鮎美は「グループ登山」の魅力に目覚める ー 「山と食欲と私 3・4」

山と食欲と私

山頂やテント泊、あるいは山小屋で食す、美味しそうな「山ごはん」を描いて、ストイックで、尖った雰囲気の強い「登山」のイメージを大きく変えた、「単独登山女子」日々原鮎美の活躍する『信濃川日出夫「山と食欲と私」(BUNCH COMICS)』シリーズの第3弾と第4弾。

「単独登山女子」と名乗っていて、もともと人付き合いが苦手な主人公・鮎美なので、山友達の友人も少ない状態だったのですが、勤務している会社の先輩が「登山」に興味を持ち始めるのと、新人の派遣社員も山関係で、といったことで、にわかに「グループ登山」での愉しみが浮かび上がってくるのがこの二冊です。

【構成と注目ポイント】

まず第3巻の構成は

24話 沈黙のジャンバラヤ
25話 私にTMAS2016
26話 焼きおにぎりA-CHI-CHI!
27話 高尾山レクリエーション編①謎の大鍋
28話 高尾山レクリエーション編②思い出のだご汁と麦焼酎
29話 高尾山レクリエーション編③とろろとお風呂
30話 誰も知らないコーヒーブレイク
31話 門出のアクアパッツァ
32話 涸沢カール逗留編①神降りる地のおやき
33話 涸沢カール逗留編②枝豆とウィンナーの炊き込みご飯
34話 涸沢カール逗留編③染みる大根の味

続く第4巻の構成は

35話 涸沢カール逗留編④ ミックスナッツのペペロンチーノ
36話 涸沢カール逗留編⑤ 伝説の山小屋と岩魚の塩焼き
37話 会社のオフィスで山ロス飯
38話 漂泊のミートソースカレー
39話 文学と桃
40話 特攻のおしるこ梅雑炊
41話 待望のチーズフォンデュ
42話 筑波山 山コン編① 気合の(!?)多幸うどん
43話 筑波山 山コン編② お結びの山
44話 筑波山 山コン編③ 風呂あがりの牛乳と若仙人
45話 筑波山 山コン編④ 筑波嶺の夜 宴のあと 前編
46話 筑波山 山コン編⑤ 筑波嶺の夜 宴のあと 後編

となっていて、鮎美の職場の先輩・小松原鯉子といっしょに山行を始めるのが。「グループ登山」の皮切り。彼女はもともと関西人らしく、先巻の「鎌倉」の時でもその片鱗はあったのですが、関西人らしい「強引さ」が、鮎美のガードを突き崩すカギですね。

そして今回、彼女と山頂で食すのは「まるごとトマトのジャンバラヤ」なのですが、これはアメリカ料理のようですね。昔からあまり高く評価されない傾向のある「アメリカ料理」なのですが、南部料理など、こうしたざっかけないものに名品があるようですね。

そして、この「グループ登山」は、職場の同僚たちと行く「高尾山レクリエーション」、小松原先輩と行く「筑波山の合コン」へと発展していきます。「高尾山レクリエーション編」で登場する、無口で不愛想な「瀧ちゃん」は、実は「登山部」出身の「山女」であるのですが、「高尾山レクリエーション編」で大鍋をかついできてつくる「だご汁」がいかにも登山部の「山ごはん」らしい感じがするのは当方だけでしょうか。

さらに、彼女が登山男子兼人力車夫の男性と電撃入籍したことが、「筑波山 山コン」の引き金となります。この結果は本書のほうで読んでいただきたいのですが、バツイチで男の子を育てている、かなり武骨で不器用な感じの男性が気になってしまう「鮎美」の女ごころがなんとも可愛らしいところです。

「単独山行」のほうでは、上高地→横尾→涸沢→奥穂高へと3泊4日でまわるはずだった「涸沢カール」山行で、意外なトラブルにみまわれてしまいます。
2日目の横尾から涸沢へ向かい途中で原因不明の下痢に襲われ、それに気を取られて足を滑らし捻挫をしてしまい、まさかの「奥穂高」アタックの中止という事態となってしまいます。
このあたり、無理に山に挑まないのは途中で拾った「フレディ・マーキュリーのキーホルダー」のおかげでもあるのでしょうか。

もっとも、このアタック中止のおかげで、涸沢のテント泊中での第トランプ大会での「砕きミックスナッツのペペロンチーノ」とか、明神池の山小屋での「岩魚の塩焼き定食」とか魅力的な「山ごはん」がでてきますので、「食」のほうが愉しみな方には嬉しいかもしれません。

【レビュアーからひと言】

今回はメインとなる「高尾山レクリエーション」や「涸沢カール」、「筑波山の山コン」といった話のほかに、シリーズの次巻以降で時折登場してくる、ユニークなキャラとの出会いがあります。例えば、山登り初心者で「恰好」から入るタイプのナルシスト登山男子の「鷹桑秀平」とか、全国を車で車中泊しながら漂泊している、何を職業にしているかわからない、ワイルド系ナチュラリスト「黒蓮七実」とか、スパイスの利いたキャストがでてくるのでお見逃しなく。

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