大倉崇裕「ゾウに魅かれた容疑者」=薄ちゃんはラオスの密林で本領を発揮する

動物や植物の関する事件や、飼い主が事件に巻き込まれて飼育できなくなったような時、動物愛護の立場から、それらをお世話する役目を担っている、警視庁総務部総務課動植物管理係、通称「警視庁生きもの係」に勤務する、動植物オタクの薄巡査部長と、刑事部出身で捜査上の怪我のためリハビリ兼窓際の須藤警部補の二人組が繰り広げる動物ドタバタミステリー「警視庁いきもの係」シリーズの第6弾が『大倉崇裕「ゾウに魅かれた容疑者 警視庁いきもの係」』です。

前巻で熱帯魚を密輸する組織に関連した事件の謎解きをした、薄巡査部長と須藤警部補だったのですが、今回は、アジアを舞台に暗躍した動物密輸組織の黒幕の正体を暴いていきます。

あらすじと注目ポイント

今巻では、警視庁いきもの係に勤務する刑事である須藤警部補にいつも旨い「ほうじ茶」を出してくれる庶務担当の田丸弘子さんが休暇をとるところから始まります。

めったに休暇を取らない彼女の不在で、勝手の狂っている須藤なのですが、弘子さんが定期に入れてくる定時連絡が途絶えたことから、彼女の事態を訪問したところ、彼女の失踪がわかる、という滑り出しです。

弘子さんの自宅にあった、須藤に渡すはずだった「猿でもできるタブレット」の本に「井の頭自然公園」の昔のチケットが挟まっていたため、いきもの係の相棒・薄圭子巡査部長に問い合わせたところ、チケットの日付が公園内の動物園のアイドルだった「ゾウの花子」が死んだ日であったことがわかります。

これに弘子さん失踪の理由が隠れているに違いないと、動物園で捜査を始めると、ゾウ舎によく訪ねてきていて、弘子さんと知り合いらしい、加賀谷みさ子という女性が見つかります。しかし、彼女は現在病院に入院していて意識もないことから、無断で彼女の家を訪ねると、四人組の外国人に襲撃され、という筋立てです。

この襲撃場面で、いつも能天気で頼りない薄圭子巡査部長が、サバイバルナイフで四人組を撃退したり、と野生児としての本能を蘇らせることとなりますね。

そして、この四人組の線を辿っていくと、弘子さんは何者かに連れられて成田空港から出国し、ラオスへ向かっていることがわかってきます。彼女は偽造パスポートで出国していることから、何かの犯罪に巻き込まれていることは間違いありません。

須藤警部補と薄巡査部長は、弘子さんを取り戻すため、二人でラオスに飛ぶのですが・・といった展開です。

ここらから、外国に全く不慣れで頼りにならない須藤警部補と、外国、とりわけ新興国はお手のもの、という薄巡査部長とのいつもとは立場が逆転したような捜査活動が始まっていきます。特に、ゾウ使いのトレーニングのところでは、柔道の猛者ながらヘロヘロになってしまう須藤と、ゾウと友人のようになってしまう薄とのコントラストが極端です。

そして、弘子さんの失踪には、アジアを舞台にしたおおがかりな象牙の密輸組織がからんでいることがわかり、須藤と薄は、そのアジトへと乗り込んでいき、ということで、このシリーズには珍しい大掛かりなアクションシーンが展開されていきます。

さらに、密輸組織のボスが明らかになったと思ったところで、その後ろには今まで、須藤や薄たちの味方と思っていた人物が、黒幕として暗躍していたことがわかり、とドンデン返しが用意されています。

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レビュアーの一言

いつも奇妙な日本語と行動が際立つ「薄巡査部長」なのですが、今回は、外国人4人組の襲われた時の、サバイバルナイフの使いかたといい、密輸組織のアジトであるゾウのトーレ―ニングセンターへ忍び込み、弘子さんを救出する時のジャングル内の動きや武器使いなど、いつもと一味違う動きを見せています。さらに一人ラオスに取り残された後の脱出行など、彼女が、とことん「人間」と「日本」には適していないながら、生物的な能力は抜群であることを証明する今巻でありました。

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