アミルに「嫁心」がつきました ー 森 薫「乙嫁語り 2」(エンターブレイン)

中央アジアの地方都市を舞台にカルルクとアミルの若夫婦を中心に、その地方に住む人々の暮らしと人間模様を描く「乙嫁語り」シリーズの第2巻。
ちなみに、「乙嫁」とは、本書の巻末のあとがきマンガによれば「古語で「若いお嫁さん」「美しいお嫁さん」」ということであるらしい。

【収録は】

第六話 パン焼き竈
第七話 争い(前編)
第八話 争い(後編)
第九話 嫁心
第十話 布支度
第十一話 出発

となっていて、本巻は、第一巻で、ようやく夫婦らしい関係になってきカルルクとアミルに、アミルの実家からの無理難題が中心かな

【あらすじ】

◯第六話 パン焼き竈

冒頭は、「竈の日」といって、女性たちが集まって、まとまったパンを焼く日の情景から始まる。ここで、後巻で、味のある活躍をしてくれる「パリヤ」とアミルが出会って、彼女の気が強そうで、実はシャイな性格が滲んできて良いデビュー。こうした「竈の日」のように、普段は家の中にいて外出しない女性たちが集まることによって、情報交換やら、それぞれの品定めやらをしたんであろう。中央アジア版井戸端会というところか

◯第七話 争い(前編)、第八話 争い(後編)

第七話、第八話は、今巻の大イベント。アミルの一族、兄弟が、一族の有力者に嫁がせるために、彼女を取り返しにくる話。
嫁さんを不条理な理由で、奪還されては、当然、一族や町の沽券にかかわるわけで、町をあげて、かれらを撃退する話。
腕力があるほうではなく、まだまだ頼りなかった「カルルク」がアミルを守ることによって、短期間にたくましくなりますね。

◯第九話 嫁心

第九話は、第七話、第八話のトラブルを経て、アミルが、実家と縁切りし、完全にカルルクの「妻」となる話。
とりわけて、イベント的なものはないのだが、若い夫婦のイチャツキがなんとも微笑ましいですね

◯第十話 布支度

第十話は、ここらあたりの嫁入りでは、たくさんの刺繍された布を嫁入り道具にもっていく風習があり、それに関する話。パン作りでは絶妙に技を発揮したパリヤだが、裁縫はとても苦手であったことが判明。これに対してカルルクの姪のティレケは、裁縫は得意なのだが、柄のほとんどを「鷹」にするという変わり者。これを案じた母親が、祖母に頼んで、家に伝来する多くの刺繍布を彼女に見せる。それはさながら、一族の女性の記録であった、といった話。
この話で、途中、カルルクの家の居候・スミス氏に手紙を届けてくる意思ギリス人女性は、ひょっとすると、イザベラ・バード?などと妄想する

◯第十一話 出発

第十一話は、カルルクのところに居候しているイギリス人民族学者・スミスが、次の研究地へ出発する話。彼が中央アジアに来る発端となった子供の頃の話に、この当時の探検家たちの心情が垣間見えますね。

【まとめ】

実家によるアミルの奪還騒動を経て、この二人の仲が縮まったのが、この巻の最大の収穫かな。奪還騒動は、アクション満載で結構ハラハラいたしました。さらにはパリヤやスミスさんの旅立ちなど、次巻以降のネタも仕込みが始まっているのでお見逃しなく。

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