「単独登山女子」の美味しそうな「山ご飯」を味わう ー 「山と食欲と私 1・2」

山と食欲と私

女子高生たちの「冬キャン」を描いて、「キャンプ」のイメージを変えてしまったのが「ゆるキャン△」なら、登山時や山頂で食す「山食料理」を描いて、禁欲的な感じか、若い女の子が可愛いファッション自慢するという両極端に分かれてしまった「登山」に新たなイメージを付け加えたのが本シリーズ『信濃川日出雄「山と食欲と私」(BUNCH COMICS)』です。

主人公の「日比野鮎美」は都内のIT系の事務をしているOLなのだが、毎週「山へ登っている」という女性。もっとも、山の中ですれ違う登山者には「山ガール」ではなく、「単独登山女子」と呼んでほしいと主張するこだわりの登山愛好家です。

【構成と注目ポイント】

第1巻は
 1話 山の上のおにぎり
 2話 欲張りウィンナー麺
 3話 雲上の楽園コーヒー
 4話 背徳のカーボローディング
 5話 不屈のにんにくネギ味噌さけ雑炊
 6話 反省のカシューナッツ炒め
 7話 ほかほかのホワイトシチューパスタ
 8話 星降る夜のホットワイン
 9話 下山後のご褒美
 10話 魅惑のブルスケッタ
 11話 炊きたてご飯のオイルサーディン丼
 12話 うどん光る

第2巻は
 13話 ホットサンド一期一会
 14話 塩あんこおはぎころころ
 15話 もみじの天ぷら
 16話 掟破りのぽんかす丼
 17話 消えた桜もち
 18話 挑戦の蒸し肉まん
 19話 諸行無常の鎌倉揚げ
 20話 夢見る大人ココア
 21話 八ヶ岳縦走編 ①高見石の揚げパン
 22話 八ヶ岳縦走編 ②食べきれない硫黄岳
 23話 八ヶ岳縦走編 ③ゆるゆるのステーキ
 
となっているのですが、第1巻、第2巻は、鮎美の「単独登山」と単独「山食料理」が描かれています。

というのも、鮎美は、かなりの人見知りの性格であるらしく、第4話で、登山に興味をいだき始めた「小松原鯉子」先輩が職場で声をかけてくると

といったにべもない態度で拒絶したり、第19話で鎌倉でハイキングに向かう途中に、寺社の御朱印集めをしている彼女に出会うと

といった妙なポーズをしてしまったり、さらには第1話で、山の山頂で自製俳句ををイケメンの登山男子に聞かれると、

と言って逃げ出したり、といった有様です。このあたりは、自然愛好家の人が「人ぎらい」あるいは、「人付き合い」が苦手、というパターンにのっとってますね。しかし、例えばランチのときには

といった山登りの基礎体力づくりを欠かさないという「ストイック」なところもきちんと描かれていて、「登山女子」の生態を知るには勉強になります。

そして、このシリーズの読みどころは、「鮎美」が山で食する「山食料理」で、豪快で飾り気はないですはアツアツがうまそうな「欲張りウィンナー麺」(第1話)とか

メスティンでご飯を炊いて、ちぎったレタスと温めておいたオイルサーディンをどんと載せ、醤油をまわしかけてできあがる「豪快オイルサーディン丼」(第11話)とか

食パンにスライスチーズ、その上にざく切りにしてオリーブオイルで炒めた男爵イモを載せて塩コショーし、さらに炒めたベーコンにスライスしたトマトを重ね、上から食パンでサンドし、ホットサンドメーカーで挟んで焼いた「男爵いもとベーコンのホットサンド」(第13話)

八ヶ岳の高見石の山小屋で食す「揚げパン チーズ&きなこ」と「コケモモジュース」

などの「美味」の数々が山で出会うエピソードとともに描かれて、おもわず生唾を飲み込んでしまうこと間違いなしですね。
山男は山でみるといい男だが、里で見るとイケてない、という話のように、同じものでも、街で食すより山の雰囲気の中で食すほうが、数倍美味しくいただけるようです。

【レビュアーから一言】

「山食料理」のエピソードの数々でうかうかしていると、たまに「山の怪」がまじり込んでいているのは注意したい所。第17話では、山中ですれ違った老婆に山に入らないほうがいい、と忠告されるが「天候は回復するから」とその言葉に逆らって入山。山中で「桜餅」を食べる鮎美なのですが、いつのまにか食べた以上に「お餅」が減っていて、そのことに少しビビりながら下山しようとすると背後から後ろから・・・という「山の怪」に遭遇することとなります。

老婆はすれ違うときに「ふりかえらね、こと。さそわれても、だまってまつ、こと」と鮎美にアドバイスするのですが、その意味は・・、

といった筋立てです。「美味いもの」を食べてうかれてばかりいて、「山への畏敬」をちゃんと認識していないと痛い目に会うよ、ということでしょうか。

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