組織の活力を削ぐ「中だるみ」を退治しろ ー 山本寛『「中だるみ社員」の罠」』

ビジネスパーソンがその仕事を辞めたくなったり、飽きてくる時期は、3日、3月、3年ごとに周期的にやってくるといわれているように、どんなに最初はモチベーション高く仕事をしていても、意欲が下がったり、伸び悩んだりといった時が必ずくるもののようだ。

もちろん、この時期は個人的には「転機」の時期でもあるのだが、一方で、今まで、能力開発やトレーニングもすすめて、組織の中核として活躍を機体する層が組織を離れてしまったり、パフォーマンスを落としてしまったりする、組織にとっての「魔の時期」でもある。

そんな「中だるみ」について、具体的な事例を分析しながら、それからの脱出の仕方を探るのが本書『山本寛「「中だるみ社員」の罠」(日経プレミアムシリーズ)』である。

【構成と注目ポイント】

構成は

まえがき
 −多発する「中だるみ」
第1章 「2年前と同じ」はなぜ危険なのか?
 ーキャリアが停滞するとは
第2章 異動でやる気をなくす人、”塩漬け”でやる気をなくす人
 ーいろいろな種類の停滞
第3章 中だるみしやすい人、しにくい人の違い
 ー停滞する社員の特徴とは
第4章 中だるみすると何が起こるのか
 ー停滞がもたらす影響
第5章 マンネリ感をミスから打破するために
 ー停滞解消のためにできること
第6章 上司と組織に何ができるのか
 ー中だるみ解消のマネジジメント
あとがき
 ー一人ひとりの大切なキャリアのためにできること

となっていて、最初の第1章が「中だるみ」を生む労働環境などの総論部分、第2章から第4章までが、「なかだるみ」が起きるシチュエーション、タイプ、キャリアへの影響、第5章から第6章までが対処策となっていて、「中だるみ」という現象について、自分を含めた個人としての予防策・抜け出し方を知りたいのか、人事担当者として「中だるみ」改善を図りたいのかで、集中的に読んでおくべきところが変わると思うので、このあたりを参考にしていただければよいと思います。

このうち、「中だるみ」の発生形態で、注目しておくべきは世代差ということで、若い層が

今の若い人の働く意識にはどんな特徴がみられるでしょうか。
二つの点が挙げられます。
一つは、「短期間で身につき、他社でも使えるような市場価値の高いスキルを求める人が多い」ということです。
この背景には、今後のキャリアが長いということもあり、組織や仕事の変化の激しさを強く感じていることもあるでしょう。
(略)
もう一つは、将来のキャリアが(今の会社の中で)ある程度見通せるかどうかを重視することでしょう。
最近のいろいろな調査結果をみても、若い人の終身雇用への支持率は相変わらず高いものがあります。
つまり、若い人は、万が一に備えて他社でも使えるスキルを持つことを重視すると同時に、できれば今の会社でキャリア形成したいと思う人々が多いのです

であるに対し

中高年の人々は、それまでのキャリアで得てきたものを維持したいと考える「維持期」という段階に入る人が多くなります。
この段階は、ライフスタイルやキャリアが安定し、これまで得た地位や立場を守ることに関心が集中します。
そのため、失敗するリスクの高い行動は避けるようになり、同時に、自分の能力を試すような挑戦的な仕事に動機づけられることが少なくなるということでもあります。
つまり、仕事上の停滞に陥ることも多くなるといえます。

ということで、例えば、責任ある仕事、新分野の仕事など、同じ仕事を割り振られた場合でも、年代差によって反応が変わりうるというところには注意が必要であろう。特に人事担当者として対応策を考える場合、所属する組織の年齢構成、管理職比率などによって効果的なものが変わってくる。例えば、若い社員が多いベンチャー型の組織は、キャリアアップを、中高年の多い成熟した組織は今までのキャリア尊重を重心においた活性化対策を打たないといけないのでしょうね。

ただ、これは年代差というだけではなく、その人の性格とか仕事へのスタンスといったこのでも大きく違う気がしていて、それは

とくに若い人で仕事が停滞しやすい人の特徴として、「真面目な人」を挙げてくれました。
彼の言う真面目な人とは、学校の勉強はできたのに、教科書にない問題が出てくるともう駄目という意味で、「頭が良くない」人のことだそうです。

「仕事をバリバリやりたいという人で、自分は完璧と思っているか、完璧でありたいと思っている」人ほど、仕事の停滞に陥りやすいのでは

といった指摘にも見て取れる。人事施策として実施する場合は、職場に応じて、年代差による一般的な傾向を、社員の性格に応じて補正するといった対応ができるようなシステム的な柔軟性を持たせないと、現場で不具合が生じてくることになると思われますね。
さらに、一般的に、「中だるみ」状態にある社員に対しての上司の助言や励ましは有効とされているのであるが、注意すべきは

一つ目は、「部下の様子をよく観察すること」です。
当然のことながら、励ます場合、タイミングが重要です。
また、相手に合わせた励まし方が求められます。
そのためには、普段から一人ひとりの部下をよく見て、頻繁にコミュニケーションを交わす必要があります。
二つ目は、「そもそも励ましが役立つかどうか」です。
停滞から抜け出す可能性が非常に低いのにやたら励ましても部下はその言葉を信じられないでしょう。
つまり、上司自身が部下の停滞の状態をよく知っておく必要がある

ということであるので、現場の管理監督者は気を付けておいてくださいね。

【レビュアーからひと言】

世代を問わず、人材不足が顕著になっている現在、企業組織の中の人材をいかにハイパフォーマンスで活躍してもらうか、ということは全ての経営者や管理者に共通の悩みであろう。
そういった時、いま在籍している社員の「中だるみ」という現象は、個人だけでなく組織のパフォーマンスにもかかわること。人事担当者は、本書あたりでその対処ノウハウなりの知識を入手しておいて損はないと思います。

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