動物園の連続動物盗難の真相をつきとめろー似鳥鶏「午後からはワニ日和」

『さよならの次にくる<卒業式編>』の「市立学校シリーズ」や武井咲さん主演のTVドラマで人気となった「戦力外捜査官シリーズ」などユーモアあふれるミステリーで定評のある筆者が、ファミリーに人気の鉄板レジャー施設・動物園を舞台に、動物をネタに繰り広げられるユーモア・ミステリー・シリーズの第一弾が本書『似鳥 鶏「午後からはワニ日和」(文春文庫)』です。

構成と注目ポイント

構成は

第一章 のたのたクロコダイル
第二章 ごろごろポットベリー
第三章 ばさばさピーコック
第四章 がっかりホモサピエンス

となっていて、楓ケ丘動物園の勤務する飼育員で、「アフリカの草原ゾーン」のアミメキリンやシマウマ、ダチョウを担当している飼育員「モモさん」(桃本)をメイン・キャストに、ひっつめ髪をした長身の女性で、実はキツめの凶暴な美人の獣医兼猛禽類担当飼育員の「鴇(とき)先生」、動物ふれあいスペース担当で、園のアイドル的広報担当に小柄でげっ歯類っぽい雰囲気の「七森さん」、爬虫類館の東側のカメレオンやリクガメを担当している、遠慮のない発言が特徴の「服部君」といったサブキャストに、動物園でおきる動物絡みの珍事件を解決していくというストーリーです。

第一の事件は、まず爬虫類館で起きます。この動物園では、爬虫類を集めた「爬虫類館」という施設が園の北西の隅っこにあるのですが、その東側がカメレオンやリクガメ類、西側でワニ類や熱帯魚が飼育されているのですが、閉園後、「おたくの爬虫類を頂きました」という不審な電話があり、イリエワニが一匹行方不明となります。そして、ワニ舎のところに、「怪盗ソロモン」を名乗る人物から犯行声明の張り紙がされている、という流れです。
イリエワニは、世界最大のワニで、しかもワニの中でも凶暴なワニとして知られています。動物園のワニ舎には4匹も飼われていたので、行方不明になったものが二番目に小さいものとはいえ、1m50cmの大きさはあるので、捕まえるには相当の危険が伴う代物です。しかも、このイリエワニは凶暴で巨大化するので個人が飼育するには手に余る上に、価格的にも数十万程度で、危険に見合う代償も少ないにで、盗んだ理由もよくわからず、捜査は難航していきます。

このワニ盗難事件は盗まれた動物の凶暴性や、ワニ舎の状況を見知っている様子から、内部の人間の手引があったことが疑わているのですが、そんな中、桃本が好意を持っている、「七森さん」の挙動がちょっと不審になっている上に、彼女の机の上に置かれていた携帯に「Valefar」と番号登録された人物から電話がかかります。「Valefar」というのは、ウァレフルという魔物で、「ソロモン王」のしもべとなっている使い魔なのですが・・、ということで、「七森さん」が犯行に関係しているのでは、という疑いがでてくるわけですね。

しかし、その後、七森さんの管理する「ふれあいコーナー」で飼育するミニブタが盗まれる第二の事件が起きるにいたって、七森さんの机の上の携帯にかかってきた番号に電話をし、相手を罠にかけるという囮捜査を始めるのですが、かえって、危ない輩を呼び寄せることにんなって・・・、という展開なのですが、ここで「鴇先生」が豹変する大アクションがあるのですが、ここは原書のほうで。

さらに、「モモさん」が犯人に殴られるというおまけ付きで、クジャク舎からインドクジャクのメスが盗まれるという第三の事件がおき、「モモさん」や「鴇先生」たち四人は、園長が真相を知っているに違いないと推理し、園長を呼び出すですが・・・という展開です。
ちょっとネタバレしておくと、クリスティの「ABC殺人事件」のように、本命の事件を隠すように犯行が重ねられている上に、一番怪しいのは実は怪しくない、という原理が適用されています。

レビュアーから一言

「動物園」の「中の人」をキャストにして、描かれるミステリーっていうのは子のシリーズぐらいではないでしょうか。しかも、やたらと舐め回してくるアミメキリンの「メイ」とか、求愛活動をしかけてくるダチョウの「ボコ」とか一癖ある動物たちも登場してくるので、アニマル好きのミステリーファンには「たまらん」だろうと思います。

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