十年前のキャリア女性警察官僚の事故死の謎を解け=「脳科学捜査官 真田夏希 エピソード・ブラック」

脳科学と精神医学・心理学を専門にする医師で、とびっきりの美貌を誇りながら、激務から逃れて「ふつうの結婚」をするため病院勤務を辞め、婚活活動を続ける神奈川県警科学捜査研究所所属で、県警唯一の心理捜査官・真田夏希の活躍を描いた「脳科学捜査官」シリーズの第10弾が本書『鳴神響一「脳科学捜査官 真田夏希 エピソード・ブラック」(角川文庫)』です。

前巻では、見習生として夏希の近くに接近し、捜査情報をつかみながら、過去の恨みを晴らそうとしていた女性警察官の爆弾犯を捕まえたのですが、今巻では、警察庁の織田と神奈川県警根岸分室の上杉という夏希周辺のイケメンで敏腕な警察官たちの過去のトラウマ事件の解決が見られます。

あらすじと注目ポイント

構成は

序章 悔恨
第一章 韜晦
第二章 威迫
第三章 展望
第四章 策略

となっていて、冒頭では織田理事官と上杉根岸分室長の同期であった五条香里奈という神奈川県警捜査二課の管理官であった女性が交通事故死する10年前の事故から始まります。彼は織田と上杉を凌駕するほど敏腕な警察官であったようですが、青少年がらみの事件を内密捜査しているところで、飲酒運転の車にはねられて死亡してしまいます。なんとなく、謀略の臭いがするのですが、加害者がその後自殺してしまったこともあり、事故死として処理されて・・という設定です。

物語のほうは、前巻の事件で、警察内部の人間の犯行であったことから、織田と上杉が10年前の香里奈の事故死もひょっとすると、内部の隠蔽行為があったのでは、と疑いを持ち始め再捜査してみると、加害者の経歴が詐称されていることが判明し、という筋立てです。

これだけで警察内部に香里奈の事故を裏で糸を引いていた人物がいる気配が濃厚になるのですが、キャリア警察官僚を事故死させて、もみ消したことからみて、相当大物が絡んでいることは容易に想像できます。なので、二人の再捜査も、あくどい経済ヤクザが絡んできたり、そこから聞き出した手がかりを知っていそうな悪党が毒入りウィスキーを飲んで自殺したり、となかなか真相にたどりつくことができません。

香里奈が事故死する前に言っていた「県内の罪のない子供たちのためにも」という言葉から、政治家の絡んだ汚職事件にいきあたるのですが、すでにその政治家や関係者が死亡しているため、その汚職に関係し、香里奈の事故死を偽装した警察内部にいる黒幕の尻尾をつかむことができません。

そこでお願いするのが、心理学を使った捜査ではベテランの域に達していて、「かもめ★百合」のハンドルネームで、数々の犯罪者をおびき出した我らが「真田夏希」ということで、密かに憧れている織田と上杉から、デートっぽく呼び出されて、警察内部に潜む黒幕のあぶり出しに協力させられることになるのですが、彼女が考え出した作戦は、かなり違法性の強いやり方で・・という展開です。

まあ、終わりよければ全て良し的なストーリーなのですが、今回、夏希のプランは、今までの「かもめ★百合」のお手柄を完全に悪用してますね。

脳科学捜査官 真田夏希 エピソード・ブラック (角川文庫)
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レビュアーの一言

今巻で事件解決後、函館湾で夏希たちが見たのは「雲の裂け目から、鮮やかな黄金色の光の柱が濃青色に沈んだ水面に向かって斜めに何本も下りている」という「天使の梯子」で、これを事故死した香里奈が天国へ登っていく兆し、ととらえるのですが、もともとは旧約聖書の中で、ヤコブが夢の中で、この梯子を使って天使が上り下りするのを見た、とするのが由来とされているので、まああり得る連想ですね。

この現象は、レンブラントが好んで絵に描いたのでもしられていて、今は亡き、開高健や宮沢賢治も好んだ現象とされているので、古来より芸術家をとらえる神秘風景といっていいのでしょう。

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