迷子のダチョウの裏に新型感染症を巡る陰謀ー似鳥鶏「ダチョウは軽車両に該当します」

楓ケ丘動物園のアミメキリンの飼育員「桃くん」こと桃田くんが、コジラセ系のツンデレ美人獣医・鴇先生、爬虫類館の変態飼育員・服部くん、動物園の広告塔のアイドル飼育員・七森さやちゃんたちと、動物園の動物たちの周辺でおきる珍事件の解決をする動物園ミステリーの第2弾が『似鳥鶏「ダチョウは軽車両に該当します」(文春文庫)』

前巻では、動物園で飼育するイリエワニやミニブタといった動物の連続盗難事件から、組織的な麻薬密輸事件の摘発に協力した「桃くん」たちだったのですが、今回ではダチョウが発端の事件に遭遇します。

構成と注目ポイント

構成は

第一章 公道上のダチョウ
第二章 業務上のペンギン
第三章 捜査線上のオオワシ
第四章 掌の上の鳥たち

となっていて、発端は、県民マラソンが開催されている道路上に、迷子の「ダチョウ」が出現するところからスタートします。動物園の同僚が出場するので、応援に来ていた「桃くん」や「鴇先生」「七森さん」たちのところへ突如、どこからか逃げ出してきたダチョウが走ってきたもので、鴇先生の力でねじ伏せて捕獲して、保護することとなります(もっとも、預かるのは楓ケ丘ではなくで別の動物園なのですが)。
この捕獲場面は録画され、動画サイトにアップされたり、ニュースで報道されたりして、一躍「鴇先生」が美人女性獣医として人気を集めるのですが、その動画が誘ったのか、鴇先生を拉致しようとする男達が出現して、にわかに「事件」度が増していくことに。

そして、襲ってきた男たちの手がかりをつかむために、鴇先生が以前勤めていた職場を訪ねることにことになるのですが、ここで彼女が以前、製薬会社に勤務していて、新薬開発の動物実験を担当していた優秀な研究員であったことが明らかになります。ついでに、彼女の元恋人・結城にもお目にかかることができるのですが、結構「男尊女卑」系の人物で、第一巻で、ヤクザ風の二人組に襲われた時に、鴇先生がブチ切れた際に呟いていたことは、この男性との間に起きたことだった可能性が濃厚ですね。

で、昔の会社を訪ねた後、桃くんは鴇先生と鴇先生の元恋人・結城さんと一緒に拉致監禁されて、そこに帆をつけられてあやうく焼死しかけるというトラブルに見舞われます。先だって鴇先生を拉致しようとしたと男の仕業っぽいのですが、ここは作者のしかけるフェイクが紛れているので、ご注意を。

さらに、県民マラソンの時に捕まえたダチョウを預かってもらっている動物園のダチョウ舎に侵入者があったという情報を警察からもらい、その動物園を訪ねたところ、あの捕獲したダチョウが別のダチョウにすり替えられていることに気付きます。
盗難ならならまだしも、「すり替え」となるとダチョウをどこかで飼育していないといけませんし、さらにすり替える目的が見当もつかない「桃くん」たちは、県民マラソンで出現したダチョウがそもそも飼育されていそうな場所、倉庫とか大きな空き屋とかを、服部くんが勝っている、嗅覚が抜群に優れている”おんぶお化け”犬ディオゲネスを使って捜索します。
そして、見つけた倉庫で遭遇したのは、ダチョウだけでなく、大量のゲージに入れられて飼育されている鳥たち。この鳥たちの大量飼育の目的とその黒幕は・・・と言った展開ですが、ここから先は原書のほうで。
少しばかりネタバレすると、鴇先生の古巣の製薬会社はあまり質のいところではなさそうで、鳥によって媒介される感染症の治療用に開発した新薬で一儲けを狙っているようですが、そのためには、その新薬の対象となる「病気」が流行しないといけなくて・・・という筋立てです。ついでにいうと、悪いのは会社ばかりではないようですね。

レビュアーからひと言

物語自体は、筆者特有の「軽ーい」タッチで描かれているので、深刻さは少ないのですが、新型コロナ・ウィルスの感染拡大があり、そのウィルスの由来について、いろんな陰謀説も飛び交ったところなので、ひょっとしたら・・・なんて疑念も抱いてしまいました。本書の刊行は2013年なので、2020年のコロナウィルスの世界的大流行とは無縁なのですが・・・。

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