「売却」という視点から「ウェブサイト」を考える ー 福田拓哉「30歳の私が運営歴3年のアフィリエイトサイトを6億2000万円で売却するまで」

M&Aの対象となるのは、ほとんどの場合、「会社」「組織」が中心で、「ウェブ・サイト」はそのM&Aに従って移管することがほとんど、という当方も含め多くの人の常識を覆してくれるのが、本書『福田拓哉「30歳の私が運営歴3年のアフィリエイトサイトを6億2000万円で売却するまで」(幻冬社)』。ただ、本書は「サイトの売り方」についてだけでなく、「売れるサイトの作り方」という点での言及も多いので、多くのサイト運営者も読んでおいて損はない。

【構成は】

はじめに

第1章 キュレーションメディア、マッチングサイト・・。活況を呈するサイトM&A

第2章 9割のアフィリエイターが誤解。サイトの価値と運営の技術は無関係

第3章 運営歴の浅いサイトでも超高値で売却。ウェブサイトの「作り方・売り方」15のマル秘ノウハウ

第4章 短時間で高収入を実現。サイト売却は新たなビジネスを次々と創造できる可能性を秘めている

第5章 大きなビジネスを動かせるようになるためには影響力を持つこと。成功者に共通する行動規範とマインド

おわりに

となっていて、第1章から第2章が、「サイトを売る」ということについて、第3章が、「売れる」サイトの作り方、第4章から第5章が、サイト売却、ウェゔ・ビジネスを通じた著者のビジネス論、といった形になっている。

【注目ポイント】

◯まずは、「サイトの売買」ということ。

筆者は「資金調達プロ」という、経営者が会社の運営資金を調達する際のサポートを立ち上げ、人気サイトにし、さらにはそれを高額で売却する、という、アメリカのシリコンバレーのスタートアップさながらのことをやってのけた人物で、「サイト」ってのは売るものでもあったんだ、ということを教えてくれている。 で、筆者による、高価で売れるサイトの条件は

では、どういうサイトに価値があるのでしょうか。 PVが多いサイトでしょうか。検索結果の上位にあるサイトでしょうか。コンテンツの多いサイトでしょうか。 高く売れるサイトはこれら条件を満たしています。しかし年間1000万PVのサイトが年間100万PVのサイトよりも必ずしも高額で売れるとは限りません。 私が考える「超高値」で売れるサイトとは「オーナーに収益をもたらす、情報の信頼性が高い、潜在的ニーズを促す」サイトです。

であるとか、売れる「サイトづくり」としてアドバイスしている

私が「資金調達プロ」でやったことは、それほどの才能や能力を必要とすることではありません。ただし、「愚直」さだけを必要とします。つまり、普通の人が「愚直」にやり続ければできること、多くの人にチャンスがあるやり方まのです。 また、ユーザーの役に立つ情報を載せるということが根底にあります。きれいごとではなく、そうしないとサイトの価値が高まらないからです

といったところには、サイト売却に限定せず、若いスタートアップ経営者からの助言としてかんがえておくべきであろう。

◯「買ってもらえる」サイトの作り方

もちろん、「売れるサイト」になるためには、人気のある「優良サイト」であることが大前提であるので、そうしたサイトに育てる工夫やテクニックについても多くのページが割いてあるのが、本書の特徴で

例えば、サイトのテーマ設定での

実は私も、当初は検索エンジンアルゴリズムの変更には悩まされました。・・・また試行錯誤してSEO対策を打つ。こうした「いたちごっこ」で貴重な時間をSEO対策に使ってばかりです。 こうした悪循環から抜けるためには、小手先で稼ごうとしてはダメだと気づきました。 そうではなくて、「最低でも10年はなくならない価値をつくること」に注力すべきだと考えたのです。

とか

ニッチ(隙間)を狙いましょう。できるだけ大きなニッチを探すのです。その意味では、「資金調達」はかなりの大きなニッチでした。 ニッチでも、ニーズが少なかったり、単価が低かったりすると苦労します。お金という、潜在的に大きな欲求がある分野で、企業の資金調達という単価の大きなビジネスだったから「資金調達プロ」は高い価値が認められたのです。 サイスとしては、中規模メデイアを目指しましょう。それ以上になると、大企業の領域に踏み込むことになり、得策ではありません。

といったアドバイスは説得力があるし、

「第3章 運営歴の浅いサイトでも超高値で売却。ウェブサイトの「作り方・売り方」15のマル秘ノウハウ」のいくつかを紹介すると

10年以上の長期間にわたって収益を上げ続けるサイトにするために最も重要なことは、ポジショニングとブランディングです。 言い換えれば、他のサイトとは一線を画したサイトにするために注力するということです。 ここでいうポジショニングとは、あるカテゴリーで一番になろうということです。

という発想からでた「1000件の事業所データの掲載」であるとか

ユーザーが欲求し、実現したいことをコンテンツとして提供すればいいのです。そうすれば、自然と資料請求や個人情報登録、そして購入が行われます。 どういうコンテンツを提供するかは、何度も述べている5W2Hで考えればいいでしょう。ここでは、提供するコンテンツの大原則を教えましょう。 それは「ハウツーを公開する」ということです。 (略) ただ「情報を教える」のではなく、「手取り足取りやり方を教える」ことが必要なのです。

などなど、サイト売却を目指さなくても、サイト運営、サイト構築に向けてのかなり良質のアドバイスが豊富で、当方も、「ふむふむ」と頷いたり、自らのサイトを顧みて赤面したり、といったところでありました。

【まとめ】

表題だけみると、「サイト売却で大儲け」といった、「濡れ手で泡」的な、ちょっといかがわしいイメージを抱きがちなのだが、けしてそんなところはなく、「サイト運営」(売却も含めて)の真面目なアドバイス本である。もちろん、「サイトを作って、育て、売った」という、いわば、ベンチャー企業を立ち上げて売却した「経営者」という視点を中心に書かれたものなので、一般の「アフィリエイター」「ブロガー」のスタンスとはちょっと違ったところはあるが、多くの「サイト運営」の肝がすくい取れる一冊であります。

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