85歳まで「現役」を目指すビジネス人生の設計ノウハウ ー 大杉 潤「定年後不安 人生100年時代の生き方」(角川新書)

表題だけみると、定年を控えての様々な「不安」についての処方箋を提示しましょう、というイメージなのだが、実は、60歳の定年の時期に限定せず、人生100年時代を見据えて、「トリプル・サイクル」のビジネス人生の設計を考えてみよう、というのが本書の主意。
 

【構成は】

 
はじめに〜人生100年時代で深刻化する「定年後の3大不安」〜
第1章 人生100年時代の「トリプル・キャリア」とは
 〜3毛作の人生を目指すキャリアプラン
第2章 100年人生の「時間術」
 〜人生を俯瞰して「人生設計図」を作る
第3章 100年人生の「コミュニケーション術」
 〜「孤独」とは無縁の仲間づくりの秘訣
第4章 100年人生の「情報リテラシー」
 〜インプットとアウトプットのバランスが大切
第5章 100年人生の「健康法」
 〜情報過剰の時代にいかに性格な情報を取るか
おわりに〜不安なき「生涯現役」という生き方〜
 
となっていて、本書によれば、45歳、55歳、65歳、75歳のそれぞれの時期に、ビジネス生活の節目があるとのことで、それぞれの時期に応じた時間管理や情報管理、人脈などについてのアドバイスが語られている。
もっとも、「定年後」という表題らしく、記述の中心は55歳、65歳の転機が中心であるので、60歳定年近辺の方々向けであることは間違いない。
 
 
 

【注目ポイント】

 
筆者が本書で推奨する「トリプル・キャリア」とは
 
60歳の定年退職時と75歳前後の計2回、「働き方」をチェンジして、全部で3つのキャリアを計画的・戦略的に作っていくという方法を、私は「トリプル・キャリア」と呼んでいます。3毛作の人生を目指すのです。(P35)
 
ということで、基本的には「85歳まで現役(筆者は生涯現役を目指しているようであるが)」のビジネス人生を目指すもので、そのため、「定年再雇用」は最もリスクが高い選択肢で、一番リスクの少ないのは、自宅を事務所にするスモールビジネスとしての「定年起業」、といったあたりは、よくある「ライフプランのすすめ」とは違った色合いを帯びている。
 
また、85歳まで現役を目指すために、「45歳、55歳、65歳、75歳と、各年齢の大台半ばに10年毎に転機や「壁」がなってくると想定して「人生設計図」を準備しましょう」ということから、それぞれの時期での細かな提案がされていて、例えば、45歳のときには
 
「45歳転換期」に会社第一だった時間の使い方を、ずっと先の人生まで展望して、専門性を磨く方向へ切り替えるには、「モデルとなる人の真似をしてみる」のがよい方法です。
人間はすべて全く同じ状況に置かれているっわkではないため、モデルとして真似る人は、できれば複数の人を見つけ、それぞれの人の生き方について、「いいとこ取り」をするように真似るのが有効です(P80)
 
もう一つ、「45歳からの時間術」で大切なことがあります。それは、自分が好きなこと、得意なことに関連した「専門」を絞り込んで磨いていくことです(P80)
 
であったり、55歳では
 
「55歳の役職定年」では、会社の中での目標をスパッと切り替える潔さが大切です
 
といったふうに、一組織の中での出世だけに拘らない処世のすべが語られている。
 
さらには、今の定年再雇用制度の中では、年金受給と同時のリタイアが想定されているに対し、本書では
 
65歳以降も働き続けるために大切なことは
①「人の役に立つ専門性」を磨き上げ、長く続けられる好きなことをする
②変化する社会のニーズに対応できるよう学び続ける
③健康・体力を維持するための生活習慣を確立する
(P92)
 
 
75歳以降も長く働くための「無理をしない働き方」(P107)
①働く「時間」を制限する
②働く「場所」を制限する
③受け取る「報酬」(=収入)も制限するが、ゼロにはしない
 
といったように、まだまだ現役で居続けるためのアドバイスがされていて、定年間際の層にとっては結構元気づけられるのは間違いない。
 

【レビュアーから一言】

 
このほかにも『定年後に大切になってくる「コミュニケーション術」』や『定年後にインプットを継続しながら、「長く働いていく」ために40〜50歳代で行う情報のインプット』、『情報のインプットを継続的に行い、それを使える記憶として定着させる方法』などなど、年齢をとってからも活発にインプットする方法をはじめとして、年配者の「知的生活」のノウハウもたくさん掲載されている。
 
定年後の再就職をどうするか、といった観点ではなく、定年後に収入をきちんと確保しながら、現役生活をいかに長く続けるか、のアドバイス本として読んでみてはいかがであろうか。
 

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