可愛いい素っ頓狂な「女性巡査」の名探偵登場ー大倉崇裕「小鳥を愛した容疑者」(講談社文庫)

橋下環奈と渡部篤郎の主演で以前テレビドラマ化されていたのでご記憶の方もあるだろう。ミステリーには「謎で読ますタイプ」と「設定で読ますタイプ」と2つあるのだが、本書は「設定で読ますタイプ」のうち主人公であるホームズ役とワトソン役の設定で読ますタイプ。
このタイプの場合、その設定が嘘くさくなくて、しかも異色度の度合いが問われるのだが、本シリーズは、公務負傷でリハビリ中の元敏腕刑事と、動物愛護の波にのって新設された、警視庁の超・お荷物、いや荷物にもなっていない、超・端っこ職場の「警視庁総務部総務課動植物管理係」の新人女性巡査という設定で、そのあたりは軽くクリアしているといえる。
収録は
小鳥を愛した容疑者
ヘビを愛した容疑者
カメを愛した容疑者
フクロウを愛した容疑者
となっていて、それぞれの話のキーとなる動物は「十姉妹」「コロンビアボア」「ケヅメリクガメ」「モリフクロウ」ということなのだが、申し訳ないが、「十姉妹」以外は、当方はその姿が茫漠として映像を結ばない。
事件は「小鳥を愛した容疑者」は自宅マンションに小鳥を買っている殺人未遂事件で、容疑者が意識不明といったように、下手をすると、いずれも迷宮入りか、といったものなのだが、このシリーズの魅力は、そういう事件の謎解きよりも、なんといっても、動植物係の担当でホームズ役の薄巡査のノーテンキなキャラ。
彼女は獣医で成績優秀。動物園に勤務していたが、警視庁の動植物管理係の急募で採用。潜水、乗馬関係の免許を持ち、アニマルセラピー、生物学にも詳しいといった、小柄で素っ頓狂な見かけによらないスゴイ娘であるのだが、故事成語に疎くて世間知らずという、リケジョにありがちなキャラなのである。
そしてその彼女が、屈強な相棒刑事の須藤を混乱の極に導きながら、普通、事件の解決にはおよそ関係のなさそうな「動物たちの習性」や「希少種の動物たちをめぐる人間の思惑」といったものを、推理のテコにしてお蔵入りしかけている事件を解決していく、というちぐはくな感じが、このシリーズの魅力であるだろう。
まあ、こうしたシリーズは、社会派のように眉間にシワをよせて読んだり、「イヤミス」のようにちょっと斜め目線で読んだりと言った姿勢では楽しめない。気楽に、ハチャハチャと展開していく二人の掛け合いを楽しんでいくのが良いかと思うのであります。
ちなみに、橋本環奈さんのちょっと甲高い声が「薄巡査」のイメージに見事にオーバーラップしてTVドラマもはまり役であったな、と思う次第であります。

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