ライオン・ガールズ探偵、白い子猫を飼うー東川篤哉「ライオンは仔猫に夢中」

神奈川県のほぼ中央部、茅ヶ崎市と大磯町に挟まれた「湘南地区」の中心あたりにありながら、イメージ的には後れを取っている感のある「平塚市」。
その市内の相模川沿いの雑居ビル「海猫ビルディング」で探偵業を営む27歳の「野生ライオン」こと野性味のある美貌と美脚が特徴の「生野(しょうの)エルザ」と、彼女の同級生の元OLで全く印象が薄いのが特徴の「川島美伽(かわしまみか)」の二人が、地元で起きる難(?)事件を、速攻かつ乱暴に解決していく探偵ミステリ―「平塚おんな探偵の事件簿」シリーズの第3弾が本書『東川篤哉「ライオンは仔猫に夢中 平塚おんな探偵の事件簿3」(祥伝社文庫)』です。

構成と注目ポイント

構成は

第一話 失われた靴を求めて
第二話 密室から逃げてきた男
第三話 おしゃべり鸚鵡を追いかけて
第四話 あの夏の面影

となっていて、まず第一の事件「失われた靴を求めて」では、平塚市豊田にある廃工場で、ビルの屋上から落ちて、革ジャンを着た両腕をバンザイさせて女性が死んだ現場に、本編の主人公・生野エルザと川島美伽が立ち会っているところから開幕します。

転がっている死体(もどき)はエルザが実演しているもので、エルザと美伽は死んだ女性の父親から、娘の死の真相をつきとめてくれという依頼をうけての調査です。死んだ女性は、横浜にある中堅精密機器会社の令嬢だったのですが、親の干渉を嫌って家を出て別の会社に勤めていたのですが、そこの上司と不倫。その不倫関係が破れて、悲観して自殺した、というのが警察の見立てですね。
彼女の死が他殺なら、おそらく犯人は不倫相手だろうということで、エルザたちは調査を進めるのですが、その上司には部下三人が証言するアリバイがあり、しかも実は死んだ女性に未練たらたらだった、ということで容疑者が一人消滅。しかし、被害者のアパートから、父親から以前贈られた高価な赤いハイヒールがなくなっていたことと、そのハイヒールが質屋で売りにだされていたことから、女性はすでに他の男性に鞍替えしていたのでは、という疑いが出て・・という展開です。

第二の事件「密室から逃げてきた男」は、最近、エルザたちがなじみになっているスナック「紅」のママさんの甥・大学生の松﨑くんの殺人容疑を晴らしてくれ、という依頼です。彼は、ようやく就職が決まってサークルの仲間たちと祝杯をあげたのですが、その席で泥酔してしまい、気が付くと、同じサークルで大学でも指折りの美女の部屋で目が覚めます。ところがその部屋の中では、その美女が頭を殴打され、血を流して死んでいて・・という筋立てです。その部屋にやってきたサークル仲間に、松﨑くんが実内にいるのが発見され、容疑者として追われたため、「紅」のママさんのところに逃げ込んできた、というところです。
エルザたちは、店に溜まっているツケを帳消しにするのとひきかえに調査を引き受けるのですが、被害者がVサインをして死んでいるのが真犯人をつきとめるヒントになります。

第三の事件「おしゃべり鸚鵡を追いかけて」は、一人暮らしの初老男性の家から逃げ出した「白い鸚鵡」の捜索依頼です。その飼い主の男性は、役所を定年退職して、奥さんを亡くした後はひとり暮らしをしていたのですが、自宅の階段で足を滑らせて転落死。翌日、男性の家を訪ねた実の娘がドアを開けると、そのスキマから飼っていた白い鸚鵡が飛んで逃げていった、という経緯です。エルザたちは近くの林の中にいる鸚鵡を見つけ、捕獲しようと鸚鵡のとまっている木に登るのですが、何者かがその鸚鵡を狙って発射した「クロスボウ」の矢がエルザの肩に命中して・・という展開です。
ひょっとすると、被害者の男性の死は事故ではなくて他殺。しかもその犯人の名前を被害者が死の間際に「鸚鵡」に教え込んでいるのでは・・・という筋立てですね。まあ、冷静に考えれば、死の間際に「鸚鵡」に犯人の名前を教え込んでダイイングメッセージにする、なんてのは不可能に近いのですが、信じ込んだ美伽と犯人たちによって、鸚鵡争奪戦が始まります。

第四の事件「あの夏の面影」は、地方銀行の頭取の美人のお嬢さんから、恋人の浮気調査を頼まれるものです。英会話スクールに勤めるイケメンの彼氏は、彼女のほうからアタックしてつき合い始めたのですが。最近、一緒にいても「心ここにあらず」という感じでよそよそしいことが多く、しかも、休日に、彼女に隠れて誰かと会っているようだ、ということで彼女が疑惑を抱いた、というものですね。
エルザたちが調査を進めると、彼は、昨年の夏、職場の同僚たちと生徒たちで夏のレクリエーションに出かけた大磯の「海の家」で働いていた「ぽっちゃり」系というか「デブ」系の娘を捜していることがわかります。そして、実はその捜している「ぽっちゃり」系の女の子の正体は実は・・といった感じでハッピーエンド系でおさまりそうな気配を漂わせるのですが、ここで作者はとんでもないどんでん返しを用意していますので、最後まで気を抜かないように。

レビュアーから一言

派手目の美貌と美脚を有する「エルザ」の横にいるために、どうしても「日陰の存在」という立ち市に立たされてしまう「美伽」なのですが、今巻でも、その「目立たない」能力は健在です。
第二話で大学構内に調査にいっても、守衛のおじさんから「そっちの地味なほうの娘。そう君だ、君!」と声をかけられたり学生たちには、エルザの横の透明人間のような扱いを受けたり、第四話で調査相手の素行調査で入ったカフェバーでも、二晩連続で店に来ていてもほとんど印象に残っていなかったり、といった状況で、美伽もそこそこに美人なはずなのですが、エルザの灼熱の太陽のような照り返しの中では、どうしても目立たなくなってしまうようですね。

ライオンは仔猫に夢中 平塚おんな探偵の事件簿3 (祥伝社文庫)
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