いきもの係に増員。それに関係なく、薄ちゃんの推理は絶好調 ー 大倉崇裕「警視庁いきもの係 クジャクを愛した容疑者」(講談社)

数々の難事件を、その事件に関わる動物をキーにして、不思議な視点から解決してきた須藤・薄コンビなのだが、その活躍も4巻目となって、薄ちゃんの推理も絶好調という感じである。
このコンビの活躍も、そろそろ評判になってきて、少なくとも「警察社会」の中では、存在感を増してきたようだ。確実に、彼らが現場に行ったときの、所轄などの捜査本部の対応が違ってきているのだが、それがいいことか悪いことかはこれからの展開次第であろう。

【あらすじと注目ポイント】

収録は

ピラニアを愛した容疑者
クジャクを愛した容疑者
ハリネズミを愛した容疑者

の3編。

まずは、「ピラニアを愛した容疑者」から。この話から1名、人員が増加される。理由は、移動にタクシーを使っていた「いきもの係」の機動性を高めるためにであるとのことだが、そこは陰謀に長けた鬼頭管理官のこと、なにを謀んでいるのかわからない。

事件のほうは、門前仲町のマンションで、男性が扼殺される。男性は、ピラニアを飼っており、その世話で須藤・薄が駆り出されたのだが、近くの公園の池にピラニアが放流されていたという騒ぎも関連するのが、この話の謎解きの鍵となるところですね。

「クジャクを愛した容疑者」では、いきもの係の増員として、前話ででてきた捜査一課の芦部巡査部長が決定。ただ、彼は鳥の羽根アレルギーがあったり、虫が苦手であったり、この係のメンバーとしての適性はちょっと疑問があるところですね。

事件のほうは大学内で大手運送会社の孫が殺された事件の解決。こういう設定の常として、この被害者は金持ち風をふかす、いけ好かないやつで・・・というのがお決まり。この男が、学内でクジャクを繁殖させていたグループを追い出して、クジャクが闊歩する場所をつぶして、オープンテラスをつくる計画を進めていたのが、事件の原因らしく、クジャクを繁殖させていた「クジャク同好会」の会長が容疑者として捕まることになるのだが・・・、という展開。

この男がなぜオープンテラスを計画していたのか、ってのも謎解きの一つではあるのだが、このおかげで、別の女性失踪事件を「薄ちゃん」が解決するんだから、彼女はかなりの「腕利き」な刑事ですな(偶然ではあるけれど)

本体の事件のほうは、人間の根源的な感情でもある「妬み」であるのだが、この感情で道をあやまるのは、金持ちの素行の悪いボンボンばかりでなく、真面目な人もそうなる可能性があるというところが謎解きの鍵ですかね。

「ハリネズミを愛した容疑者」では、話の伏線として、須藤が監察官に追われることになる。その原因は、彼の旧友に捜査の秘密を漏洩した疑惑なのだが、監察との大立ち回りが良いスパイスになってます。

事件の方は、ハリネズミを飼っていた女性が強盗に襲われる事件。薄ちゃんは、この事件が通りすがりの強盗事件ではなくて、このハリネズミに関連する人による犯行では、と捜査をすすめるが・・・といった筋立て。

途中、薄ちゃんが、証言を得るために、バーターで証言者の抱える案件を解決してやるところは、いつもの「ボケ役」でない切れ味を感じます。

ネタバレ的には、自分のペットを守るために、他人のペットと飼い主を危険にさらすんじゃねぇ、というところが謎解きの鍵ですね。

【レビュアーから一言】

捜査や推理の切れのよさはますますパワーアップしてきているのだが、薄ちゃんの「天然ぼけ」と日本語のおかしさ具合が変わらないのは、このシリーズの読みどころの一つですね。

監察から目をつけられていた須藤の疑惑も鬼頭管理官によって無理やり晴らされたようなので、これからも、須藤・薄+芦部の活躍が期待できそうなのであるが、今巻は、薄ちゃんの活躍のほどを楽しみましょう。
そして、今回から標題の「警視庁総務課動植物係」が「警視庁総務課いきもの係」に変わっているのだが、このへんの経緯はちょっと不明ですね。

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