーの要素を持っている人ほど発揮できると思っています。(P96)

といったところが筆者らしい、ユニークな視点でありますね。

このほか、東京オリンピック以降、経済環境が激変する可能性が高かったり、AIによって働く場が激変するであろう中で、我々の個人の立場での自衛策として、個人が独自のスキルアップ策を考えるべきだ、というのは他の類書でも言われていることだが、その際の働く個人がスキルアップに取り組む場合の五つの留意点として

①日本はスキルアップしにくい国という認識を持つ
②終身雇用の仕組みは崩壊しつつあるし、正社員になれば安心という時代は終わったという認識を持つ
③日本は”人生90年時代”という難しい時代に突入したという意識を持つ
④自分の生涯のキャリアプランを自分で作り、それに基づいて戦略的にスキルアップに取り組む
⑤第4産業革命とグローバル化の時代に必要なスキルは何かを考える

といった現実的な視点はかなり有益なアドバイスである。さらには、「第4次産業革命のしわ寄せをうけなくて済むよう、働く人の側が自発的にAIロボットの時代になっても必要となるスキルを身につける、つまりスキルアップをすべき」としているのだがが、その時のキーワードとして

①クリエイティビティ
②ホスピタリティ
③マネージメント
④生涯学習

が列挙されているのだが、例えば、働く人がクリエイティビティを強化する方法として

①経営学のイノベーション理論、例えば「両利きの経営」の応用
 自分のビジネス領域に関する知識を継続的に深める(知の深化)と同時に獲得する知識の範囲を自分のビジネス領域の外に意識して広げる(知の探索)ことが必要。その療法をバランスよく進める

②子どもの教育に関する議論の応用
 「なぜ?」と呪文のように繰り返す

といったことが提案されているのだが、こあたりは、それぞれが自分なりのキャリアプランを考えるに、おさえておいたほうがいいフレーズでありますね。

【レビュアーから一言】

なんとなく「ぬるま湯」のような経済状況が続いてはいるのだが、東京おオリンピックが、良い方向にふれるか悪い方向にふれるかは別にして、大きな景気の分かれ目になるかも、というには多くの人が感じていることだろう。
ただ、いずれにしても、AIを始めとしたデジタルによる変化は否応無しに起こってくるし、我々個人がそれぞれ自衛しておく必要性は増加するばかりで、本書もその道標の一つとしてはいかがでありましょうか。

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