妖魔と戦い「ゴッドハンド」を狙う「黒い剣士」ガッツ登場=三浦建太郎「ベルセルク」黒い剣士篇1~3

中世ヨーロッパを思わせる、キリスト教に似た宗教が強大な力を持ち、貴族階級と王権が支配する「ミッドランド」を舞台に、身の丈を超える巨大な剣を武器に、悪魔となった上に恋人を陵辱した、かつての盟友への復讐を志して旅を続ける死人から生まれた男「ガッツ」と、自らの国をこの世界につくりあげようと、暗黒の世界に身を売り、蘇った男「グリフィス」を軸に、剣と悪魔と魔獣が戦う「ダークファンター」シリーズの名作が本書「ベルセルク」シリーズ。

1989年以来の長期にわたって連載されていた、圧倒的な世界観を有する人気シリーズであったのですが、作者・三浦建太郎が2021年に急性動脈瘤解離で急逝。物語が中途で絶えることを惜しんだファンたちの声を受けて、親友で生前、最終回までのあらすじを聞かされていた森恒二氏の監修で、再開されています。

今回は、ベルセルク・シリーズの序章となる第1巻から第3巻までの「黒い剣士篇」をレビューします。

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あらすじと注目ポイント

第1巻 黒い剣士「ガッツ」は、人を喰らう傭兵隊長・ゾンダーグと対決する

第1巻の構成は

黒い剣士
烙印
欲望の守護天使(1)

となっていて、最初のガッツの登場シーンは、傭兵たちが屯する場末の酒場で、男の子のエルフ・パックを弄んでいる兵士たちをガッツが自らの腕に装着したボウガンであっという間に射殺する場面です。そして、生き残った兵士に、傭兵たちの首領に「黒い剣士が来た」と伝えろ、と命じて解き放つのですが、その報せを聞きつけたやってきた領主の軍隊によって捕縛され、地下牢に放り込まれてしまいます。

実は、ここの領主は、人食いの化け物である傭兵団の首領に領民を生贄として提供して、城下の平穏を保っていたようなのですが、ガッツが彼の兵士を殺したことで、この密約も御破算となり、傭兵団は街へと攻め込んできます。
牢から抜け出したガッツは、街に侵入したトカゲの本性を見せた傭兵団のボスと一対一の闘いを始めるのですが、その血みどろのバトルシーンは原書のほうで。

中盤部分では、城下での戦闘が終わり、次の目的地へ向かう途中で、旅の親娘に出会うのですが、古戦場でガッツに誘われて出現した妖魔に親娘が惨殺され、彼にかかっている呪いの深さを描いています。

後半では、住民を宗教裁判にかけ、邪教徒と判断すると容赦なく処刑する異端査問委員会が強肩をふる「伯爵」と呼ばれている領主の支配地にガッツが到着するところから始まります。ここでガッツは、妻と息子二人の仇を討とうと領主を突け狙っている、顔の右半分と足が食いちぎられている男・バルガスと出会い、彼から領主を殺害するよう依頼されます。ここで、ガッツは「ベヘリット」と呼ばれる、暗黒界とこの世をつなぐ「呪具」を彼から受け取ることとなります。

この巻では、ガッツの言う「五人のゴットハンド」の意味、そしてガッツにつきまとう、セミの幼生体のような化け物の正体は謎のままなのですが、ガッツの首筋についている「生贄の焼き印」は魔物を呼び寄せる「印」のようなものだというところまで明らかになります。

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第2巻 復讐者バルガスは処刑され、妖精パックも囚われの身に

第2巻の構成は

欲望の守護天使(2)
欲望の守護天使(3)

となっていて、冒頭ではバルガスから、七年前、このベヘリットを手に入れてから領主が人間を生きたまま切り裂き、喰らうようになってしまい、妻と二人の息子とともに城下を脱出しようとしたところを捕まり、バルガスは体を切り刻まれ、家族は「伯爵」に食われてしまった、と告白されます。

そして、ちょうどその頃、第1巻の後半で、ガッツを襲った城の守備兵の隊長・ゾンダークに「伯爵」が自らの分身を寄生させ、再びガッツを襲わせます。この後、怪物化したゾンダークとガッツとのバトルシーンが展開されていくのですが、変身後のゾンダークはかなりグロイのでご注意を。

この後、バルガスは領主によってとらわれ、救出を図ろうとする「パック」の目の前で首をはねられ処刑されてしまい、パック自体も鳥籠にいれられて、伯爵から娘・テレジアへのプレゼントされるのですが、ここで、邪教撲滅に熱心だった伯爵が、妻を失い、邪教に魅入られた経緯が語られることになります。もっとも、これは一面からの見方でしかないことは次巻で明らかになるので注意しておきましょう。

そして、城内に潜入したガッツと、伯爵の分身に完全に支配され怪物となったゾンダーグ、そして伯爵本体との最終対決が始まるのですが、詳細は原書で。

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第3巻 出現した「五人のゴッドハンド」は伯爵に「生贄」を求める

第3巻の構成は

欲望の守護天使(4)
欲望の守護天使(5)
欲望の守護天使(6)
黄金時代(1)

となっていて、前巻の最後で、ガッツを圧倒した「伯爵」はパックの手から「ベヘリット」を奪おうとするのですが、ここに、パックを追って娘・テレジアがやってきます。父のおぞましい姿にテレジアは卒倒してしまうのですが、そこをガッツがつけこみ、「盾」として利用し、「伯爵」への逆襲を始めます。「伯爵」はガッツの剣によって切り裂かれるのですが、伯爵の血を吸ったベヘリットの叫びが、「五人のゴットハンド」を暗黒界から呼び寄せることとなり・・という展開です。

現れた「五人のゴットハンド」の一人「フェムト」に対し、「グリフィス」と呼びかけ、剣を振るうガッツだったのですが、傷は深く、弾き飛ばされてしまいます。そして、「五人のゴットハンド」は立ち尽くすテレジアに、彼女の母の死の真相をみせたうえで、ズタボロになっている「伯爵」に、彼が妻にしたのと同じように、テレジアを「生贄」として捧げるよう命じてきます。

この命令に対する「伯爵」の決断は、そして、ガッツは「五人のゴットハンド」に一矢報いることができるのか・・といった展開です。

Bitly

レビュアーの一言

ベルセルク・シリーズは、その内容や作者のつけた副題から

  • 黒い剣士篇(単行本1~3巻)
  • 黄金時代篇(単行本4巻~14巻)
  • 断罪篇(単行本14巻~21巻)
  • 千年帝国の鷹編(単行本22巻~35巻)
  • 幻造世界篇(単行本35巻~<41巻で作者・三浦建太郎が急死>)

という構成になっています。

今回紹介した「黒い剣士」篇は、ベルセルク・シリーズの序章的な位置づけなのですが、後巻のほうでガッツの想い人となる「キャスカ」は同行しておらず、腕に装着している矢を連続発射できる機械や巨大な剣はすでに持っているのですが、妖精パックとはここで初めて出会っているので、「黄金時代」篇の後、断罪篇の前あたりの時系列かと思われます。物語の連続性では黄金時代篇は、生まれてから「鷹の団」壊滅までのガッツの半生を描く仕立てになっているので、全巻をぶっ通しで読む人は「黄金時代篇」のほうから先に読むほうがすんなり「断罪篇」につながるかもしれません。

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