資料作成のコツ教えますー「世界で一番やさしい資料作りの教科書」

オフィスワークの現場でなくてはならないものといえば「資料」。資料の出来の良しあしで、仕事の出来も左右されるというのはビジネスパーソンの常識でしょう。でも、アニメーションの使い方とか、デザイン的といったものは出ていても、資料作りのキモのところを教えてくれる情報にはなかなか出会うことができません。

このビジネスパーソンの悩みのタネである「資料作り」のコツをわかりやすく教えてくれるのが本書『榊巻亮「世界で一番やさしい資料作りの教科書(日経BP)』です。

【構成と注目ポイント】

構成は

第1章 伝わらないグダグダな資料
第2章 一枚ものの資料作り
第3章 仕事を受ける/依頼する
第4章 会話をかみ合わせる
第5章 プレゼン資料をつくる
第6章 伝わるプレゼンテーション

となっていて前著「世界で一番やさしい会議の教科書」のシリーズものです。今回も小説仕立てになっていて、主人公の鈴川葵が前著の最後のほうで、ファシリテーションの上手さに着目されて新商品開発のプロジェクトチームに異動しての奮闘を通じて、資料作りのコツとプレゼンテーションの段取りのコツを学ぶ、という仕立てになってます。書名は「資料づくりの・・」となっているのですが、第1章から第3章までが「資料づくり」のコツ、第4章から第6章までがプレゼンのコツを中心に書かれています。

◇おおまかなあらすじ◇

葵の上司の西山課長は前著ほど、とりとめのない人物ではないのだが、指示の明確でない、典型的な「昭和上司」。プロジェクトの資料を、父に指導されながら作って行くうちにその手腕を認められ、新商品のリリースに向けての営業セクションへの説明の主役に駆り出されていき、という筋立てです。

多くのビジネス書で、開発部門と営業部門とはいがみ合う設定になっているが、本書も同様。そして、営業部門の常として「鬼」と称される仕事に厳しいが人情にお厚いといった責任者がいるもので、「葵」が彼や営業の社員を納得させて信頼を売ることができるか・・・といった展開ですね。

ちなみに前著で葵の相棒として活躍した片澤は今はアメリカに赴任していて、そこからテレビ電話でアドバイスする設定になってます。

◇本書で学べる資料作成のコツ◇

本書では「資料づくり」と「プレゼン」「コミュニケーション」といった幅広いサジェッションが盛り込まれているのですが、今回のレビューでは書名に忠実に「資料作り」のコツをPickupしておきます。

▽キーメッセージをはっきりさせる▽

まず一番に重要なのは「キーメッセージ」、つまり「伝えたいこと」は何かを明確にするということです。資料の中で最悪なのが、何を書いてあるかわからない、最後の最後まで読まないとわからないというもの、このため

・伝えたいことを一番目立つところに書いておく
・キーメッセージが主役で、図表はおまけ

といったことに留意しないといけません。

ここを前提として、キーメッセージに加えて何があると伝わりやすいか、キーメッセージだけだと相手が持つであろう疑問は?、といったことに気をつけて補足しておくとよいようですね。

▽目的と相手、リアクションを明確にすることが大事▽

第1章から第3章にかけて、職場でよくあるダメ事例「上司の指示があいまい」「メールの依頼があいまい」といったことに伴うトラブルの数々とその解決法が示されています。トラブルが起きるのは「確認不足」が根本原因で、まず「何を」「誰に」説明し「どんなリアクションを求めるか」を明確にしておかないといけないですね。

このあたりは「会議の教科書」で会議を円滑に効果的に進めるコツとして書かれていたこととも共通しています

そして、その確認のレベルは

動作が明確:体の動かし方をイメージできる:何を行動したらいいかわかる
期限が明確:いつまでにやるかがイメージできる
目的と背景が明確:なぜやるのかを自分の言葉で語れる

といったところまでやるのがベストとされているので、臆することなくやってみましょう。

▽パソコンを開くのは最終段階▽

そして、以上のような前処理を済ませたら、本書では資料作成の段階として、

①発散:自分が話したいことを思いつくままでい書き出す
②主張と要望:言いたいことと相手にしてほしいことをひと言で表現する
③相手の状態の確認:資料で説明する相手、何を期待しているか、何を知っていて何を知らない
か、など状況をできるだけ詳しくつかむ
④シナリオを描く
⑤ラフスケッチをつくる
⑥パワポで仕上げる
⑦レビューする:一旦寝かせた後に、聞き手の気持ちで読み返して修正する

というステップで資料をつくるようアドバイスされてます。

大事なのは⑥の段階までパワポソフトは立ち上げない、ということのようです。資料の構成がグダグダでよくわからない代物ができあがるのはこういうところが最大原因かもしれません。
とかく、資料をつくろうとすると見た目やデザインにまず拘ってしまう人が多いのですが、まずは資料の中身の構成や推敲を一番にやれ、ということですね。

このほかビジネス上のコミュニケーションをスムーズにする3原則とか、プレゼンターのべからず7か条とか、ほかにも有益なTipsが載っているのですが、あとは本書で確認してくださいね。

【レビュアーからひと言】

本書のほうでは、葵が同僚のプロジェクトチームメンバーと一緒に、葵の父親のコンサル会社で実地で教えてもらうシーンがでてくるのですが、そこでの父親の独白で、部下が作り込んだきたパワポ資料を相談してきた時のチェックの仕方で、

そのときによくやるのが、キーメッセージのレビューだ。資料のキーワードメッセージだけをざっと、部下と一緒に見ていくやり方。キーメッセージがしっかりしているか、流れがつながっているかを、ここで確認しておくといい。

という方法が紹介されてますので、管理職の方はご参考に。
ポイントは部下と同じ立ち位置で資料を眺めないことですね。部下と一緒に、資料のデザインや表現の細かなところに入り込んで、迷路に彷徨い込んでしまう「迷子上司」になることだけは避けたいですね。

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