飼育員探偵たちはペット飼育の闇を引っ張り出したー似鳥鶏「モモンガの件はおまかせを」

楓ケ丘動物園のアミメキリンの飼育員「桃くん」こと桃田くんが、コジラセ系のツンデレ美人獣医・鴇先生、爬虫類館の変態飼育員・服部くん、動物園の広告塔のアイドル飼育員・七森さやちゃんたちと、動物園の動物たちの周辺でおきる珍事件の解決をする動物園ミステリーの第4弾が『似鳥鶏「モモンガの件はおまかせを」(文春文庫)』。

第1巻では楓ケ丘動物園の連続動物盗難に隠された麻薬密輸事件、第2巻では新型インフルエンザ・ワクチンで大儲けを狙っている企業のバイオテロ未遂事件、第3巻では、動物園の経営難に付け込んで芸達者な野生動物を売り込む悪徳動物プロダクションの悪事を暴いた、楓ケ丘動物園も飼育員探偵メンバーなのですが、今巻では、短編仕立てのプチ事件を解決しつつ、現代のペット飼育の闇に迫ります。

構成と注目ポイント

構成は

第一話 いつもと違うお散歩コース
第二話 密室のニャー
第三話 証人ただいま滑空中
第四話 愛玩怪物

となっていて、今回はそれぞれが単話として完結しながら、最終話につながっていくというオムニバス風な仕上がりになっています。

第一話 いつもと違うお散歩コース

まず第一話は「モモくん」と「服部くん」が動物園の同僚のうちに集まって催すBBQパーティーの買い出し中に出くわした事件。
BBQの BBQの飲み物と食材が足りなくなりそうなので追加の買い出しに出た二人なのですが、こんな時のお決まりとし道に迷ってしまいます。そこで、近くで犬を散歩させている男性に道をきくのですが彼は散歩で急いでいるからと冷たい対です。さらに、その連れている犬がオドオドした態度で、とてもここが毎日の散歩コースとも思えず「モモくん」は不審の念を抱きます。
そして、さらに道を聞くために、近くの公園で遊んでいる男の子と会話をしていると、男の子が一緒に遊んでいる女の子が がトイレに行ったきり帰ってきていないようで・・・という展開で、二人が誘拐事件の解決に乗り出すことになりますね。
犬を使って子どもを安心させる誘拐の手口、というのが新鮮でしたね、

第二話 密室のニャー

第二話は、 楓ケ丘動物園のボランティアで手伝いに来てくれていて、アイドル飼育員・七森さんのファンである「長谷井くん」という中学生の友人の家で起きた、猫の盗難未遂事件です。長谷井くんの友人・今成くんは河原に捨てられていたスコティッシュフォールドという種類の子猫を、親に頼み込んで飼っているのですが、ある時、自分の家のあたりから、その子猫をキャリーケースに入れて逃げていく男をみつけ、後をおいかけるのですが見失って今います。彼の家の出入り口は全て施錠されていて、中に忍び込んで子猫を盗み出す状況にはないのですが・・・、という設定です。その後、子猫はその夜に庭にいるのが見つかって一件落着といった感じになるのですが、この事件の密室からの猫盗難事件の謎を「鴇先生」が解き明かすとともに、違法なペットショップに行き着く、という展開ですね。

第三話 証人ただいま滑空中

第三話の主人公の動物は、この巻の表題となっている「モモンガ」。前話で摘発した違法なペットショップへの捜査に協力するため、警察署に向かって行く途中の街中で「モモンガ」にとびかかられてしまいます。
街中になぜ「モモンガが?」と不審がって、モモンガが出てきたらしいアパートの一室に入り込んでみると、そこで首を絞められて死亡してから二カ月ほど経過している死体を発見する、という筋立てです。
この殺人事件の容疑者として被害者の元カノと、被害者の友人の二人が浮かび上がるのですが、二人ともつい最近まで骨折して入院したり、外国へ留学していたりしています。とても被害者が死んでから、モモンガを継続して世話をすることはできない状況で・・という展開です。
少しネタバレすると、モモンガが被害者の部屋からでてきたので、被害者が飼い主だったのだろうという思い込みが、推理を混乱させています。

第四話 愛玩怪物

第四話では、動物園のある町の近くの山に出没する「怪物」を捕まえる話です。この町では、最近、山中の山菜とりに行くあたりで、大きさが1mぐらいで木の上を動く動物であったり、イノシシのくくり罠を壊したり、足跡を残していない何かに襲われて犬が消えたり、といった事件がおきます。
この怪物を捜索しているうちに、鴇先生の知り合いから、怪物を閉じ込めたという情報が入り、現場に行くと持抜けの空。周囲の様子を調べた鴇先生は怪物の正体に気付くのですが、それに「モモくん」が襲わてしまい・・といった感じで物語が進みます。
この怪物の捕獲がもとで、もっと構造的な問題が引きずり出されてきます。

レビュアーからひと言

本シリーズの今までは、動物園の動物に関わるものが中心で、それにかかわる「闇」のところが漏れ出ててきても、どことなく「他人事」感があったのですが、今巻は、筆者のユーモラスな語り口にのっかって事件解決を楽しんでいるいるうちに、いつの間にか、ペット飼育に関する「闇」が近くまで押し寄せてきていた、という感じに襲われるのではないでしょうか。

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