「イヌ型」「ネコ型」、あなたはどちらのタイプ? ー 太田肇「「ネコ型」人間の時代」(平凡社新書)

人間の類型を動物に例えるのは、「人間関係に必要な知恵はすべて類人猿に学んだ」のチンパンジー・ゴリラ・オランウータン・ボノボの4類型で分析する「類人猿分類」など数々あるし、「自分を動物に例えると何?」というのは、就職面接などではすでに使い古された質問例なのだが、一般に馴染みが深いのは、本書でとりあげる「イヌ型」「ネコ型」の分類であろう。

そういう「イヌ型」「ネコ型」の性格類型を使いながら、閉塞感が依然払拭できず、なんとなく不自由感がただよう日本社会において、機嫌よく「生きていく」道筋を提案しようとしているのが本書『「ネコ型」人間の時代」(平凡社新書)』である

【構成と注目ポイント】

第1章 人を「イヌ扱い」してきた学校・会社の罪
第2章 「ネコ転」で別人に変わる
第3章 いよいよ「ネコ型」人間の時代に
第4章 人をみたら「ネコ」だと思え
第5章 京都に学ぶ「ネコ型」社会のつくりかた
となっていて、基本は「イヌ型」と「ネコ型」の人間類型の比較と、そのどちらが今の時代に求められているのか、というところが中心となる。

類型の比較のあたりは、

イヌは集団に対して、一元的に帰属し主に忠実にふるまうのに対して、ネコは複数の集団に多元的に帰属し、そもそも「主」という存在さえ認めない(P136)

といった感じで、大方の予測と同じであろう。

 

ただ、本書で、ユニークなのは

「イヌ」型人事管理の5点セット(P49〜)を

 

・大部屋主義
・ホウレンソウ
・減点主義
・情意考課
・会社主導の異動・転勤

として、新人向けのビジネス書や社内研修では、口を酸っぱくして言われる「ホウレンソウ」を「イヌ型」の典型的なものとしてとりあげ、本書では、あまり褒めていないこと。

たしかに、外国の方、特に欧米や中国のように「個人主義的」なビジネススタイルが主流のところでは、日本の「ホウレンソウ」は奇異なものに見られる、といった話を聞いたことがあるので、このあたりは、「イヌ型」の傾向の強い「日本社会」に特有のビジネススタイルといっていいのかもしれないですね。

そして、では、どちらがオススメとなる、これは標題である程度わかるように

組織の盛衰は、環境にどれだけ適応できるかにかかっている。どのような組織も環境に適応しないと生き残れない。その環境は業種によって異なるし、時代によっても違う。
一般に、変化が少ない安定した環境のもとでは権限がトップに集中し、命令ー服従の関係で動く機械的な組織が有効である。逆に変化が激しく不安定な環境のもとでは、権限が分散し、水平方向のコミュニケーションで動く有機的な組織が有効とされている。
今日のように、業種を問わず企業を取り巻く環境の変化が激しく、不安定になると、上下関係が幻覚で命令ー服従の関係で動くピラミッド方の組織はますます非効率になってくる。現場から離れたトップが常に、現場の状況を把握できているとは限らないし、現場から情報が届くのを待って判断を下していたらとても間に合わない(P129)

として、「ネコ型」のオススメが語られている。

ただ、第5章のところで、「京都」のスタイルが「ネコ型」に見えるのは、権力が次第に他所へ移ってしまったことによってもたらされたもので、けして「京都人」が「ネコ型」を志向した風土づくりを行った、というわけではないように思うのだが、ここらは京都人の判断を待ちたいところである。

【レビュアーから一言】

本書では、「ネコ型」への転換がかなり強めにオススメされるのだが、当方的に思うのは、中野信子氏のいくつかの著作で書かれているように、セロトニントランスサポーターの遺伝形質とか、日本人の脳科学的傾向は、組織への同調圧力の強さ、とか「イヌ型」の度合いが強いように思われ、なかなか「ネコ型」への転換は、精神論や思想論ではうまくいかない気がいたしますね。

そして、組織運営の全体を考えると、全ての人が「ネコ型」になってしまった状態ってのも、ちょっと怖い側面もあって、当方としては、放っておくと「イヌ型」になってしまう日本人の多くに、「ネコ型」のエッセンスを少し注入しませんか、の提案の書、といった感じで読むのがよいかと思います。

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