都の放火テロの鎮圧を経て、白髪の少年隊士は一人前になる=安田剛士「青のミブロ」

幕末の京都、厳しい取り調べと剣技の凄まじさで、攘夷派の浪士や倒幕派の諸藩の藩士を恐れさせた近藤勇、土方歳三率いる「新撰組」で、永倉新八から「三匹の狼」と呼ばれた、歴史の渦の中に消えていった三人の少年隊士「ちるぬ にお」「田中太郎」「二代目・斎藤一」の活躍を描いた幕末新撰組シリーズ『安田剛士「青のミブロ」(少年マガジンコミックス)』の第8弾から第9弾。

前回では、「侍の世」を再来させるために、都を放火テロを実行しようとした、武士社会から弾き出された者たちを集めた「血の立志団」とのバトルが始まったのですが、今回はそのリーダー格である、京八道場の陽太郎や直純との最終決着のバトルが展開されます。

あらすじと注目ポイント

第8巻 「血の立志団」との最終決着。そして産気づいた「ナギ」の運命は

第8巻の構成は

第60話 覚悟の上
第61話 畳一枚分
第62話 炎の中の混乱
第63話 涙の一撃
第64話 罪と幸
第65話 武の道
第66話 抗う者たち
第67話 憐れな勝者
第68話 繋がり

となっていて、前半では、壬生狼のリーダーの一人・近藤勇と京八道場の道場主の陽太郎とのバトルが始まります。陽太郎は前巻で兄の直純に弟子が辻斬りに関わっていたことを脅されて巻き込まれた形なのですが、道場を守るために、「毒食らわば皿まで」といった心境でテロの中心に入り込んでいます。

しかし、浪士組に加わるために、多摩の道場や妻子を半ば捨ててやってきている近藤(実際は、多摩の道場には門弟は残っていて、後に新撰組隊士の追加募集のために一時帰還しているはずです。本シリーズの「道場を閉めた」というのはちょっと言い過ぎのような気がしますが)とは覚悟が違っていて、ここで剣技より先に勝負がついているようですね。

さらに、陽太郎によって安全な場所へ逃されていたはずの「ナギ」も陽太郎に殉じるために道場へ戻ってきています。「にお」はなんとか彼女や陽太郎を説得して、テロを思いとどまらせようとするのですが・・という筋立てです。

中盤では、このテロの中心人物である「直純」と「陽太郎」の幼少期の思い出が語られています。少しネタバレしておくと、京八道場の実子は「直純」だけで、陽太郎は孤児であったのを父親が養子に迎え、彼の補助にするつもりだったようですが、直純の天性の傲慢さと乱暴さは治らず、陽太郎に道場を継がせた、という経緯のようです。ここらに直純がやたら「武」「侍」にこだわる理由が隠れているようです。

そして、この後、五条大橋での「直純」と芹沢鴨との一騎打ちが展開されるのですが、その勝負の行方は原書のほうでお確かめを。

最後半のところでは、産気づいた「ナギ」を「にお」の祖母のところへ急遽運んでの出産シーンとなっていて、元気な女の子を産み落としているのですが、「ナギ」に不幸な事態がふりかかります。

第9巻 「ナギ」と「陽太郎」の死を乗り越え、少年隊士は成長する

第9巻の構成は

第69話 現実
第70話 俺たち
第71話 美しき道
第72話 青の誓い
第73話 境界線
第74話 語らぬ親子
第75話 迷惑な贈り物
第76話 暴走乱闘
第77話 尊厳

となっていて、前巻までの「血の立志団」とのバトルや、京八道場の陽太郎やナギの様子から頑なに目をそむけて平静を保とうとしていた「にお」だったのですが、近藤から陽太郎を斬ったことと二人はテロ関係者として処断されることを無理やり聞かされ、部屋に閉じこもってしまいます。

この逼塞中に「にお」が出した結論は・・ということで、その内容は、将軍・家茂が志半ばで江戸へ帰還する際に明らかにまります。

一方、「にお」の様子を「ちるぬ屋」へ知らせにやってきた斎藤一の前に、「にお」の妹「いろは」が姿を見せます。彼女は公家に家に貰われていったのですが、その公家というのが当時「攘夷公家」として有名だった「西園寺公知」という設定ですね。

ただ、この時期、西園寺は攘夷派を離れ開国派に転じようとしたため、攘夷志士たちから「裏切り者」として命を狙われています。「いろは」は、護衛の体制が整う三日間だけ、自邸から御所までの間の護衛を「斎藤一」に依頼にやってきた、というわけです。

そして、この三日間、斎藤は西園寺の命を守るのですが、この間のやりとりが、その後、西園寺が薩摩の田中新兵衛によって暗殺された後の彼の行動へとヌス美ついていきます。

後半分では、いよいよ本格的に京都の治安を守る任務を受けた浪士組の活動が始まります。「ナギ」の死を経て、「にお」も前髪を切り、髷をゆって立派な若手隊士として隊務についています。

そして金策にやってきた「大坂」で、後に新撰組の「監察」となり、池田屋に集結する浪士の挙動をつかむ功績をあがた「山崎丞」との出会いや、大坂の町の人々を驚嘆させた「大坂相撲」の相撲取りとの刃傷沙汰が始まります。

酒によった勢いでいちゃもんをつけてきた相撲取りを切り捨てたとされているこの事件なのですが、芹沢びいきの本シリーズでは別の理由が隠されています。

レビュアーの一言

将軍・家茂の上洛は文久三年、文久四年、慶応元年の三回あって、最後の慶応元年の翌年の第二次長州征伐の途上で倒れ、そのまま亡くなっています。

今巻の上洛はこの一回目の時で、朝廷に「攘夷」の約束をさせられた時のことで、一回目の上洛の際は、拝謁の際の席次も230年前三代将軍・家光の上洛の際は、家光・関白・左大臣・右大臣という順番だったのが、今回は関白・左大臣・右大臣・家茂という順番で。政治委任の勅書にも、「ことがらによっては諸藩に直接命じることもある」と書かれたように、幕府の権力基盤にいちゃもんをつける内容で、家茂は陰に陽にいやがらせをうけたようですね。

このへんがすでに幕府の威勢に翳りがでていた証拠として上げられることもあるのですが、兵力的にはまだまだ幕府の力は相当なものがあったはずです。、ここで幕府側が下手にでずにいたら、その後の情勢がどうなっていたかわからないよね、と管理人なぞは思ってしまうのであります。

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