谷垣は恋人・インカラマツを救出し、愛娘誕生ー「ゴールデンカムイ」23

アイヌの娘「アシリパ」と日露戦争の生き残りで「不死身の杉元」と呼ばれた杉元佐一たちが、極東アジアを舞台に、幕末の新選組の生き残りの土方歳三や日露戦争で頭蓋骨の上半分を失った情報将校・鶴見中尉率いる第七師団を相手にアイヌ民族が明治政府打倒のために集めていた大量の金の争奪戦を繰り広げる明治のゴールドラッシュストーリー『野田サトル「ゴールデンカムイ」(ヤングジャンプコミックス)』の第23弾。

あらすじと注目ポイント

構成は

第222話 刺青人皮
第223話 二階堂、元気になる
第224話 支笏湖のほとりで
第225話 貧民窟
第226話 聖地
第227話 共犯
第228話 シマエナガ
第229話 完璧な母 
第230話 家永カノ
第231話 出産

となっていて、恋人のインカラマツが鶴見中尉のところに確保されたままになったいるのを心配したアシリパたちに置き去りにされた元マタギ兵士・谷垣は員カラマツが自分の子供を身ごもっていることを鶴見中尉から知らされます。母子双方を人質にして、谷垣をアシリパ確保用の手先として使おうという鶴見中尉の企みです。

そして、土方一派のほうでは、樺太の病院から抜け出した尾形が再び帰ってきていたり、二階堂が新薬という名目の麻薬を服用して元気になっていたり、とそれぞれに力を補充しながら「札幌編」へと進んでいきます。

まず、刺青人皮の数では圧倒的に土方一派や第七師団に劣るアシリパたちは、のっぺら坊が砂金の一部を持って逃げた時、船が転覆し、砂金を支笏湖に沈めてしまったという支笏湖に目をつけます。この支笏湖から採取した金のサンプルが、前巻で死んだ多重人格のヒグマ殺人鬼・平太の金のコレクションに中に入っていて、その採集者である「海賊房太郎」を確保しようという目論見です。

一方、札幌では娼婦が喉を切り裂かれて殺されるという事件が連続します。この事件が横浜で遊女をメッタ刺しにして収監されていた刺青の脱獄囚に関連していると見て、土方一派と、第七師団の鶴見中尉が動き始めるのですが、ここで物語は、菊田特務曹長とともに札幌へ派遣される「宇佐美上等兵」の過去へと移ります。
彼は新潟県新発田で生まれ育ち、ここで日清戦争後に赴任してきた鶴見中尉と知り合います。宇佐美は、鶴見をとんでもなくリスペクトするようになったのですが、小学校卒業時に、陸軍の高官の子供と鶴見の「一番のお気に入り」の座を争って、彼を蹴死させています。鶴見は彼の犯行を隠匿し、宇佐美が第七師団入隊後は忠実な「駒」として彼を使っています。
自分をリスペクトする人間を作為的に作り出し、自分の忠実な手駒として使うという手は、宇佐美以外にも尾形や鯉登、月島にも適用された手段で、これは鶴見中尉が日清戦争の経験から兵士の攻撃性を引き出す原動力として見つけたもののようですが、

という鶴見中尉の迷いのない言葉にはちょっと恐怖心をいだきますね。

今巻の後半では、インカラマツの出した絵葉書を手がかりに、彼女が入院してる診療所をつきとめ、谷垣が潜入してきます。彼女をここから脱出させる計画なのですが、ここには鶴見中尉たちの息のかかった部下が入院・配備されているのでそう簡単にはいきません。谷垣たちを銃撃しようとする月島軍曹なのですが、ここで意外な助っ人登場。家永カノが月島に麻酔薬を注射して二人の脱走を助けます。インカラマツの

という姿に「母性(?)」が呼び起こされたのかもしれません。もっとも、ここで、家永は月島に撃たれて命を落としてしまいます。

そして、谷垣とインカラマツは、アシリパの祖母の村へ逃れ、そこへ月島と鯉登が追いかけてくるのですが、インカラマツが産気づき・・という展開です。ここでは当時のアイヌの村での出産の様子がわかるので、民俗学の興味のある方は必見です。

Bitly

レビュアーの一言>アシリパ飯は潰した栗の携行食

今回のアシリパ飯は「携行食」。雪山で道に迷い、アシリパたちとはぐれてしまった杉元が捕まえた小鳥に自分の携行食を分けてやるシーンがあります。その携行食は、茹でで皮を剥いた栗を撞いて潰し、マ潰したマスの筋子を混ぜ、調味料として動物の油を混ぜて団子状にしたもの。少し炙って食するのすが、動物の油を混ぜるあたりが独特です。本書によると「ほのかな甘味とまろやかさ」がでるようです。

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