ガールズグループ事件が再び殺人を引き寄せる=「脳科学捜査官 真田夏希 クリミナル・ブラウン」

脳科学と精神医学・心理学を専門にする医師で、とびっきりの美貌を誇りながら、激務から逃れて「ふつうの結婚」をするため病院勤務を辞め、婚活活動を続ける神奈川県警科学捜査研究所所属で、県警唯一の心理捜査官・真田夏希の活躍を描いた「脳科学捜査官」シリーズの第12弾が本書『鳴神響一「脳科学捜査官 真田夏希 クリミナル・ブラウン」(角川文庫)』です。

前巻では、「ワダヨシモリ」という鎌倉時代の武将の名を名乗って、北条氏ゆかりの寺院跡で爆破事件を起こし「北条氏への復讐だ」と言いながら、実は自分が失業した原因となった誤認逮捕をした警察への復讐をしていた、コミュ障の爆弾魔を捕まえたのですが、今回は第6弾の「パッショネイト・オレンジ」で登場したガールズ・ユニットの関係者の殺人事件の謎に挑みます。

あらすじと注目ポイント

構成は

第一章 ジュリエンヌ
第二章 エクスカリバー
第三章 オレンジ・モンキーズ

となっていて、まずは、このシリーズの主人公・真田夏希のところへ「ジュリエンヌ」と呼呼ばれている人気着せ気人形が、県警捜査一課の福島課長の名前で届くところから始まります。その着せ替え人形の衣装は、前巻の「ヘリテージ・グリーン」で鶴岡八幡宮の舞殿で熱唱した衣装そっくりのもので、これだけでストーカーっぽい感じが覗えます。

この人形送り付け事件は、この後も続いていて、本巻の事件との関連性を疑わせるのですが、詳細は原書のほうでお確かめを。個人的な感想をいうと、少し消化不良感は残る筋立てですね。

で、本筋の事件のほうは、横須賀市内の海岸の男性の絞殺死体が漂着したところから始まります。その被害者というのが、第6弾の「パッショネイト・オレンジ」で、連続殺人事件の遠因となったアイドルグループのメンバーに性的暴行を働いた元国会議員の「宍戸」で、彼はこの「オレンジ☆スカッシュ」事件が世の中に出てから議員を辞めて、横須賀市の荒崎海岸近くの実家に引き籠って暮らしていたことになっているのですが、この後の聞き込みで、あいかわらず悪行は続いていたことがわかります。

そして、この殺人+死体遺棄事件の犯行を行ったとして、「エクスカリバー」と名乗る人物が犯行声明を出します。それによるとまず極悪人の宍戸を血祭にあげたので、次の悪人に天誅を下す、というもので連続犯行が予告されています。

ここで、このシリーズでおなじみの「かもめ★百合」での犯人への呼びかけと、犯人とのやりとりがあるのですが、今回は、捜査本部を仕切っている「芳賀管理官」という女性の上昇志向丸出しの警察官僚が、夏希に対して敵意丸出しで、彼女の推理や聞き出した内容に関心をはらおうとはしません。

さらに、殺された宍戸が、クレーマーとなって閉店させたレストランの経営者・長沼が犯人に間違いないとの確信を抱いて、捜査陣をそこに集中させ、「オレンジ☆スカッシュ」

事件との関連性、特にその事件の中心であったガールズグループのメンバーへの聞き込みもすべきだ、という夏希の進言を無視した上に、彼女を捜査陣から外してしまいます。

今までにないアゲインストの風の中で、夏希がとった作戦は、警察内でのはぐれ者である神奈川県警根岸分室の上杉に頼る、というもので、勝手に作った捜査の別働隊として、「オレンジ☆スカッシュ」の関係者への聞き込みを始めることになり・・という展開です。

少しネタバレしておくと、夏希に意地悪して、捜査陣がら外していた芳賀管理官の推理が大ハズレをして、手ひどいしっぺ返しを食うことになります。

そして、物語の後半では、いつものように犯人に拉致られる夏希のアクション・シーンもあるので、お楽しみに。

脳科学捜査官 真田夏希 クリミナル・ブラウン (角川文庫)
脳科学捜査官 真田夏希 クリミナル・ブラウン (角川文庫)

レビュアーの一言

今巻の注目心理ネタは「計画継続バイアス」。

認知バイアスの一種で、人間は一度意思決定をしてしまうと、それに引きずられ、後に「もしかしいてまずいかも」という認知的不協和が生じても、それを軽減しようとして、成功確率を過度に楽観視してしまう心理状態です。

航空事故の11%がこの計画系遺族バイアスに依るものだという研究もあって、失敗の原因として無視できない心理状況ですね。

これを防止するには、このバイアスに関する知識を共有して、成功確率の楽観視を相互牽制したり、個人責任を過度に追及しない、といった方策が有効とされているのですが、いざその状況になった時に、この「計画継続バイアス」から脱け出せるかは、心もとないですね。

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