美人時計店主・時乃の謎解き再び=「アリバイ崩し承ります2 時計屋探偵の冒険」

時計の販売と修理という時計屋を経営している若き美人店主・美谷時乃が、事件の捜査に行き詰ると(大抵、捜査の始めのほうで行き詰るのですが)持ち込んでくる那野県警捜査一課の通称「新人」こと「ぼく」依頼に応えて、一件5千円という格安料金で、事件のアリバイ崩しと謎解きをしていくアリバイ崩し・ミステリー「時計屋探偵」シリーズの第2弾が本書『大山誠一郎「アリバイ崩し承ります2 時計屋探偵の冒険」(実業之日本社)』です。

あらすじと注目ポイント

収録は

第1話 時計屋探偵と沈める車のアリバイ
第2話 時計屋探偵と多すぎる証人のアリバイ
第3話 時計屋探偵と一族のアリバイ
第4話 時計屋探偵と二律背反のアリバイ
第5話 時計屋探偵と夏休みのアリバイ

となっていて、今巻で「ぼく」は、捜査一課内で「アリバイ崩し」の名人のような扱いを受けるようになり、その評判を落とさないためには、時乃のアリバイ崩しが必須という状況に陥っているようですね。さらに、時乃への「恋心」も芽生えているようで、今巻では時折、食事に誘ったりとナンパをかけてきています。

第1話の「時計屋探偵と沈める車のアリバイ」ではダム湖に落ちた車の中で死んでいた老人の事件のアリバイ崩しです。老人の死因は溺死で体内からこの湖の水が発見され、老人の孫が容疑者として浮上するのですが、彼には友人3人と麻雀をしていたというアリバイがあります。

甥がロードバイクが趣味ということを聞いて、時乃は「湖に落ちなくても溺死はする」と謎の言葉とともに、アリバイは崩れた、というのですが・・という筋立てです。

第2話の「時計屋探偵と多すぎる証人のアリバイ」では、500人の証人が保証するアリバイ崩しです。

事件のほうは、国会議員の秘書をしている「名越」という男性が、舞黒市の中を流れる川の河川敷で焼死体となって発見されます。彼は前夜、秘書をしている国会議員・戸村の政治パーティーの開始直後、父親が倒れたという電話を受けて、病院へ向かったまま行方がわからなくなっていたのですが、翌朝、焼死体で発見された、という次第です。さらに、そのパーティーに出席していた「安本」という男性も名越の事件の三日後に、自宅マンションで殺されているのが発見されます。

事件のカギは、名越の父親の「息子は戸村議員の弱みを握って、地盤を譲るよう脅迫していたんじゃないか」という証言にありそうです。しかし、名越の胃に残っていたパーティーで出されたリゾットから推測される死亡時刻には、戸村はパーティー会場内にいたことがわかっていて・・という展開です。

今回は、死亡した名越がパーティー会場を出るきっかけとなった電話を誰がかけてきたのか、というのがアリバイ崩しのカギですね。

第3話の「時計屋探偵と一族のアリバイ」は、有名女優の叔父が殺される事件です。殺された男性は自宅で刺殺されているのが発見されるのですが、有名女優を含め、親族3人が容疑者として浮上するのですが、三人ともアリバイがあって・という筋立てです。

このうちの元シェフの男性の、犯行時刻ごろ、自宅で宅配便の荷物を受け取り、受け取りのサインをし、さらに運送会社の伝票にもその男性の指紋が残っていたというアリバイを、時乃は「不可視インク」のトリックを見破り、アリバイ崩しをするのですが、実は、その奥にさらにトリックが仕掛けられていて・・という展開です。

一旦は事件解決と思わせておいて、アリバイ崩しを利用して、犯行の本当の狙いを隠す巧妙な罠がしかけられています。

このほか、那野県に住む妻と東京都に住む浮気相手が、数時間の差で殺されるという事件の夫のアリバイを崩す「時計屋探偵と二律背反のアリバイ」とか、密室状態の美術室で製作中の石膏像がバラバラに破壊されていたという事件に、高校二年生だった「時乃」がはじめてアリバイ崩しに挑戦した「時計屋探偵と夏休みのアリバイ」など、今回も多種多様な事件の謎とアリバイ崩しが楽しめます。

レビュアーの一言

この「アリバイ崩し承ります」は、浜辺美波さん主演で、2020年にテレビ朝日でテレビドラマ化されています。原作ではアリバイ崩しを依頼してくるのは捜査一課に異動したての「新人」である「ぼく」となっていますが、ドラマでは安田顕さん演じる管理官の「察時美幸」となっていて、「ぼく」的な役どころは成田凌さん演じる巡査部長の「渡海雄海」ですかね。

全七話のテレビドラマはU-NEXTで視聴できるのですが、時乃の幼少期。中学生時代を描く特別編「時計屋探偵とお祖父さんのアリバイ」はちょっと見つからないのが残念です。

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