「コミュニケーション」は「言葉」に頼ると失敗するかも — 竹内一郎「人は見た目が9割」(新潮新書)

「見た目が・・」という表題から、イケメン、美女礼賛の本ととらえててはいけない。言葉によらない「コミュニケーション」について、多方面から光をあてているのが本書である。
 
構成は
 
第1話 人は見た目で判断する
第2話 仕草の法則
第3話 女の嘘が見破れない理由
第4話 マンガの伝達力
第5話 日本人は無口なおしゃべり
第6話 色と匂いに出にけり
第7話 良い間、悪い間、抜けてる間
第8話 トイレの距離、恋愛の距離
第9話 舞台は人生だ
第10話 行儀作法もメッセージ
第11話 顔色をうかがおう
 
となっていて、「言葉によらない」と言ったのは、最初のほうで
 
アメリカの心理学者アルバート・マレービアン博士は人が他人から受け取る情報(感情や態度など)の割合について次のような実験結果を発表している
◯顔の表情 55%
◯声の質(高低)、大きさ、テンポ 38%
◯話す言葉の内容 7%
 
といったことに依拠している。
 
で、この実験が「アメリカ」で行われたものであるということは、「言葉」「弁論」がコミュニケーションの主体である印象の強い欧米ですら既往言う状態であれば、「目は口ほどにものをいい」に日本では、その度合は高まりそすれ、弱まることはないと言っていい。
 
そして、本書の引用によれば
 
芳賀 氏は「日本人の表現心理」(中公叢書)のなかで、日本人のコミュニケーションの特徴を「語らぬ」「わからせぬ」「いたわる」「ひかえる」「修める」「ささやかな」「流れる」「まかせる」の8つにまとめている(P91)
 
であるらしいので、日本人の生来のコミュニケーションは「非言語」によるのが中心といっていい。
ただ、その「非言語」のコミュニケーションも、「身振り手振り」といった欧米的なそれではなくて
 
「相手に、わからせ、自分を通す」のがヨーロッパ流、「お互いに、語らずに、察する」のが日本流(P93)
 
といったところが特殊で、面倒なところで、それは、「方程式的」「マニュアル的」なコミュニケーションの手法がない、といったことを意味しているように当方には思えた。
 
まあ、難しいことは考えないで、弁論術や交渉・説得のテクニックを学ぶ前に
 
大好きなお母さんや、それに準ずる親しい人が読む場合、技術がなくても、子供は喜んで聞くというのである。
(略)
子供は、自分の好きな人の読み方、間のとり方にあわせて感情移入していくのである。
つまるところ、「伝える技術」の最大の目的は、「好き、好かれる」の関係をつくることである(P137)
 
といったところを基本にしていくことが、コミュニケーションが円滑化するマスターキーなのかもしれんですね。
 

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