ロリータ美少女探偵の南武線沿線での最後の事件をどうぞ=「探偵少女アリサの事件簿3 さらば南武線」

ロリータ・ファッションに身を包み、表面はいたいけな純真無垢な少女ながら、実はドロップキックを武器に犯人を蹴り飛ばす「世界的名探偵」の母親と自称「日本全国的名探偵」の父親をもつ、10歳の小学生探偵・アリサが、「溝ノ口」を中心とする南武線沿線を中心に彼女のお守り役の「便利屋兼私立探偵」の橘良太と事件を解決していくドタバタ・ミステリー「探偵少女アリサ」シリーズの第三弾が本書『東川篤哉「探偵少女アリサの事件簿3 さらば南武線」(幻冬舎)』です。

本書の紹介文では

「綾羅木有紗のワトソン役を務めたこの一年は、俺にとっても楽しく忘れられない日々になったのだから」
天才美少女探偵&ヘタレ三十路男が難事件に挑む!
大人気シリーズの最終巻

となっていて、数々の事件を解決してきた凸凹コンビが活躍する、このミステリーの(おそらく)完結編です。

あらすじと注目ポイント

収録は

第一話 便利屋、クリスマスに慌てる
第二話 名探偵、金庫破りの謎に挑む
第三話 便利屋、消えた小学生に戸惑う
第四話 名探偵、溝ノ口を旅立つ

となっていて、第一話「便利屋、クリスマスに慌てる」は、本シリーズの主舞台である南武線沿線から離れて茨城県の筑波山麓にある別荘地が舞台となります。

ここにある綾羅木家の別荘の庭木の手入れの仕事を受けた橘良太だったのですが、ここで、綾羅木父娘と、ここに住む有名なミステリー作家・鶴見一彦の別荘を訪ねると、その作家がリビングに倒れています。ガラス窓を壊して中に入ると、作家が脇腹をナイフで刺されていて・・といった事件ですね。慌てて地元の駐在所のお巡りさんを連れてくると(帰り道に途中にある、作家の弟の別荘に間違えて行ってしまい、時間ロスはするのですが)、既に作家は死亡しています。わざわざ客との面会の約束をしておいた頃に、なぜ殺人事件が?、そして別荘に行くときも、巡査を連れての帰り道も犯人らしき不審者には出会わなかったのですが・・といった謎解きです。

第二の事件「名探偵、金庫破りの謎に挑む」では、溝ノ口に住む農家の高齢男性が、刃物で腹部を刺されているのが発見されます。被害者の家内には中型の耐火金庫が置いてあったのですが、被害者しか開錠番号を知らない扉が開いていて、中にあった土地の権利書はてつかずだったのですが、家宝として大事にされていた掛け軸がなくなっていた、という事件です。依頼者は、被害者の娘の夫。下村洋輔で、彼に容疑がかけられるのですが、被害者にしつこく、その掛け軸を譲ってくれるよう言ってきていた骨董屋「がらん堂」の店内から、その掛け軸が発見され、といった事件です。

この事件に首をつっこんだ美少女名探偵・有紗は、下村の経営する町工場の草の生えていない空地に、謎解きのヒントを見出し、そこを掘り返すのですが・・という展開です。

第三の事件「便利屋、消えた小学生に戸惑う」では、まず有紗が、彼女の通うお金持ち有名小学校の同級生をカメラをもって後をつける変質者から守ってくれた近隣の小学校に通学している髪の長い児童を探して欲しいという依頼をしてきます。この依頼の聴き取りをしているうちに、なじみのスナックのママさんの娘・美乃里ちゃんのボディガードも務めることとなり、という展開です。そして、美乃里ちゃん護衛のために尾行中、道路の角を曲がったところで彼女の姿がかき消えてしまいます。その後、美乃里ちゃんが変質者に襲われてしまい、と事件が動いていくのですが、一連の事件と有紗の依頼の謎解きは、美乃里ちゃんが姿を消したトリックに隠れています。

第四の事件「名探偵、溝ノ口を旅立つ」では、家の壁のペンキの塗り替えを頼まれた良太が、その家に行くと、ドアガードが中から掛かっていて入れない状態になっています。急病か事故で倒れているのでは、と心配する家族とともに窓ガラスを壊して中に入ると、浴室で水死している被害者の姿を発見し・・という筋立てです。

扉の外にいながら、ドアガードを施錠する物理トリックに、有紗が挑みます。

探偵少女アリサの事件簿 さらば南武線 (幻冬舎単行本)
「綾羅木有紗のワトソン役を務めたこの一年は、俺にとっても楽しく忘れられない&...

レビュアーの一言

少しネタバレをすると、まるで「不思議の国のアリス」の絵本あら脱け出してきたかのような青地に白のエプロンドレス姿で、大人たちはコケティッシュに幻惑しながら、事件に関する情報を吐き出させて推理してきた美少女探偵は、今巻で、ホームズばりにアルプスのライヘンバッハの滝で悪党を対峙した世界的名探偵の母親「ミセス・ケイコ・アヤラギ」の手助けのため、イギリスへと呼び寄せられ、溝ノ口をしばらく離れてしまうこととなります。

「ミセス・ケイコ・アヤラギ」を悩ませているのは「怪盗ウェハース」という大泥棒らしいのですが、怪盗と対峙する「有紗」の外伝がいつか物語られるのかもしれません。

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