業平は伊勢の斎宮へナンパをかけた?ー灰原薬「応天の門」14

宇多天皇・醍醐天皇に寵愛されて政治の権を握ったのだが、藤原一門との政争に破れて太宰府に左遷され、死後、祟り神となって時の権力者である藤原時平ほか藤原四兄弟をとり殺したとされる「学問の神様」菅原道真と、平安時代きってのプレイボーイとして有名な在原業平の二人の活躍を描く「応天の門」シリーズの第14弾。

いつもは、業平+道真のコンビで事件解決をすることが多いのですが、今回は業平単独での事件解決がみられます。

構成と注目ポイント

構成は

第73話 在原業平、伊勢に呼ばれる事①
第74話 在原業平、伊勢に呼ばれる事②
第75話 在原業平、伊勢に呼ばれる事③
第76話 在原業平、伊勢に呼ばれる事④
第77話 藤原良房、病に臥す事①

となっていて、今巻の大半は、在原業平の恋物語の数々を描いた「伊勢物語」のうち、伊勢神宮の斎宮となっていた文徳天皇の皇女・恬子(やすこ)内親王と密会して、さらに子供まで孕ませたという話の真相が明らかにされます。
斎宮というのは、天皇の皇女から選ばれて、伊勢神宮の近くの斎宮寮というところで、日々、潔斎し、年に三回、神宮で神事に奉仕する役目で、いわば、巫女さんのトップ。
これに手をつけたというのですから、本当であれば、神様のバチが当たってもおかしくない「色魔の所業」です。

もともとの発端は、疫病や富士山の噴火などで世の中が不穏になっているのを鎮めるため、伊勢神宮の祭礼に特別に帝の代理として「幣」を奉る「奉幣使」に、斎宮の伯父・紀有常の推薦で、業平が選ばれたため。有常の推薦の裏には、文徳天皇の妃で、今は斎宮と一緒に伊勢にいる「静子」がいることがわかります。

さて、業平を、伊勢へ呼び寄せる理由は?、というところですね。そして、いつものように、業平は道真に同行を頼むのですが、先回、彼に同行して、隠れ里の村人たちに殺されそうになっているので、今回は頑として言うことをききません。しかたなく、業平は単独で伊勢へ赴くこととなるのですが・・・という筋立てです。

そして、伊勢へ赴いた業平は、斎宮の母で、昔、寝所に間違えて忍び込んだことのある前文徳帝妃「静子」から、斎宮が伊勢神宮の神祇官の息子と恋におち、妊娠していることを
打ち明けられます。

もし斎宮の妊娠が外に明らかになれば、斎宮と神祇官の息子が責められるだけでなく、伊勢神宮の主だった神職の懲罰などにもつながり、朝廷と神宮を揺るがす事態になることは間違いありません。

困り果てる静子・斎宮の恬子親子をみて業平は

と、この難題を引き受けるのですが、彼の作戦は・・・という展開です。業平の日頃の「浮気男」ぶりを逆用した解決策を原書でお楽しみください。

一方、業平に同行せず都に居残った道真は、師匠の家を訪問した際に、運悪く、藤原基経に出会い、彼の牛車に乗せられて、話し相手を務めさせられます。その際に、小石を車軸に噛んでしまい、車の調子がおかしくなった原因を推理して、道真の記憶力や頭の回転の速さを基経にしっかりと確認をされることとなります。これが後々、道真の運命に関係してきそうな雰囲気がばりばりにでていますね。

最後の話は、当時の第一の権力者である藤原良房が、流行病でかなり重体というウワサが流れます。命をとりとめたものの、昇殿も難しく、自宅で療養すると朝廷に伝えるのですが、それに隠された意図は・・というものです。その意図については原書のほうで確かめてほしいのですが、良房と基経の「権力の座」を巡る二人の心理戦が凄まじいですね。

レビュアーから一言

今巻きは、道真の活躍の場面が少ないので、当然、彼の許嫁である「宣来子」ちゃんの登場の場面もほとんどないのですが、最後の最後で、文章得業生に落第し、そのうえ、自分のところへ訪ねてもこない道真への不満をぶちまける場面が出てきますので、「宣来子」ファンはそこで心を鎮めましょう。

次巻では道真のところへ押しかける彼女の姿がありそうなので、次巻を待て、というところでしょうか。

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