宗像教授、再登場。遮光器土偶や「花咲爺」の秘密を解き明かす=「宗像教授異考録」1・2

圧倒的な歴史的知識と猪突猛進といってもいい探求心、そして、制約をしたない独自の理論構築と考察力で、古代史・人類史の謎解きに挑み続ける異端の民族学者「宗像伝奇」の活躍を描いた「宗像教授」シリーズの第2シリーズ『星野之宣「宗像教授異考録」(ビッグコミックス)』の第1弾から第2弾。

あらすじと注目ポイント

第1巻 宗像は、遮光器土偶や川中島の戦の真相を推理する

第1巻の収録は

第1話 巫女の血脈
第2話 百足と龍
第3話 天平のメリークリスマス
第4話 大天竺鶏足記

となっていて、第1話の「巫女の血脈」では、宗像の教室で民俗学を学び現在は青森で中学校の教師をしている女性・津島が宗像の教室を訪ねてきたところから始まります。
彼女の住んでいる青森へ行き、恐山で依頼者を待つのではなく、昔ながらの依頼者のもとを訪ねて村から村へと歩き回るイタコをしていた女性から彼女の歩んできた歴史を聞くことによって、この地域の「遮光式土偶」の秘密をつきとめるとともに、愛弟子が心の底に押し込んできた悲しみを解放することとなります。

第2話の「百足と龍」では、滋賀の田原藤太の大百足の退治伝説と日光の蛇に化身した二荒山の神が、大百足に返信した赤城山の神を迎え討つ話の共通点を探る過程で、古代の山で銅や金を掘り出す鍛冶集団と水辺で砂鉄を集めて鉄をつくる鉄造りの集団との対立へと展開していきます。
そして、その痕跡を示す発掘現場に、第1シリーズで宗像の因縁の相手となった忌部捷一郎がテレビクルーを引き連れて現れます。
そして、彼の乱暴な所業が、武田信玄が上杉謙信と執拗に争った「川中島の戦い」の隠された目的と、信玄の伝説的軍師であった片目で足が不自由であったと伝えられる山本勘助の意外な正体を明らかにしていきます。

ちなみに、この話で、このシリーズで宗像の行くところに必ずといっていいいほど、現れて彼の邪魔をしたり、助けたりといったトリックスター的な役割を果たしていく忌部捷一郎の妹で歴史研究家の「忌部神奈」が登場してきます。

このほか、第三話では、「ビッグ文芸」の編集者・横月平太からもちこまれた企画で「忌部神奈」に正式に出会い、彼女とともに聖徳太子の秘密に迫るほか、第四話では、仏教会のツアーに同行してインドへ出向き、そこでブッダの高弟・摩訶迦葉波(マハーカッサバ)が入定したと伝えられている「鶏足山」であるものを発見し、弥勒伝承の謎を探り当てます。

第2巻 宗像は「花咲爺」の昔話や邪馬台国の秘密を解き明かす

第2巻の構成は

第1話 花咲爺の犬
第2話 割られた鏡
第3話 織女と牽牛

となっていて第1話の「花咲爺の犬」では、昔話の定番である「花咲爺」に、狩猟生活の大事な相棒として犬を考えていた縄文人と農耕の役に立たないため犬を蔑んだ弥生人との違いを考察するとともに、花咲爺民話の普及に徳川吉宗の「生類憐れみの令」や滝沢馬琴の「南総里見八犬伝」の功績があったことを見出していきます。

第2話の「割られた鏡」では、箸墓古墳からかつて盗掘されたという古代鏡が大学の考古学教室に持ち込まれたことがきっかけで、畿内か九州かで対立が続く「邪馬台国論争」に新たな仮説が宗像によって提案されていきます。それは、2つの邪馬台国を意味するものだったのですが、それは古代から「卑弥呼」の墓を守ってきた集団の存在を表に出すもので・・という展開です。

第3話の「織女と牽牛」では、宗像教授のいる東亜文化大学のにギリシア人の交換留学生がやってきたことがきっかけで、「七夕伝説」とクレタのミノア文明との関係やミノタウロス伝説との関連性が明らかにされていきます。

レビュアーの一言

異説・珍説がごろごろと出てくる「宗像教授」シリーズは、この「異考録」で、日本の伝承・伝説に及ぼした世界の神話・伝承の影響といった感じでスケールアップしています。
まあ、その分、後巻では隣国との民族対立や国際情勢を反映したようなシチュエーションも増えてくるわけですが、古代における対立や争いをしっかり話の中に飲み込んでストーリーテリングされているのが、本シリーズの魅力でもありますね。

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