鄭和はイスラム側のモルディブ女王と戦い、津波に遭遇するー星野之宣「海帝6」

コロンブス・マゼランといったヨーロッパの大航海時代の百年以上前、アジアの大国・明の三代皇帝・永楽帝から第五代・宣徳帝の時代にかけて、7回のわたって派遣された明の大艦隊の指揮をとって、アフリカまで到達した、異色の宦官「鄭和」の大航海を描いた「海帝」シリーズの第6弾。

前巻までで、マラッカ海峡を抜け、セイロンの仏教寺院へ、明の建文帝親娘を送り届け、ひとまずの使命を果たした鄭和はさらに船をインド洋を西へと進めていきます。永楽帝の密命を受けた宦官たちを乗せ、さらには鄭和が建文帝の亡命を手助けしたことを知った海賊・陳祖義を勾留した状態で、イスラム勢力の強いモルディブへと航海していく姿が描かれます。

構成と注目ポイント

構成は

第40話 日本人
第41話 女王
第42話 敵の狙い
第43話 海鳥
第44話 火龍出水
第45話 私の島々
第46話 古里(カリカット)
第47話 第三の眼

となっていて、青市島の追想から、モルデイブでの女王勢力との戦い、とその後のカリカットでの仏教の高僧との出会いまでが本巻です。

青市島封印の記憶

まず最初の第40話は、鄭和が出会った倭寇の黒市党が、彼らの故郷である「青市島」を捨てて、鄭和艦隊へ参加したところが描かれます。ペストの流行で周囲から無いものとして扱われていた「青市島」が封印された瞬間ですね。

そして、この黒市党の苦い思いをあざ笑うように、鄭和の宝船艦隊に向けて、船倉にペストの死者と感染者を閉じ込めた船をぶつけてくるという戦法を使ってくる敵が出現します。感染を防ごうと思えば、まだ生きている、病船の乗員を射殺し、火をかけるしかないわけで、残虐な防御を強いる悪どい攻撃ですね。

海の宝石・モルディブの女王現る

この攻撃をしかけてきたのは、セイロンの隣にある、「モルディブ諸島」を支配する女王・ハディージャ2世らしく、恋人であったアラビア商人を鄭和に殺されたため、その復讐で彼らに攻撃をしかけてきています。

モルディブは現在では「インド洋を南北860キロ、東西118キロにわたって広がる26の環礁、そこに約1,200もの島が存在するモルディブ」という美しい観光地なのですが、当時は島の数2,000、環状群島が100近くという話が伝わっているので、現在より規模の大きな群島国家であったようですね。

中華とイスラムの最新兵器の激突

そして、その女王が鄭和の宝船艦隊にしかけてくるのが、アラビア商人が」から仕入れた「アル・ラマー」という対艦兵器。ネタバレをすると、モンゴルの兵器を改良した潜水型ロケット弾、つまりは魚雷です。

これを迎え撃つのが、中国兵器技術の粋を集めた「火龍出水」というミサイル兵器です。まさにイスラムと中華の科学技術の対決ですね。

どちらの技術も優劣はつけがたいのですが、その勝敗を分けたのは、なんと「自然災害」で・・・という展開です。ここで、モルディブ諸島が現在のような姿になった種明かしもされるのですが、詳細は原書でご確認を。

さらにこの巻の最後は、次巻に続く、チベットの高僧との出会いと彼を追ってヒンドューのヴィジャナガル国の軍隊がせめかかってくるところで締めくくられています。

レビュアーから一言

本書では、中国本土や東南アジアの諸国へと食指を伸ばす、帝国主義的な侵略をしてくる勢力として「アラビア」が描かれているのですが、当時、イスアラビアを中心とした「イスラム勢力」は中国やギリシア・ローマの文化や科学技術を取り入れた「大文明圏」には間違いなく、一方的な「敵」よばわりはイスラムの人には心外かもしれません。

ここは、単純な「善悪闘争」ではなく、中華国家とイスラム国家との出会いと争いという側面をしっかり踏まえながら読んだほうがよさそうですね。

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